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第27話「お弁当狂想曲」その4

 コロシアムの近くの芝生のところに三角屋根のテントが設置されている。

 壁みたいに幕を張ってるテントや、屋根だけテント。屋根だけテントでは、白い厨房服を着たコックらが、美味しそうな物を焼いたり、配膳したりしている。

 俺らは、コロシアムから離れた木陰のある芝生に敷物を敷いて、メイドのエマが用意してくれていたサンドイッチを食べていた。

 ハムチーズ、ハムキュウリ、卵焼き、トンカツの四種類のサンドイッチと塩茹で枝豆。

 シンプルだが、割りとリッチな内容かもしれない。

 和気あいあいと「次の試合は誰が勝つだろうか」なんて話したり、サンドイッチを作るに際して如何にして苦労したかという我が姉ジェルトリュードの自慢話に突っ込みをいれつつ。

 俺が二つ目のサンドイッチを食べ終えようとしていた時だ。

「君達、とても楽しそうだね。我々も混ぜてくれないか?」

 エリオット殿下とデリックに、俺以外驚いている。

「王子様だー!」と、ピンクちゃんは目を丸くしている。

 驚くのも無理はない。エリオット殿下とは食堂で見かけるか、校舎のどこかですれ違う以外、会うこともないし、ましてや会話なんぞ恐れ多くてありえないからだ。

「どうぞー」と、俺。

 向かいにいるパトリシア嬢の横に移動。ヴォルフの横にデリック。隣にエリオット殿下。その横にジェルトリュードが座る。

「お昼は、来賓の方と一緒では?」

「あの人達、お酒飲んでばっかりだから。デリックのコンディション考えて、退席させてもらった。オードブルちょっと摘まんだだけなんだ。だから、お腹減ってて」

「よろしければ、一種類ずつどうぞ」

 俺は知ってた。この二人が参加するのを。

 というのも、サンドイッチの相談していたら、王子様が小耳に挟んだらしく、こっそりと「ジェルが作るなら、我々も参加したい」と言ってきた。「我々」ではなく「自分が」だろと内心では思いつつ。

 だから多めに作っといた。十枚切りのパン二枚。これが四種類一切れずつ。ハムやチーズが薄いとは言え、五枚切りのパンを二枚分って結構な量だ。大食いでもない限り女子の 腹にはきついはず。

 エマっちに渡したのを外せば、一種類十一切れ。十分足りるはずだ。

「ジェルが作ったのはどれだい?」

「私は、ハムキュウリサンドを作りましたの。キュウリを切ったのは私です」

 自慢気な姉に、「厚さバラバラ。おまけに切り損ねて繋がってたのエマっちがバラしてたけどな」と俺。

「うっ、うるさいわねー!」

 顔を赤くするジェル姉。

「大丈夫。ちゃんと美味しいから」と、満足げの王子様。

 よっしゃ! 王子様のフラグは姉御に向いとる。がんばれ、姉上。ピンクちゃんに負けるな!

 ふとデリックの方を見ると、かじりかけのハムチーズサンドを見つめ硬直している。

「どないした? いまいちやったか?」

「私、マスタード苦手だから。粒は大丈夫なんだけど。もしかした一味足らないかもしれないわね」

 ジェル姉はマスタードが苦手なのだ。頭がツンとするのがダメらしい。

「えっ!? いえっ。大変美味しいです。このパン、どちらで購入されましたか?」

「手作りやで、ブルジェナ嬢とパトリシア嬢の。ブルジェナ嬢が、知り合いのお店のパンの種取り寄せてくれた」

「パンの種? 撒くのかな?」

 ジェル姉と同じレベルでボケる王子様。

「パンの種ってパンを膨らます材料です。亡くなった父が、昔修行していたお店の弟弟子の方からパンと種を別けていただいて。パトリシア嬢にも手伝ってもらって、頑張って作りました。同じ産地の干しブドウで作った酵母だったからか、かなり父の味に近いのが焼けたんです。もう懐かしくて嬉しくて」

 ブルジェナ嬢は物凄く嬉しそうに答えた。

 そして「カルヴィン様、ありがとうございます」と、歯を見せてニカッと笑った。

次回、第28話「揃う、攻略対象者!」前編


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