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第111話「ポチの気持ちが読めません」

 野郎の部屋。女子の部屋と変わらない狭さ。ベッドが二つ。

 俺は女子部屋がある壁を背にベッドに座る。

 反対のベッドにデリックを座らせた。

 奴は自身の左に剣を置いている。

「お前さぁ、なんでブルジェナ嬢の後ついていったん?」

「……」

 俺から視線を反らしたまま沈黙。

 こいつ、本当、感情がわからんわ。

「あの娘がトコトコ園外に出ようとしてるの見たんやろ、馬場から。何で直ぐ止めなかったん?」

「止めようと何度も思いました……。でも、どこで呼び止めて差し上げたらいいか、タイミングが掴めなくて……」

「はぁ?」

 妙な沈黙。

「本当はさ、ブルジェナ嬢と二人きりになる機会うがってたんとちゃう?」

「そんな事はないです……」

「そうかな。あの娘、今"元素精霊の淑女"しかも火属性。無属性のお前なら嫁さんにするなら丁度いいよね。出世の足掛かりになる。お前もあの娘も庶民だから身分違いで悩む事もない。関係者が滅多に来ない村まで来ちゃってどうするつもりやったん? 天気も悪いし、結局ここに留まらないとあかんわけよ。今日は一人部屋は埋ってるって」

 俺はわざとニヤニヤしてやった。

 相変わらずポチの内心が読めん。

「“王子様の五剣”格好いいよなー。士官学校組でも特別選抜者達。通常の士官学校組の脳筋野郎と比べても強いし見た目も良いから女学生達の羨望の的。失恋みたいな状態で精神不安定な女子に、全学年の女子が憧れるイケメン学生が寄って行ったら……。コロっといっちゃうんじゃないかなー?」

 はぁとため息をついて「オレ、自分の見た目が良いとか思った事はありません」

 き――――っ!

 こいつ、百七十センチない俺に喧嘩売ってんのか!?

「馬鹿な女ってね、心が弱っている時は自分に優しくしてくれた男にヨロヨロいっちゃうらしいよ。それが知り合いのイケメンでも、知らんおっちゃんでも……。

 上級生が言ってたな。『正攻法で誘うより、嘘の手紙で呼び出して外園の茂みで手篭めにすりゃいいんだよ。既成事実作ってしまえば、退学になってもお釣りがくる。あの女、ちょっと足らなそうだから』ってな。

 いいよね~。士官学校組は、身体の鍛え方がガキの頃から違うのか、皆さん背は高いし、筋骨隆々。お貴族様と平民のボンボン学生共が風呂場で士官学校組を妬んでグチグチ言ってんのに。お前、恵体だしさぞ立派なモノをお持ちでしょうね。あの子さぁ、どっちかと言うと恋愛脳してんじゃん。危ういというかちょろそう。身体も小さいからさ、締まりよさそ」

 シャキーン

 反射的に俺は仰け反って、ベッタリと壁を背に付けた。

「オレはいい……。でも彼女を侮辱するな!」

 声を押し殺し怒気を纏わせた剣を俺に向け、恐ろしい目で睨みつけてくるデリック。

「冗談や、冗談! 剣収めて。謝るから、ごめんごめん」

 怒りの視線を向けたまま、仕方がないとばかりに王子さまの家来は剣を鞘に収めた。

「こんくらい酷い事言わないとさ、お前感情出してくれないと思って……」

「……。駄目ですよ。これくらいの事で感情を出す方が……。まだまだ自分は未熟です……」

「感情の抑制が出来ないくらいおかしなるって、どうなんやろな。ブルジェナ嬢とお前、どういう関係?」

 奴は俯いて沈黙した。

「お前とおひぃさんの関係を考えた。初めて接触があったのは、多分剣術大会のお昼。サンドイッチが美味いとか言ってた時。その後は、落馬したおひぃさんをお前が助けた。リレー大会の後で、二人でお茶した。婚約者がいるお前がブルジェナ嬢狙う理由って、やっぱ紋章持ちだから以外見当たらないんだけど」

「だから、違うんですって!」

「何が……」

 奴は頭かきながら、困った顔をしている。

「誰にも言わないでもらえますか?」

「今日の事はお互いやばい。だから全部内緒にするつもり」

「彼女は、俺の……命の恩人なんです!」

調整の為、25/01/01はお休みします。

カクヨムで元旦から三が日かけて短編あがります。

【短編版】気高い薔薇の育て方!「俺と姉御と白雪姫」全八話分。

元旦六時間毎。二日目は八時間毎。

気になる方はそちらはどうぞ。

では、良いお年を!

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