第9話「ぶらっと学園外園」
替え玉入学するようなおもろい奴は、一人もいなかった。
魔法値が上がってた学生はそれなりにいたが、下がってるのはいなかった。
ジェルトリュード姉様は、ちょぴっと数値が上がっていて喜んでいたが、十%未満なら誤差である。
内園の施設を周り、北門から出て外園の施設へ。反時計回りに案内される。
北東にある昔のコロシアムを流用した競技場と運動場。北西の魔法実技場。南西の乗馬場。南東にある。薬草等や実験動物を育てている小さな農園というか畑。
東西南北の門から直線に延びた道と内園を取り囲むような同心円状の道が交差している。小道はきちんと舗装されていて歩きにくいことはないが。
「疲れるわねー。お茶したいなー」と、ジェル姉はぼやいていた。
広場的な施設や建物以外、小道の周辺は人工的に作りたて植え込み。
原っぱみたいな芝生エリアもあって、ここに敷物広げてかわいい女子達がお茶会したらさぞや絵になるだろう。
時折、魔法使いにあるまじき筋肉の塊みたいな一団が、「はっ、はっ、はっ、はっ」と掛け声しながら俺達を抜かしていった。白いシャツに灰色のズボン。学園指定の体操服というかトレーニングウェアというか。あいつらは、魔法剣士系の上級生だ。今日は授業がない。自主練なのか、それとも部活なのか。
もっさり例えるなら、あいつらは武官。俺らは戦闘訓練を施された文官候補。女子にいたっては、戦闘の最前列に行かせられないから「戦いながら弱者連れて逃げろ」のスタンスらしい。
さっきの筋肉達が着ていのと同じウェアの女子学生が十数人程、運動場を走っているのが見えた。お胸が、お胸がわっしわっし揺れている! 眼福、眼福! 生きてた頃は男子校だったから、お胸が揺れるなんて素敵な光景、縁がなかったんや!
ええやろ、さりげに視かっ、違った拝ませてもらったかてこれくらい罰あたんねーよ。と思ったら、姉御に後ろ頭こづかれた。
「めっ!」て、怖い顔していらっしゃる。
何故、バレた!?
顔には、出していなかったのに。
外園の壁の方は森みたいに木が繁っている。濃い緑の木々の間に石造りの塔を見たので、「あれ何ですか?」と案内のおっちゃん職員に聞いたら、騎士団があった頃からある塔らしく、今は結界用に一部利用しているとか。内園にも似たようなのが北西と南東の二ヶ所に残っているが、それは天文部(愛好会的な集まり)が、時々利用しているとのこと。
当たり前だが、学園外への無許可外出は許されない。学生寮以外にも内園の門限もある。夜間活動する場合、職員許可の下、内園の塔で星を観察しているとか。
敷地の広さから、総合大学くらいの大きさあるけど、やってる事は微妙に高校みたいや。高校生してた頃、俺、何してたんやろ。なんか懐かしいなぁ。
で、俺らの後ろで、ヴォルフと連れだって仲良く話してる緑頭の女。なんなのこいつ?
背はあまり高くなく、見た目かわいいけどさ、胸ないのよ。ちっ、違う。ヴォルフ。お前、乙女ゲームの攻略対象キャラやぞ。入学早々、プレイヤーキャラと違う女といちゃいちゃしてるって、何なの!?
俺はええよ。攻略対象一人脱落してくれたら、楽やもん。