第138話「一学年終了。二学年に向けて」
三月も終わる頃には、宿舎の掃除が完了していた。
寮関係の職員では足らないらしく、学生が連れてきている使用人も手が空いてたら手伝いに借り出されていた。うちのメイドのエマも、俺ら姉弟が外園で魔法修行していた時は、三階の女子寮の窓拭き等していたらしい。そういう契約だから特に気にはしていない。
四月に入って、早々と新一年生の荷物が運び込まれ、学園内はバタバタしている。
気が付いたら、ゲームの内容が半分終了していた。
五歳の誕生日から十一年……。
姉のジェルトリュード・クラインが、弟のカルヴィン・クラインをぬっ殺す設定があったから、当初は毎日戦々恐々としてた。
家族として一緒に過ごしてるうちに、姉である彼女が生粋の性悪ではなく、成長過程で何かしらの心に闇を抱えてると思った。
俺は自分が出来うる事をしてきたつもりだ。
もし、ゲームのストーリーを完全網羅してる奴が近くにいて、我が姉、ジェルトリュード・クラインを知ったなら、驚嘆したことだろう。
悪役令嬢でラスボスのはずの女が、超絶素敵なお姉様に成り下がっているのだから。
主人公やブルジェナ・サンチに嫌がらせする事なく、寧ろ、いじめていたはずの二人と仲良くなり、断罪式もスルーして、プロムでは攻略対象者のエリオット殿下と仲良く踊っていた。
これにてゲーム上の悪役令嬢闇落ちルート完封!
そして、俺を含む攻略対象者達。
ヴォルフ・チェインバーは、ブルジェナ・サンチと付き合ってないけど、付き合ってるみたいな関係だから、対象者から消えた。
デリックも、俺が呪いの言葉をかけてやったから恩人のブルジェナ・サンチから心が離れていないはず。だから、あいつも対象者から外れただろう。
アレクシス・レオポルド。この人、よくわからない。主人公があの人の胃袋でも掴まない限り大丈夫かな。
行商ジェセフ・トニー・マリオンは滅多に学園に来ないし、そもそもこいつは俺より攻略が難しいキャラだからほっとってもええか……。
エリオット・イシュリール。子供の頃からジェルトリュードにぞっこんだし、我が姉ジェルトリュードも王子様大好きだから、きっと攻略対象者から外れてる。
さて、二年生になると新キャラが四人投入される。
うち三人は、主人公の攻略対象者だ。
そいつらの情報は微妙にしかない。
恐らく、そういう奴なんだなと憶測はあるが、実際会ってみないとわからない。
会ったら会ったで、主人公以外の誰かに押し付けるなりしないとな……。
俺の邪魔は合法的に全部消す予定。
そうそう。
今更なんだが、お姉達がはまってた乙女ゲームのタイトルをちょっと前に思い出してたんだよな。
『Elemental Lover』
てっきり、「元素精霊の淑女」かと思ってたんだが、お姉達は「エレラバ」「エレラバ」言うてたな……。
でも、ゲームのタイトル判ったところで、なんのヒントにもなりゃしない……。
ヒントと言えば、最近、見返したノートに気になる一文を見つけた。
自分が書いたはずなのに、全く記憶にない。
おまけに、お姉らが話してた内容ではなさそう……。
悩んでもしょうがない。
二年生に向けて頑張るだけ。
もうすぐ新学期が始まる。
我が姉ジェルトリュードを闇落ちなんてさせない。
仮に、彼女が闇落ちして黒いドラゴンになったとしても、絶対俺は生き延びてやる!
これにて前半戦終了です。
初期の頃ブクマ下さった方、評価ポチってくれた方ありがとうございます。
ここまで読んで頂いた皆さま、お疲れ様です。
これがUPされた時には、まだ後半戦は出来ていないと思います。
もしかしたらギブアップして後半戦上げれないかもしれません。
事故とか病気で、上げれなくなる可能性も考慮して、前半戦まで予約掲載しておきました。
一年以上経っても続きがないなら……。
と、とにかく頑張ります。
(2024/9/27石平直之)