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11「イヤな予感と悪い夢」

 その日の朝は、寝起きが悪かった。

 Wと体幹強化の約束していたので、オープン時間きっちりに食堂へ。

 朝イチに飯を食いたい腹減り学生らを除けば、閑散としている。

 カウンター近く席で男二人で飯を食う。

「顔色悪いようですけど……、大丈夫ですか?」

 気遣い出来る奴である。絶対聞いてくると思ったけど、Wはやっぱり聞いてきた。

「怖い夢見た……。聞いてくれる?」

「それで楽になるなら」

「ジェル姉に刺されて死ぬ夢見た……」

「……。何か喧嘩でもされましたか?」

「してない……。聴いてくれてありがとう。ジェル姉含めてみんなには内緒な」

 Wには具体的には語らなかった。でも、少し話たら楽になった。

 夢の内容。

 恐らく春休みのある日。Cは王都の別邸に帰省する。馬車から降りて家の入口に向かう。大きな扉が不自然に少し開いていた。静まり返る屋敷。不思議な事に使用人が誰一人見当たらない。

 一人でリビングに向かう。

 扉を開ける。春とは言え少し肌寒いのか暖炉に火があった。

 パチパチと炎が燃える音だけが響いている。

 よく見ると、暖炉の前で誰が仰向けで倒れていた。床には赤黒い水溜まり。

 母親だった。

 普段着のドレスは血塗れで、複数箇所刺されたよう。

「誰かーっ!」

 青ざめて叫ぶC。

 部屋の影から誰か飛び出してくる。

 ブスッ

 腹にぶっ刺さる剣。

「姉さん……何で……」

「あんたばっかり、あんたばっかり……」

 髪の毛を振り乱したG。弟の腹に突き刺した剣をぐるりと回した。

「私はずっと辛かった、寂しかった、痛かった……。あんたは私を心配する振りして、笑ってたんでしょ!」

 絞り出すように叫ぶ姉。言いたい事を言い終わると弟の腹から剣を抜いた。

 満足げに笑いをこらえる銀髪の女。

 ふらふらと後退りして、背中から後ろに倒れ仰向けに横たわるC。

 ポケットから小さい箱が溢れ落ち、床で跳ねて銀色の何かと紙切れが転げ出る。

 訝しげに紙切れと銀の何かを拾い上げるG。

 銀の何かは銀色のブローチ。三日月とすずらんモチーフで小さな真珠と魔石が埋め込まれている。

 紙切れを開いて硬直するG。

 剣がカランと床に落ちた。

 小刻みに身体を震わせ弟に視線を落とす。

「なんでよー! なんでよー。あんた、私の事、キライだったんじゃないのーっ!」

 Gの絶叫がリビングにこだました。

 いつの間にか、そんな風景を俯瞰して見ている俺。

 多分、ゲームの一シーンだ。覚えてないけど、お姉らがプレイしてるの端から見てて無意識に覚えてたんやろう。

 ゲームだと、春休みとか長期休みに帰省したCは、断罪イベントで退学になったGにぶっすり刺されて殺される。

 死亡フラグ1だ。

 実際、我が姉G様は何も悪い事をされず、断罪式は華麗にスルーし、王子様とダンスをあそばされ、四月一日の姉弟の誕生会には、主人公とゲームじゃイジメしてて断罪されるネタの特殊仕様の女子と他から「おめでとう」されてケーキまで振る舞ってもらっていた。

 俺からの誕プレは、蝶々モチーフのブローチだ。

 月とすずらんはカタログにあったが、なんとなく避けた。

 だから、全然違う。

 それでも、生々しくて、腹が痛いというかむず痒いというか……。

 もの凄〜くイヤな予感がしていた。

 そして、そのイヤな予感は、夢とは関係なく、その日の午後にそれは的中してしまうのだった……。

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