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4「妹に対する姉弟の尋問」

「取り敢えず、何処に連れて行こうかしら?」

「南の塔は? 東のな」

「そうね。誰かいたら私の部屋に連行しましょう」

「何をなさるおつもりですか!? こんな事してる間に、お兄様があの女に如何わしい事をされていたら――!」

「するわけないやろ!」

「黙ってなさい!」

 ズルズル引きずり、南東の塔へ。

 掃除してる職員や勤労学生はいなかった。

 クラリッサを壁に押し付ける。

 逃げないように、クライン姉弟W壁ドン!

 そして、二人でぐいとクラリッサの顔を覗き込む。

「お前に聞きたい事あんねん?」

「何でしょうか?」

 Wの妹は顔を引きつらせる。

「単刀直入に聞くわね」

「「クーちゃん、水の紋章持ち?」」

「えっ!? ……何の事ですか? わたし、知りません」

 視線を泳がせるクラリッサ。

 俺は左の髪の毛をかき上げて彼女の目をじーっと見つめた。

 数秒後。

「なっ、なんで知ってらっしゃるんですか? お兄様にも秘密にしてるのに!」

「やっぱりねー。あんたの推測正しかったわ」

「学校側から秘密にしとけって言われてんやろ。兄貴にも話さんから安心しとけ。と言いたいが、お前の兄ちゃん、知ってるからな」

「そんな……」

「あくまで憶測の域を超えてない範囲や。お前が紋章持ちって確定した情報は知らない。で、発現条件は?」

「発現?」

「水の精霊ウィンディーネのや。何か事故とか事件に巻き込まれたんちゃうの?」

「その前から肩がむず痒くなったんじゃない?」

 二人でクーちゃんの顔を覗き込む。彼女はうつむいて口ごもっていた。が、絞り出すように口を開いた。

「お芝居を観に行ったんです。その時、火災に巻き込まれて……」

「オペラ劇場燃えたの? えっ?」

「オペラ劇場じゃない。もっと小さな芝居小屋やろ」

「はい……」

 クラリッサの趣味は芝居鑑賞だ。お貴族様が観るオペラからお子様が大好きな人形劇まで幅広く嗜む。王都にいる時期は、別邸に街角にいる人形使いの一座を呼んで人形劇させてるとか。実際、我が家の誕生会でチェインバー夫人が人形芝居の人らを呼んでくれた事もある。

「なんの芝居観に行ったんや?」

「グランギニョルです……」

「グっ、グランギニョルって……何?」

「悪く言えば、グロ芝居や」

「そんな猥雑なのではないです。ちょっとブラックユーモアはありますが……」

「一人で?」

「まさか! お父様とです。ちゃんと内容を知った上で観に行きましたよ。お忍びでしたけど……」

 親の検閲済みで。なるほど。

「そしたら、演目終盤で照明のろうそくが倒れて、それが燃え広がって……。前方の席でしたから、他のお客達と取り残されてしまい。お父様の風で煙に巻かれませんでした。わたし達を先に逃がそうとしてくれたお父様に、燃える柱が落ちてきて」

 王都の王立なのでオペラ劇場は、魔具の照明がある。通常のオイルランプやろうそくもあるが、照明による火災リスクは低い。

 人の良いWのお父ちゃんだ。人命救助の為に魔力リソースを裂き過ぎて、自身の防御が出来なかったか……。

「左肩が痛いと思った後、気が付いたら湯気の出た柱を片手で持ち上げていた水の人がいて。『火を消して助けて!』と、叫んだら、水の人が氷の粒で消火してました。二人で外に逃げた後、お父様が『もしかしたらウィンディーネかもしれない』と」

 おひぃさんの時と似てるな。あれは墓場で瘴気にやられて化け物化した骸骨やったが。

「それから事情聴取で魔法省の方が来たりして……」

「それで飛び級したのね……」

「お兄様ほどわたしは風を使えませんから……」

 ええ加減、腕痛いから壁ドン状態をやめた。

「ともかく、兄貴大事はわかるけど、他学生に嫌がらせすんなよ!」

「そうよ。貴族学生が平民に嫌がらせしたら大変な事になるの!」

「大変な事って……」

「「断罪式」よ!」

「断罪式……?」

「入学式の後、説明会で教えて貰えるけど、学年末のプロム会場で全学生の前で悪行を詳らかにされて」

「退学やら停学になる。そんなんなったら、大好きなお兄ちゃんのお顔に泥を塗る事になるで。ええのんか?」

「あれは見ていて、悲惨だったわー」

 いや、ゲームだとお前が断罪されてんですけど……。

「お兄ちゃんに近付く女は許せない!って、嫌がらせしたらあかんぞ。家来みたいのにやらせてもあかんからな! チェインバー家の事を考えろよ!」

「はっ、はい……」

「後、」ジェル姉は自分の左肩を指しながら「紋章の事は絶対秘密よ」

「それは学長から言われました」

「秘密にしとかな、えらい目に合うで」

 クラリッサは俺とジェル姉を交互に視線を送った。

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