第11話「新年会のだるまさんがころんだ!」 前編
学生寮一階にある大き目の施設として、浴場以外に遊戯室とカフェテリアがある。
遊戯室には、ビリヤード台やダーツの的や、打ち合わせやカードゲームする用のテーブルがいくつか置いてある。
カフェテリアは、小さな喫茶店みたいな場所で、別料金払えば、お茶とスイーツが食える。この別料金は、寮費込みの学費には含まれない。直接現金で払うか、親にツケで払わせるか。我が家にしろ、王族にしろ、後で親元なりに請求がいく。平民から搾り取った税金で飲むお茶は美味しいです、って違う!
向かいあって座っているジェル姉とエリオット殿下が話に花を咲かせてる間、残された男二人は超退屈。
デリックは、主の話を聞きつつ、警護に余念がないのか、ちらちら周りに気を張っていた。
時々、二人は俺らに話を振るから、俺も聞いとかにゃならんし。
話がこちらに振られそうもない時、デリックに尋ねた。
「カフェテリアとかにいる制服の上にエプロンしてお茶運んだりしてる女子学生って何?」
「ご存知ないですか? あれは、勤労奨学生制度の学生です。学費の一部を免除してもらうかわりに、学生寮を中心に清掃やカフェテリアの給仕をしてるそうです」
「へー。お前の学費は、王室持ち?」
「はい。オレは運良く、殿下の護衛兼御学友に選ばれたので」
「お前の魔力値高かった?」
「あまり。オレは百八十だったかな。魔法剣士系は百五十くらいで合格なんです。身体能力も加味されたそうです」
そうだ、こいつ、子供の頃から身体能力化け物だった。
ちょっと、俺ら姉弟と「王子様」と「ポチ」との出会いを語ろう。
それは、姉ジェルトリュード九歳、俺カルヴィンが八歳だった。
王宮の新年会に行く事になった。
初めての王宮に、二人でワクワクそわそわしてた。
パーティー会場は、王族の方、お貴族様だらけ。会う人会う人にご挨拶ばかりして大変だった。ジェル姉は、年相応というか女子特有の賢さもあって、とても良くできたお嬢さまな感じに、すましたお顔で上手に立ち回っていた。「可愛くて賢そうなお嬢さんですね」とジェルを褒める人に、母親は「見た目だけです。ほんと、出来が悪くて困ってます」ばかり言っていたので、俺は気分悪かった。
俺は、お世辞と自慢話ばかりの大人達に辟易してたけどな。俺の親と同じように子供を連れ回してる親の多いこと。俺らより大きいならまだしも、幼稚園児くらいの子供を見せびらかしているのには呆れた。
そのくせ、一通りお目通り終わったらほったらかし。「あっちで遊んでなさい」と、部屋の隅に用意されてオードブルやお酒のテーブルの方に追いやられる。
お子さまがそこそこ食べられる物あればええよ。クラッカーくらいしかないんやが。
俺らも、他のお貴族さまと話してる両親にほっぽかれていた。
「どうする?」
「どうする?と聞かれても困るわ」
ジェル姉も困るよな。
「ガキ共走り回らせたら、給仕の人にぶつかって危ないやろ。俺、さっきトイレ行った時、ええとこ見つけたら、いつもの遊びするか」
「いつものやつ?いいわね」
姉御と二人で、テーブルクロスの下に隠れてきゃっきゃきゃっきゃやってる幼稚園児くらいの子供らや、会場の壁にもたれてつまらなそうにしてる子供とかを数名誘って、会場を出た。
手洗い途中にいい感じでT字路になってる廊下に向かう。
「鬼ごっこするの?」「おままごとするの?」
子供らに「オニごっこみたいなことします」
「雪だるまさんが転んだです!」
「なにそれー」
子供らに、だるまさんがころんだのルールを教えて、ゲーム開始。
俺とジェル姉が交代で鬼をやり、鬼でない方が子供らを上手に誘導。廊下曲がってどっかに逃げないように。
五回戦目の最中だった。
「君達はそこで何をしてるんだい?」
聡明そうな男の子の声が、ジェル姉の「雪だるまさんが」の掛け声に被り、一旦ゲームが中断。
声の主と後ろに二人。
背の高さや顔つきから俺らより一つか二つ年上な感じのする金髪の少年。全体的に血色良くしゅっとした鼻筋に、見開いた目は蒼く澄んでいる。白というより銀に近いような立派な上下に青いマントが付いている。王宮の王族が着ているような出で立ち。
彼の後ろにいるのは、金髪の美少年より背が高く少し癖のある黒い髪。黒いズボンに白いシャツ。上に紺に近い青いジャケットを着て、左に剣を携えている。金髪美少年とは違う系統のイケメン少年。
二人の後ろにいたのは大人の男従者だった。
「パーティー退屈なんで、子供らが悪させんように、一緒に雪だるまさんがころんだで遊んでたんですよ」と、俺は金髪少年に近づいた。
「? 雪だるまなんてないじゃないか」
このパツ金天然か?と呆れたが、
「そういうゲームです」
俺はゲームルールを説明する。
説明最中、小さい子供の一人が「あっ、王子様だ」と指差した。
「ほんとだ。王子さまだー」
「えっ、王子様?」
ジェル姉が、捕まえた子供と小指繋いだまま見とれている。
やっぱりなー、と思っていたが、何て言って良いものか?
「王子様とか来ちゃったから止めるか?」
「え――――!?」
子供達の不満の声。
「水を差してしまったようだね。我々も混ぜてくれないか?」
「いいよー!」「いっしょに、やろー!」
勝手に承諾するなよ、ガキ共!
しかし、王子様にお近づきになるチャンスじゃん!
「じぇ、姉上! 俺とオニ替わりましょう」
「あら、いいの?」
俺はオニ固定位置の廊下の壁に向かう。
ジェル姉と入れ違い様、「王子様のアテンドもよろ。オニは俺が続けるから」
「わかったわ」
軽く手を叩きあって選手交代。
黒髪の奴が、従者に剣を渡していた。
9/21昨日、生田絵梨花さんのライブに連れて行かれてました。身近に生田さんのファンがいたので。
で、ライブで最後に弾き語りされてた曲を25/01/21up予定の第122話のイメージ曲に勝手にしてたので、生で聞けて幸せでした。
曲名は伏せます。ネタバレになるので。
わかった方は第123話の感想欄に答えをお願いします。