第26話「風雲、剣術コロシアム」その2
エリオット殿下の護衛学生が、デリック合わせて三人本戦まで残っていた。
王子様の護衛学生は、デリック以外に四人いる。一人は護衛任務の為本戦には出ないそうだ。
一回戦は、デリックと三年生との対戦。
「デリックって、去年優勝してたんだっけ?」
俺がジェル姉に話を振る。
「そうらしわね。この前、殿下が自慢気に話してたわ」
「あの黒髪の方。いつも殿下と一緒の方ですよね。護衛されてるだけあって強いんだ」
ヴォルフが感心している。
「対戦相手の三年生って士官学校組の」と、俺が言ったあたりでつんざくような雄叫びが響く。
「雷光一閃!」
「神鳴り響きて!」「敵を蹴散らせ!」
「勝利の女神は!」「我らに微笑む!」
「行け行け! 轟々」「勝利を掴めよ!」
「厳鎚響きて!」「勝利は我らに!」
ベンチ席の学生らがえげつない低音ボイスを響き渡らせている。
「デリックも士官学校出じゃないの?」
「護衛の人達、特別クラスで二年しかいないから、士官学校出の人達と変な確執があるんだって」
なんて話してる間に、デリックが相手の剣を空高く撥ね飛ばした。拾う間もなく、首もとにデリックの剣が充てがわれる。
「参った」で、デリックの勝ち。
野太い絶叫と、黄色い歓喜とで会場が沸く。
「デリック様――っ!」
向こうのボックス席で、白い帽子に鮮やかなオレンジ色のドレスの若い女が立ち上がり、身を乗り出して手を振っている。
「ファン?」
「違うわよ。デリックの婚約者」
「えっ、マジで!?」
オイオイオイオイっ! 攻略対象者! 婚約者いるって何よ!? えっ――――!
俺がドン引きしてる間に、二人の剣士は一礼して闘技場から姿を消した。
金属と金属とか激しくぶつかり合い剣劇は、十二試合行われ、午前の部の幕を閉じた。
準決勝進出者の中に、ゲーム主人公の攻略対象者がきっちり残っていた。
次回、第27話「お弁当狂想曲」その4。
よろしくお願いします。