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3「お兄様偏愛主義者の襲来」

 Wの妹。クラリッサは厄介だ。

 もの凄ーくお兄ちゃん子なのだ。

 三歳くらいから兄貴にべったりしていた。

 俺の誕生会。子供らで楽しく遊んでた。Wとジェル姉が並んで床に転がってる玩具で遊んでいたら、姉御にのしかかってきて髪の毛引っ張ってきたのである。

「痛い痛い。やめてー!」と、泣き叫ぶジェル姉。

 おばちゃんことチェインバー夫人が、「き――――っ!」と奇声を発する三歳児引き剥がして連れて行くを数回繰り返してたような……。

 別にジェル姉の事が嫌いなのではない。

 兄のWに自分以外の女子が纏わりついているのが嫌なのだ。

 言葉を理解出来るようになった時。「属性相性があるから」と一生懸命説明したが、彼女は納得しなかった。ジェル姉にこだわらなくなったのは、うちの姉御がE殿下の婚約者になってからだ。

 一年の時。クラリッサが飛び級で来ると聞いて俺ら姉弟が「うわーっ……」と、おひぃさんを心配したのは言うまでもなく……。

 悪役令嬢が舞台から一時的に退場しても、Wルートは、妹がいるから厄介なのだろう……。

 そもそもゲームだとクラリッサはWと主人公がくっつくのを容認してるんだろうか……。

 まあいい。ピンクちゃんも、おひぃさんとWが両想いなのを喜んで応援していたから。

「お兄様。お付き合いされるご友人、特に異性の方ならば、もっと素敵な方を選ばれるのがよろしいですわよ!あなた!何家の方です?」

 おひぃさんに向かってびしっと指差しクラリッサが睨む。

「どこの家とは?」

「お家の爵位は?」と、きつめに問うクラリッサ。

「私は平民で実家はパン屋ですけれど……」

「ふっ」と、鼻で嗤う。「風の名門チェインバー伯爵家の嫡男の友人として、平民のしかも小麦臭いパン屋の娘が相応しいとなんて厚かましいんでしょ!」

 俺と姉御はクーちゃんの肩を掴んだ。

「職業差別は良くないわ」

「犯罪でないなら、職業に貴賎はないの!」

「ここは建前上、先輩後輩の上下関係はあっても学生という立場以上のものはないのよ!」

「それに、B嬢は、“火”の元素精霊の淑女だからな」

「平民かもしれないけれど、お姫様だから」

 クラリッサがふっと嗤う。

「あなたでしたのね。紋章持ちの女は! どんな素敵な方かと思えば。まな板のちんちくりんだなんて。ほほほほほっ。もっと高貴な方を選べばいいものを。女神様も見る目がないなんて残念です」

 おひぃさんの母親は、コゼティスの第三王女だから……とは言えない。

「まっ、まな板……」

 胸元掴んでおひぃさんがうつむいた。

「胸の大きさで女性の良し悪しは計れないから」

 ロケットおっぱいな美女に言われても、慰めになってないんだが……。

「最低でもわたしくらい」

 そこで口ごもるクーちゃん。

「とにかく、お兄様に気安く近寄らないで下さいませ! でなかったら!」

 Wの妹は、B嬢に飛びかからん勢いだった。

 二人で、ちっと舌打ち。

 俺は左腕をクーちゃんの右腕に絡ませ、姉御は彼女の左腕に自分の右腕を絡ませる。

「ちょっと何をなさるのですか!」

「「いい加減にしなさい!」」

「お兄ちゃんの邪魔はしないの!」

 姉弟で、クラリッサを引きずって南口から庭園を出た。

「お離しになって! ジェル姉さま! カル兄さま!」

 ジタバタジタバタ。

 クラリッサは足をばたつかせ、いつまでももがき続けていた。

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