第101話「光のリボンを使える人」
自主勉ほどほどに、昼飯を食う。
「カルヴィンっ!」「カルヴィン様」
ジェル姉とピンクちゃんがトレー持って俺の前に座った。
「ここで、勉強ですか?」
「一人だと淋しいねん! それに、自室は埃っぽいし、窓開けてたら寒いしで。ここは明るいし人がいるから寂しない」
「私もここでお勉強しようかな……」
「で、ブルジェナ嬢は?」
女子二人、ちょっとお互い顔を見合わせる。
「身体的には元気よ。でも」
「精神的に不安定なんです。朝は来ましたけど、皆さんの視線が怖かったそうで。お昼は自室です」
「あの人、明日誕生日だから二、三日は自室から出てこないわよ」
「誕生日かー、女は大変やな……」
「私達は、ウソっけの誕生日があるからいいけどね……」
「ところで、ピンクちゃん。この前の……事故の事なんだけど、もし俺でなくヴォルフと塔の近くに居合わせたらどうなってたと思う?」
「えっ……。ヴォルフ様だったら……」少し考えて「“緩衝の風”を発動させていた……のかな……」
「それだったらブルジェナ嬢だって使えるはずなのに、使わなかったってのが引っかかんだが」
「『使えなかった』って言ってたんだって。咄嗟過ぎて何を使えば良いか解らなかったみたい……」
「そうか……。じゃあさ、ピンクちゃんとデリックかレオ先輩と一緒だったら、助かったと思う?」
「あの人達、格闘舞台でいなかったでしょ」
「例えばや。ピンクちゃんが“光の絹紐”でブルジェナ嬢を一本釣りするなら」
「えっ……」
ピンクちゃんの目が泳ぎだす。
「何の話ですか?」
「光属性にあるやろ、“光の絹紐”って、光で出来たリボンを鞭みたいにして絡ませたりする魔法」
「えっ、まあそうですね。あの状況では彼女に絡ませても落ちちゃうかな」
「例えばだよ」と、俺は空いてる隣の椅子に置いておいた白鞄からノートとペンを取り出す。そして適当な白ページに塔の絵を簡単に描いた。
「塔の凸凹してる部分に光のリボン引っ掛けて」塔の凸にアーチ線を描いて「つるべ落としみたいにしたらどうかな」
「……。それなら何方かが彼女を受け止める事が出来たら可能かも」
「そうか……。うん、わかった」
「光のリボンって、光属性にそんな術あるんだ」
「ピンクちゃんは使えるんやろ」
俺は薄く笑った。
「えっ、ええ……」
「ピンクちゃんは優秀だから」
「そうなんだ」
姉御がピンクちゃんに視線を落とすと、彼女は肩をすくめた。
「で、午後どうするの?」
「まだ人が多いから、自主練でニキロ走って、剣術訓練やな」
「魔法も体力勝負だから、外園二周くらいしようかな」
ジェル姉は頑張るぞとガッツポーズして見せた。