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第8話「メガネ先生のお説教」

 うちのメイドのエマ含めて、後ろのドアから使用人達が三十人弱ほど入ってきて、後ろの席に座る。

 俺ら含めて、使用人をお付きとして連れてきてる貴族や平民のお金持ちがいるからだ。

 寮費込みの学費以外に費用払えば、別棟に使用人用の寮も提供してもらえるし、同性ならば、学生と同じ部屋に住み込みでも許されている。

 女性の使用人は、男子寮への立ち入りは許されている。

 性別、服装、年齢、バラバラだな。女性が多い。

 そんなこんなしてるうちに黒板横の引戸が開き、金髪の眼鏡のスラリとした男性が入ってくる。

 白いシャツに黒いズボン。

 予備校の先生みたいというか、良く言ってIT系会社のCEOみたいな感じ。

 ジュリアン・ティーダ。

 火と風属性。魔法理論と歴史担当。

「メガネ先生」が、この人だろう。

 しかし、俺が春休み中に調べたら、アラサーで既婚者なんだよな。ここから東の町に奥さん住んでて、週末はそっちに行ったり、奥さんがこっちに来たりしてるとか。

 既婚者が攻略対象キャラって全年齢対応の乙女ゲームで有りなのかを考えた結果。

 攻略キャラではない!という結論に至りましたよ、ぱちぱちぱち。

 メガネ先生が教壇の下に置いてたであろう魔具を取り出す。所々波紋状の穴の空いた丸い板が取り付けられた短い棒の様な物。

「聞こえてますでしょうかー?」

 声と同時に、俺の顔にふわっとした風が当たる感覚。

 風魔法の応用したら拡声器だ。

 王都ではそれほど珍しくはないが、一般家庭にあるものでもないし、我が家にもない。

「皆様ご入学おめでとうございます」から始まり、この学園が八百年前にあった魔法騎士団の駐屯地跡地に作られた事、学園の歴史、学園と魔法研究機関アカデミーと士官学校との関係等々。

 一番力を入れて話していたのは、魔法とそれを持つ人らについて。

「魔法とは、物理的暴力と違う暴力装置でもあります。今、貴族階級の方々は地方の豪族や小国の王族でした。現王朝の系譜の王族が現れるまで、四大元素を素にした魔法で小競り合いのような中小サイズの戦争を繰り広げていたわけです。そうなると被害被るのは魔法を使えない大多数の人間です。魔法も万能ではありません。我々、魔力切れたらただの人です。取り扱いに気をつけて下さい。魔法は、我々含む人間を守る暴力装置と同時に、平和利用し人間が幸せに生きられるシステムであれと思っています」

 まあ当然やろうなーと聞いていたんだが。

「この学園では、出自による差別はしません。現在、王族の方数名が在籍されておられますが、寮の部屋等のプライベート部分以外、平民出身の学生と同じですから! 才能と学業の結果を讃えるのはいっぱいしてください。しかし、貶したり悪し様に言うのは控えてください。腹の中で何を考えていても自由ですけれど、よろしくない事を実践するのは悪です! 特に上級貴族の方々! 出自等々で下級貴族及び平民出身者にしょうもないマウント取っての迷惑行為は止めてください! おやりになりたいなら、サロンや社交界で思う存分おやり下さい!」

 厳しい面差しのメガネ先生と目が合った。

 おっ、俺ら!?

 そんなことせえへんって。

 鋭い眼差しにたじろいでいると、隣の姉がにこりと微笑み「弁えております」と、澄んだ声で応えた。

 ジェル姉様、ステキ!

「学生だけではありませんよ。教職員、及びお付きの方々への迷惑行為もダメですよ。後ろのお付きの方々! あなた方もです! 卒業生もいますよね。主の為、他学生や同業者に嫌がらせしないように。発覚した場合、主である学生共々退去していただく可能性もあります。職員への狼藉は、学長への狼藉と同じです。何かありましたら教務課職員及び私の方に報告下さい。では、お付きの方々は退出しいただいてかまいません」

 次々に学生のお付き達が後ろのドアから出ていった。

 後は、過去あった狼藉例を挙げていくメガネ先生。

 特殊生地で魔法防御が施されている制服を脱がせて火属性魔法で炙った話や、女子学生や女の職員やお付きの人にセクハラや狼藉働いた輩の末路など。

「婦女暴行犯の一族からは、十年間入学許しませんから」

 この学園、過去何があったんや……。

「学年末に開催されてるプロム前の断罪式です。が、ここ十年、断罪式がなかったためしがありません! 断罪式は、教職員相談の下、学生会主導で行います。晒し者になった挙げ句停学や退学は恥ずかしいですよ。学生として誇りある行動に努めてください!」

 断罪式って学生会主導やったんや……。てか、ゲームのジェルトリュード様。一体何やらかして断罪されて退学になるんだよ。その挙げ句、闇落ちして、黒いドラゴンに変身し、ギロチンエンド。

 ほんまに、大丈夫か?

 俺は、チラりと姉御を見た。

「本校は一学年男子女子各五十人ずつを想定してますが、今年度もそれより少ない人数の入学となってます。試験の結果、魔法値が規定より届かなかった方、魔法値は規定に達していたけれどスキル面や学費の面で入学叶わなかった方、沢山いらっしゃいました。この学園に入学出来ただけでもエリートです。自分を誇り、三年かけて自身の魔法を研鑽して下さい。以上です」

 メガネ先生の熱弁というか、まだなんもやってないのにお説教というか……。

 ほんまに皆さん、何やらかすんやろう。ちょっと不安になってきた。

「この後は、魔法値と魔痕の登録しますので、屋内訓練所へ行ってください。王都等で昨年末試験受けられた方でも、魔法値が変わってる可能性もありますので。多少下がっていても退学にはなりませんが、替え玉だったらその限りではありません」

 メガネ先生はケタケタ笑っていたが……。

 大丈夫。合格値二百に対して、俺、二百五十以上あったし、ジェル姉なんか五百越えてたんだぜ! 姉御、凄いよな。

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