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第116話「叱る者と叱られる者」

 学長室。

 学長の机の前に入った順で四人並ばされる。

 デリックと俺を挟んで、ブルジェナ嬢とパトリシア嬢。

 何故こんな並びかと言うと、部屋に入った順だから。

 学長の右斜め前にティーダ先生。部屋の隅、俺の斜め後ろに副学長がえげつないプレッシャーをかけ、腕組して立っている。

「何故、無断で学園外から出た?」

 執務机の上に両肘ついて睨み上げてくる学長。

 普段は女子学生に人気の好好爺だが、今日は違う。学園の責任者として、威厳と尊厳を兼ね備えた手練れの魔法使いに見える。

 お前ら小わっぱ共など一捻りじゃ! と言わんばかりだ。

 この部屋三度目なんだけど、今回はめっちゃこえーよ!

「えー。女子が幻のバターでお菓子作りたいねと言ったので、それじゃすぐ作ってよ。大丈夫、直ぐに帰ればばれないってー! と無理やり連れ出しました。全部俺が悪いです。すみませんでした!」

 早口で答え、頭を下げる。

「何故、エリオット殿下の家来を連れていった?と言うか、何故任務をほって彼らと行動を共にした?」

「それはですねー、俺とデリックは子供の頃からの知り合いで、こいつの弱味を握ってて脅して連れ出しました。すみませんでした」

 これも早口で済ませた。

「弱味とは、何かね?」

「それはお答え出来ません!」

「クライン卿、それは脅迫に当たるよ。デリック君の訴えがあれば、断罪式含め処分の対象だ。例え、君がエリオット殿下の婚約者の弟君だったとしても」

 ティーダ先生の眼鏡がギラっと光った様に見えた。

「あー大した事ではないんすよ。へへっ」

「で、外泊理由は?」

 眉間に皺寄せ学長が睨みつけてくる。

「頑張って晩飯までには帰りたかったんですが、雪が降ってきて。男二人ならまだしも女子二人だとしんどいなと。で、結局、幻バターの話はガセで。バター買う手持ちもあったから、夜行訓練でも使わせてもらってる宿に泊まろうと。あっ、部屋は男女バラバラで、風呂も他の客が入らんように浴場前の廊下で、野郎二人で守衛してました。以上です」

 半分事実やもん!

「はぁ、どういう処分を下すかな」

「瘴気の森に肝試ししに行ったわけではないので、寛大な処分でお願いします」

「規則を破った貴様が言うかっ!」

 後ろから副学長の怒声が響く。

 ひっえっ!

 三人は縮みあがってんのに、顔色変えないデリックは凄ーよ……。俺は、チビりそうになったぞ。

 なんか部屋の外が騒がしい。

 コンコン

 ガチャ

「「失礼します!」」

 若い男女の声。

 振り返る。

 姉御と王子様!

 二人は部屋に雪崩れ込んでくると、俺の横にジェルトリュードが立ち、デリックの隣にエリオット殿下が立つ。

「弟が」「僕の部下が」「「すみまんでした」」

 二人同時に頭を下げた。

「私のわがままで、弟と友人らを買い物に出してしまいました。私にも責任があります」

「僕も、学生三人では危ないのでデリックに頼みました。僕にも責任があります」

 いや、ちょい待て。姉御と殿下は関係ない。話ややこしくなるやろ。

 学長とメガネ先生が顔を見合せ、怪訝に俺らを見渡す。

「ジェルトリュード嬢。君が弟にねだった物は何だった?」

 ティーダ先生の質問に、ジェル姉は答えに詰まる。

 そりゃそうだろ。飛び込みで何も打ち合わせなくアドリブかまされたらこっちの計画台無しやんけ。

「えーっと、そのー、発酵グラスフェッドバター……」

 ありがとう、バターマニアさん。

 辻褄があったわ。

 呆れた様にティーダ先生がため息ついた。「そういうのは、マリオン商会を通すように」

「すみませんでした」

 六人で頭を下げた。

 俺らに四人に下されのは、金曜日終日迄の自室謹慎。

 学業時間と夕食以外は宿舎から出ない事。宿舎のカフェテリアと遊戯室の入室禁止。

 軽いのか重いのか……。

 教務課前の掲示板にその旨張り出される。ある意味晒し者だ。

 処分は俺だけにしてくれと訴えたが、ダメだった。

「エリオット殿下。デリック君の護衛の任を一時的に解いて下され。彼もこの学園に在籍する身。学園の規則に従ってもらいます。護衛は、他の学生や職員もいますから、大丈夫ですな?」

「はい。承りました、学長殿」

 デリックは腰の剣を外すと、無言でエリオット殿下に差し出した。

 殿下がそれを受け取って、なんやかんやで解散になった。

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