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第30話「風雲 剣術コロシアム」その3

 二人の攻略対象者が宣言した通り、彼らは決勝戦まで勝ち残った。

 去年の優勝者と、去年準決勝で終わった者。

 優位と思われてるのは去年の優勝者だろう。

 でも、空腹というハンデの無くなったレオ先輩もかなり強いと思った。

 全試合、どちらも五分前後で決着が着いていたから。

 二人の剣士の入場に会場沸き上がる。

 士官学校組による怒声にも似た掛け声。

 女性達の悲鳴にも似た歓声。

 黒髪の美形剣士と、男前の巨漢剣士。

 毛色の異なるイケメン二人に、女性陣の声援が加速する。

 女会長が立ち上がった。

 波が退くように静まり返る闘技場。

「剣士諸君。これまで鍛えてきた全てを出し尽くし、己の魂を剣に込めよ!

 勝敗は時の運。しかし、真の勝利とは己の限界の果てにあるさらなる高みに到達する事!

 天は常に勇敢なる者を祝福する。

 女神アレスの加護があらんことを!」

 二人の剣士が、鞘から抜いた剣を交換し確かめあう。

 確認が終わると各々の鞘に戻された。

 持ち場に戻る剣士達。

 学長は立ち上がり腕を上げる。

「いざ尋常に勝負!」

 学長が腕を振り下ろすと同時に、剣士は剣を抜き構えて、そして

 ガキーン

 開始秒での剣の打ち合い。

 ガッシャン キンキンキン シュルルルルル ガキーン

 繰り出される打ち込み。

 受け流すため、摺り滑る剣と剣。

 間合いを取るため両者距離を取っても、直ぐに打ち込みが開始される。

 上から、横から、斜めから、繰返される剣筋に、会場の観覧者は息を飲んでいた。

 ゲームのラストバトルにて。人間よりでっかい黒い竜に剣一本で飛び掛かっていくのは、この二人だけだ。

 他のキャラは、魔法攻撃をしているところしか見たことはない。

 いくら魔法剣士で、剣に魔法をかけて攻撃力増強してたとしても、化け物に飛び掛かて斬りかかるってと思ってたが、あいつらならガチでやりよるんやろう……。

 まぁその前に、ジェルトリュードの闇落ちの問題もあるが。

 ガッ

 剣と剣とが交差する。

 刃と刃が噛み合い、剣が全く動かない。

 剣は小刻みには動いているが、交差した状態で二人は睨み合ったままだ。

 大した時間ではないのだが、何時間も睨み合った様に時が流れる。

 二人の筋肉というか、筋繊維一本一本が軋む音が聞こえるようだった。

「何で動かないのかしら?」ジェル姉が呟いた。

「ぐるっと回せばええんやけど、どっちも外せんのやろ」

 ゴロゴロゴロゴロ

 ピカッ

 ド――――ン

「きゃーっ!?」「ギャー!」「うわっ!」

 空間を走る稲光り。耳をつんざくえげつない轟音。

 恐らく落雷が近くであったのだろう。

「大会本部より。落雷の危険がある為、これを持ちまして決勝戦を終了致します」

 会長の声が場内に響く。

 しかし、二人の剣士は剣を引かない。睨み合ったままだ。

 審判と色の濃い戦闘服着たメガネ先生が、二人のもとに駆け寄って、試合終了を伝えた。

 二人とも拍子抜けしていた。闘いに夢中で雷にも気が付かなかったのだ。

「今の試合、悪天候の為引き分けと致します!」

 ポツリポツリ雨が降り始める。

 不満の声も上がっていたが、二人の闘いを讃える声援と拍手で、剣術大会は幕を閉じた。

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