第28話「揃う、攻略対象者!」前編
「お腹いっぱいです」
「わたしも」
「私も無理かな」
一人五切れも食べたら腹膨らむよな。女子達がそろそろギブアップしようとする頃。
「楽しそうだな」と低く野太い声がする。
身の丈高い戦闘服の学生。イケメンというより凛々しく頼もしい男前。「漢」という漢字が良く似合う。片手に今日の弁当に付いてくるはずの炭酸水の瓶を持っている。
「アレックス。どうした?」
王子様が、薄い茶髪でオールバックの大男に尋ねる。
この大男。エリオット殿下らと同じ二年生。今回剣術大会の出場者で準決勝まで残っている。
彼の名前は、アレクシス・レオポルド。お姉らが「レオくん」と呼んでいた攻略対象者だ。
「昼はどうしたんだ?」と、デリック。
「……。実は、先輩方に『お前にはこれくらいのハンデが丁度良い!』と弁当を……」
「盗られたのか?」険しい顔で王子様。「もしや去年もそうだったのか? お前が準決勝敗退で可怪しいと思っていたんだ」
ぐーきゅるるるるる
レオくん、コルクの詮を抜いて炭酸水を飲む。
「……」
一堂、沈黙。
「騎士は食わねど高楊枝は構わないが、自分の事は自分で解決しろ。でなければ、我々もお前を助ける事は出来ない」
エリオット殿下が厳しい口調で、レオ先輩を見つめる。
「頼む! 余裕があるならば、私に昼飯を別けてくれ!」
大の大男が、地面に手と膝着いてorzする。
枝豆のさやを咥える俺に注がれる皆の視線。
「……。どっ、どうぞ。余ってますから」
こんな言われて、断れんるわけないやろ!