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89・悪夢を終わらせろ!!!!

「prmtusprmtusprmtus!!!!! omekrskrskrskrskrskrs!!!!」





クラゲ野郎……いや地を這う水饅頭蜘蛛野郎はドスンドスンドスンドスンとトゲまみれの触手の足で地面を踏み鳴らし、私達目掛けて迫って来ます。





「どうしますシドウさん!? ここには武器になりそうなモンも無いですし、そもそも天井がある分あの水饅頭蜘蛛野郎の方が有利です!」


「そうだが……っ!! 俺達がここから逃げたら避難民が!!」




水饅頭蜘蛛野郎が本体の中心部にある繭から糸を吹き出し、シドウさんを捉えようとしてきます。



シドウさんは糸が触れる寸前で見事な回避をされ続けておりますが、これがいつまでも続くとなるとまさに悪夢と言わざるを得ません。





「でも、あの水饅頭蜘蛛野郎の落下攻撃が繰り返されたら……この劇場は崩壊します!!」





現に今も、水饅頭蜘蛛野郎の落下攻撃のせいで、劇場の天井からはパラパラと破片が落ちて来ています。


落下攻撃なのに天井にダメージが入るんかい!? と思いますが、トゲまみれの足で壁や天井に傷を入れながら地面に急降下した衝撃が、床や壁を伝い天井にもダメージを与えているのでしょう。



幸い、この劇場はクローバーランドの中心地から離れた場所にあります。しかも一階のみの平屋の建物です。


床が抜けて建物が崩壊するという危険性はありませんが、このままでは崩れた建物の下敷きになるかもしれません。





「! シドウさん!! 水饅頭蜘蛛野郎がまた壁を這ってます!!」





水饅頭野蜘蛛郎はトゲまみれの足で壁登り、天井を這っています。



そして、私達の頭上に来ると、トゲまみれの触手が刺さった天井を引き千切るように落下し、ドスンッッッッッッ!!!と落ちてきやがりました!!!



シドウさんは水饅頭蜘蛛野郎の落下攻撃を背後に跳んで地面に転がり受け身をとって回避されましたが、そんなシドウさんに水饅頭蜘蛛野郎は「prmtuskrs!!! prmtuskrs!!!!! hnontmkrs!!!!!」と金切り声をあげながら、威嚇するように前足で大きな地団駄を踏んでいます。





「水饅頭蜘蛛野郎の攻撃手段は『糸』と落下攻撃か……。風の精霊のクラゲ野郎より手数は少ねえが、力と体積が桁違いだな……」





シドウさんは水饅頭蜘蛛野郎を冷静に観察しながら、



「風の精霊のクラゲ野郎よりも体がかなりでけえ。こいつ……もしかして、風のクラゲ野郎よりも長生きした個体なのか?」



と考察されています。





「長生きってシドウさん……精霊に長生きとかそんな概念あるんですか!?」


「さあな……。でも、俺達は風の精霊をぶっ殺したんだ。……『殺せる』ってことは、『生きてる』って考えてもおかしくはねえだろ」


「確かに……」





風の精霊は『殺せた』


『殺せる』なら、それは『生きている』



……つまり、精霊は……『生き物』なんですか……!?



でも、精霊ってもっとこう自然現象と言いますか、大いなる感じで超越してて生き死になんか関係無い存在なんじゃ……。



私は、フォティオン人として信じていたものが根底から崩れるような恐怖を感じていました。



そんな時です!



ピーンポーンパーンポーンとこの緊迫した現場に合わない能天気な音が聞こえてきたかと思えば!





『クローバーランドの緊急案内放送です。……プロメちゃん、シドウちゃん、聞いとる? こちらロマン。避難民は全員クローバー宮殿の一階のホールに避難させたけん。……建物の耐久的にここが一番強かし、物資もあるからこっちは心配せんでよかよ。……でも、ロマン達はここば水守りの魔法で護らないかんから、【現場】は二人に任せる!!!』





緊急案内放送で、ロマンさんの声が聞こえました。


このわけわからん現場で聞くロマンさんの声は、私達に日常を感じさせ不思議と安心してしまいます。





『プロメちゃん、シドウちゃん、お願い! この悪夢ば終わらせて!!!!!!!』





ロマンさんの緊急案内放送は気の抜けたピーンポーンパーンポーンと言う音で終わりを告げました。





「避難が完了したなら問題ねェな!!!」





シドウさんは水饅頭蜘蛛野郎に背を向け急いで劇場から逃げ出そうと駆け出します。



そんなシドウさんを捉えようと水饅頭蜘蛛野郎は糸を吹き出して来ますが、なんとシドウさんは一瞬振り向いただけで糸の位置を把握し的確に避けられました。





「シドウさん!? 貴方なんで背後から迫る糸を的確に避けられるんですか!?」


「気配でなんとなくわかるんだ!! 糸の風を切る音で位置も大体わかる!!」


「嘘ぉ!?」





確かに、シドウさんは私と出会ったばかりの頃、黒服――ルイスとその護衛達の尾行の気配を瞬時に察知していました。



リヒトさんが刑事としての勘が鋭いなら、シドウさんは生き物としての勘が鋭いのでしょうか。



そんな生き物としての勘が鋭いシドウさんは、迫りくる糸を避けながら劇場から逃げ出しました!!



でも、エントランスホールを突っ切ろうとしたその時。



バキンッッッッッ!!!!!!!



