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第19話「カフェテリア 三人娘と茶しばく」

 一時限目終了後。

 仲良く退席する女学生二人。その後ろにいた不機嫌そうな三人娘を俺は呼び止めた。

「ちょっといい?」

「はぁ?」教材片付けながらと怪訝そうなリーダー格のふわもこ黒髪娘。

「放課後、あんたら暇か? 暇ならカフェテリア来て。話したい事があるから」

「わたくし達、三人ですか? かしこまりました、カルヴィン様」

 金髪と赤茶毛が不安そうにしてたが、俺は気にせずその場を後にした。

 よかったー。了承してくれて。俺、攻略対象者なのに非モテだから。冷たくあしらわれるかと。やっぱ曲がりなりにも、公爵家の跡取り様。それに、エリオット殿下の婚約者(内々定だが)ジェルトリュード様の弟君。中堅貴族の令嬢らにはそれなりの印籠になってやんの。お貴族様バンザイ! 神様ありがとう。公爵家嫡男に生まれ変わらせてくれて。これで死亡フラグないならもっと嬉しい!

 生きてた頃に、同級生の女子をこんな感じで誘っても、「はっ!? なんで、あんたなんかに付き合わないといけないワケっ! しっしっ!」と、されていただろう。所詮、オイラは悲しき非モテのチー牛よ。まぁ、それはそれで女子からの塩対応もご褒美と思えばって、なんでや!? まぁ、俺、中高一貫の男子校だから女子と関わることなかったんだよな。予備校なら他校の女子もいるが、接点なかったし。悲しい前世や。

 んーでもって、放課後のカフェテリア。

 俺のおごりで、三人娘にお茶と好きなスイーツを頼ませる。

 紅茶とシュークリーム、シフォンケーキ、チーズケーキ。三者三様だ。持ってきてくれるとのことで、適当な席を探す。

 今日は、あまり風もなく暖かいのでカフェテリアの外の丸テーブルに着く。

 俺が建物を背に、三人と対面する形になっている。丸テーブルなのに、微妙な距離感。

 中央のリーダー格の女。ふわもこ黒髪。肌は健康的に白く、勝ち気な感じのお顔は整ってるが目立つような美人ではない。身長は百六十センチくらいの細身。ハロウィンに白雪姫のコスプレしたら似合いそう。ただしバッタもんぽいと思う。

 向かって左の気が弱そうな女。金髪を頭の上部でお団子にまとめてる。隣の白雪姫より背は高い。ジェル姉程度ある。うっすらそばかすだが、肌が白いので両頬骨から鼻にかけて少し目立つ。こいつもハロウィンでシンデレラのコスプレしたら似合いそう。

 で、右の女。赤茶のソバージュの長い髪。そばかすが目立つ。シンデレラよりちょっと背が高い。うちの姉御より高いかも。肩幅がっしりでお胸も二人よりあるからか、思いの外でかく見える。こいつは、弓持って熊と戦うお姉ちゃんか何かの姫コスあるやろ。それやそれ。

 お姉共は知らんが、俺は似非姫三人衆とか呼んでるのはみんなには内緒。

「で、話ってのはね」と切り出したところで、制服の上に白いエプロンの給仕の女が、大きい銀のお盆に注文品持ってやって来た。同じ学年の黒髪ロングの眼鏡の女やった。

「ご注文の品お届けしました」

「俺、カフェラテ。こいつら紅茶と、真ん中シュークリーム、金髪シフォンケーキ、でチーズケーキ」と、ウォルトさん方式の二本指差し。

 黒髪眼鏡ちゃんは手慣れた感じで、食器を並べると丁寧にお辞儀をしてカウンターに戻っていった。

「イヤですわねー」と、ふわもこ白雪姫。

「何が?」

「だって、学園まで来て労働されてますのよ。見ていてイヤではございませんか?」

「いや、全然」

 平然と答える俺に、三人娘は驚いている。

「勤労奨学生制度だっけ? そういうシステムがあるから利用してるだけだろ。何か問題あるの?」

「あの方、曲がりなりにも貴族ですのよ。市井の平民の様な事をされて恥ずかしくないのかしらと。平民学生でもいたしませんことよ」

「平民学生は割りとええとこお嬢様お坊っちゃまばっりだからね。彼女は、昼間は学生で、放課後はカフェスタッフ。やっぱり、俺にとってはそれ以上でもそれ以下でもないな」

 笑う俺に、ふわもこ白雪姫呆れた顔をしている。

「やっぱり、お前らとジェっ、姉上を関わらせたくないわ」

 俺は、似非白雪姫を睨んだ。

「はぁ!? カルヴィン様、どういうことですの?」

「姉上は、箱入り娘なんだわ。世俗の事を知らないの。そして、エリオット殿下の婚約者、将来のお妃様で国母。そんな人が、何にも悪い事してない人間を差別の目で見る様になって欲しくない。民草全てに慈愛を持つ。そういう精神性を養って欲しいわけ、弟としては! あんたらみたいに腰掛けなんかお婿さん候補探してんのか知らんけど。それなら普通の女学校行って、社交界のシーズンに母親と一緒にパーティ巡りした方が良いんちゃうの?」

「カルヴィン様、いくらなんでもひどいです!」と、似非シンデレラが叫ぶ。

「やっぱりそういう風に言われたらイヤだよね。あんたらはあんたらの想いがあって、この学園に来てるんだから。眼鏡のあの娘もそうだよな。今だけなんだよ。ここ卒業したら、あんたらみたいな貴族階級の人らとしか関われなくなる。姉上には色々なジャンルの人らと友達になって欲しいし、当人もそれを望んでる。余計なことせんでくれ。以上だ」

 俺は席を立った。ちょっと戻って「ごめん、さっきは言い過ぎた」と、テーブルを軽くトントン叩く。「後、早い段階で、姉上と仲良くしてくれてありがとう。あんたらも、姉上にとっては大事な友達だと思うよ」

 三人娘がどんな顔をしてたかは、わからない。

 彼女達は、俺が席から離れるとケーキを食べ始めた。

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