第36話 その5「やっぱりいてるぞ、ガキ大将」
豪農長女さんが先に帰った後。餌付けした女子達と雑草のお花摘んだり、グルグルそのへん回るだけの鬼ごっこ的な事をして遊んでいると、三人の男子がやってきた。年齢は小学校の中学年くらい。図体でかい奴、ひょろっと背の高い奴。そして、俺らより少し背が高いくらいのチビ。
子供らの表情が曇る。それに気が付く間も無く、後ろからジェル姉の髪の毛が図体のでかいガキに引っ張られる。
「きゃ!? 痛い、止めて!」
「見ねー顔だな」
「汚い手で、ジェル姉に触んな!」
俺は、図体でかいガキを突き飛ばす。
「何、すんだよ!」
「初手から暴力か、兄ちゃん達! 酷くない?」
「うるせー! ここはオレらの場所だ。女共は失せろ!」
「こんなもん早い者勝ちやろ。使いたかったら、『譲って』とか交渉しろや!」
「うるせーぞ、クソチビ!」
俺の肩を強く小突く図体でかい奴。
こいつら、小さい子から場所奪うのも遊びなんやろう。
「ジェル姉! 面倒や。やるぞ!」
「わかったわ」
ジェル姉が、俺の左手を繋いだ。
二人で三人を指差し叫ぶ。
「「"泥の檻"」」
三人の足元の土がえぐられながら、下からドーム状に形成されていく。
「なんだ!?」「うわー!」「ひっ!?」
三人三様の悲鳴をあげる。
土のドームは三人をすっぽり覆った。一部格子状の空間が空く。
「出せー!」
「仲良くしてくれるなら」と、俺ニコニコ顔。
「イヤじゃ! クソチビ!」
真っ赤になって格子から顔を覗かせる三人。
「そっかー。残念だ! じゃ!」
格子が徐々に土に閉ざされていく。
「やめろー!」
誰かの腕だけ外に出たまま、ドームは完全に閉じられた。
閉じたと同時に、斜面側の下部分ニセンチ掛ける二十センチの穴は開けておいたんだけど。
事前に聞いてたからな。三人のワルガキの存在を。
何か仕掛けてきたら即絞めると、ジェル姉と相談済み。
女子達は唖然としていたが、いつも嫌がらせしてくる厄介者達が閉じ込めらたので、大喜びしていた。
一人の女の子が、その辺に落ちてた木の棒で飛び出していたワルガキの手を打とうとする。俺はすかさず止めた。
「何でよ?!」
「それは、ダメ。趣旨が違う」
誰がやりだしたかはわからないが「捕まえた! ワルガキ捕まえたー!」と歌いながら、皆で土のドームの回りをグルグル駆け回った。いつの間にか、他の小さい男児達も混ざってる。
「暗いよー」「せまいよー」「こわいよー」
それ、一人で叫ぶセリフなんだけどね。
「んー、なんか臭くない?」「おしっこ臭いね」
ドームの穴から流れ出る液体。
「ぎゃー、ションベン漏らしてる!」
「きったねー!」
嬉々とした女子の叫び。
「もうそろそろ許してあげたらどうですか?」
エリーヌが俺に耳打ちする。
「どうする?」小声で皆に問う。
「このままほっとこうよ」「明日までこうしとけばいい」
残念だが、"泥の檻"はあの時の俺らの力だと二時間くらいで解除されてしまう。
「ションベン垂れがー!」
二人で魔法を解いた。
土のドームが上から崩れ、地面に土が戻っていく。
涙目の男子三人。
一番図体のでかい奴のズボンが濡れている。
ぎゃはははははと女子らが笑う。
俺は笑わなかった。
「許さねーぞ!」
「俺ら仲良くしようって言ったよな」
俺に襲いかかろうとした時だ。
「"泥の傀儡"!」
ジェル姉の言葉に、地面の土が盛り上がる。直ぐに、大人くらいの高さになる。横幅もそれなりにある屈強そうな土の人形が現れた。
そして、三人のワルガキに襲いかかった。
「「「ぎゃーーー!」」」
丘を駆け降り逃げていく。それをしばらく両手を挙げて追いかける土の人形。
ワルガキ三人が逃げ去ったあたりで、土の人形は崩れて消えた。
「ジェルちゃん達すごいね!」
「魔法使いなんだね」
「あいつらいつも、わたし達にいじわるするから嫌い! ザマーみろよ!」