と劇場の壁ごとぶち破った水饅頭蜘蛛野郎が「hnontmhnontmhnontmhnontmhnontmhnontmhnontm!!!!!」と金切り声をあげながらドスンドスンドスンドスンドスンと地響きを立てて追いかけて来ます。





「なんつう悪夢だよ……ッ、たくっ!」


「巨大水饅頭蜘蛛野郎に追い回されるなんて……これ、しばらく夢に出て来ますね……!」


「……夢くらい幸せなもん見させて欲しいもんだな」





シドウさんは次々と噴出される糸を避けつつ、ついにエントランスホールから脱出します!



外に出ると、すっかり夜になっていました。



クローバーランドは美しくライトアップをされていて、こんな状況じゃなきゃシドウさんにチューしてくださいチューしてくださいと強請りたくなるほどロマンチックな風景ですね。



でも、残念ながら私達の背後には「krs!!!! hnontmkrs!!!! krstubu!!!!」とわけわからん金切り声を発して強酸の糸を吐いてくるクソヤベエ巨大水饅頭蜘蛛野郎が迫って来ています。



ですが、ここはもうクローバーランド!!!


悪夢の化身のような水饅頭蜘蛛野郎が這い登れる壁や天井はありませ――





「!? 跳んだぞあの野郎!!!???」





シドウさんの言う通り、水饅頭蜘蛛野郎は八本の触手の足を地面にぐっと開いたかと思えば!!



ビュンッッッと大きく跳躍しやがりました!!!





「おいおいおいおいおいまさか」





シドウさんは落下してくる水饅頭蜘蛛野郎の動きを見て、背後に大きく飛び退き地面に受け身を取られました…………が、ドスンッッッッッッッッッ!!!! と地面に落下してきた水饅頭蜘蛛野郎の衝撃による地響きは凄まじく、まるで地震でも起きたかのようでした。





「水饅頭蜘蛛野郎……外に出たら出たで跳びやがるのかよ……」


「クラゲ野郎は宙に浮きっぱなしでしたが、水饅頭蜘蛛野郎は飛び跳ねるなんて……」





次から次へと襲い来る悪夢の連続に、私とシドウさんは打ちのめされそうになります。



水饅頭蜘蛛野郎が落下した場所は見事に崩壊しており、クローバーランドのファンシーな街並みは一気に瓦礫の山となっていました。



可愛らしく整えられた街路樹も水饅頭蜘蛛野郎に押し潰されなぎ倒されており、ファンシーでメルヘンな街灯も、根元からぽっきりと折れており、地面に転がっております。



まるで、嵐が通ったあとのようです。



そんな嵐の化身のような水饅頭蜘蛛野郎は、ドスンドスンドスンドスンと足を鳴らして方向転換したあと、シドウさん目掛けて再び空へ飛び跳ねました。





「……あの街灯……!」





シドウさんは、今度は前に大きく跳躍して水饅頭蜘蛛野郎の理不尽落下攻撃を避け、地面に転がり受け身を取ると、根元からぽっきりと折れてしまったクローバーランドのメルヘンな街灯を手に取られました。



確かに、このメルヘンな街灯には、良い感じの長さと太さがあり、また切っ先は『槍のように尖って』います。


街灯のランプが丁度いい具合に切っ先を飾っており、その姿は風の精霊シルフ戦の時に拾った黄金像の天秤の破片の如くに『十文字槍のよう』でした。





「今度の武器は拾った街灯ですか……!」


「薔薇の支柱に鉄パイプに黄金像の天秤の破片に今度は街灯か……。ちったあまともな武器で戦いてえもんだな!!」





シドウさんはそこら辺で拾った街灯を槍のように構え、「あれ? ……意外とこれ使いやすいな」とコメントされました。



そんなシドウさんは拾った街灯を片手に、肩付近で半透明で宙に浮いてる私を見上げて言いました。

 




「なあプロメ。あの水饅頭蜘蛛野郎を倒したら、俺が泥酔して帰ってきた翌日の朝に話した

『クローバーランドのとあるベンチに座って、横抱きにした相手の頭を胸の位置まで持って来て、そんでバニラシェイクとか飲ませてくれたら両思い祈願になるとかならねえとかのスポット』

を一緒に巡ってもらうが、異論はねえな?」





好戦的で、そして自分を奮い立てるようにニヤリと笑う最凶にマジかっけえシドウさんを見て、私も





「ええ勿論!!! 私だってシドウさんとクローバーランドの両想いスポットを金の力で全巡りして、そこで撮った写真を警察騎士中にばら撒いてシドウさんのガチ恋勢を皆殺しにして差し上げます!!!」


「あっははははははッ!!!!! やるじゃねえか!!!! いたら良いけどなァ!!!! 俺のガチ恋勢ッッッ!!!!」





ここにいますよッッッッッッ!!! 

ここにィィィイイイイ!!!!! と叫ぼうとした瞬間、水饅頭蜘蛛野郎が「krstubu!!!! surwprsfnn!!!! prmtuskrs!!!!!」と金切り声をあげ、糸を勢い良く飛ばして来ます!!



……だけど。





「お前ェの糸なんざもう効かねえよ!!! 水饅頭蜘蛛野郎ッ!!!」





私から共有された炎を街灯を持つ手に纏ったシドウさんは、迫りくる糸を炎を纏った街灯で薙ぎ払いました!!!



糸は焼き尽くされ、パラパラと塵になって消えてゆきます。





「来い!!! 大地の精霊ノーム!!! 俺達がぶっ殺してやるッッッ!!!!」


「そんでぶっ殺したあと、水饅頭をこねこねして美味しいスイーツにしてやりますよ!!! そしてそれをシドウさんにあ〜んして食べさせて差し上げますからね!!!!」





シドウさんと私は、共に「「反撃開始だコラァァッッッ!!!」」と叫び、水饅頭蜘蛛野郎に襲い掛かったのです!!!





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