47・待ちに待った看病イベント(シドウ視点)
ロマン先輩の初逮捕記念に焼肉屋で飯を食ってからここ二週間、リヒト先輩に引き摺られて舞台稽古をさせられる日々が続いていた。
『シドウ!! お前の本気を俺にぶつけてこい!! お前の本気はそんなもんじゃないだろう!? 警察騎士入隊試験の戦闘技術科目で俺をステゴロのワンパンで倒したお前なら台詞覚えもワンパンだろう!? 素人モノのポルノ作品じゃないんだから演技もちゃんとしてもらわないと困るぞ!!!』
とリヒト先輩は台詞を覚えられない俺にぷんすこしているが、無茶言うなやと言いたい。
そんな無茶苦茶な日々が続き、最近とても疲れていた。
だが、家に帰ればそんな疲れなど全部ぶっ飛んでしまう。
「お帰りなさいませシドウさぁ〜〜ん!」
「あ、ああ。……ありがとう」
プロメが玄関のドアを開けてくれるたび、あまりの嬉しさで疲れと覚えた台詞が全部ぶっ飛んだ。
「ご飯は何もしなくて良いからマジでという事なので食材を切っておいただけですが、取り敢えずお風呂の準備は出来ておりますよ!!」
「悪いないつも。……世話かけてすまねえ」
「いえいえ!!! 他にもご要望ならなんなりとお申し付けくださいね!!」
なんなりと、お申し付け……。
それなら、背中流してもら……いかんいかんいかんいかん。
あくまでプロメは『パンドラを追ってクローバー家に潜入する作戦の同士』であり、同時に『警護対象者』なのだ。
色々と都合が良いから書類上の夫婦と言うことになっていはいるが、それでも赤の他人であることは変わりない。
最初、プロメが俺ン家に住みたいと言ったとき、もしかしたら『捜査上の都合とは言え俺と夫婦関係になっちまったもんだから、令嬢としての経歴に傷が付いて実家にいられなくなったんじゃ……』と心配した。
だが、プロメの伯父夫妻は三人で円陣を組んでなんか掛け声を挙げてたり、マリアさんが仕切りに『プロメちゃん、同意の無い行為は駄目よ』とプロメの頭を撫でながら言ったりするもんだから、邪険にされて追い出されたわけではなさそうで安心したもんだ。
そんな経緯で共に過ごすことになった相手なのだから、なるべく失礼が無いようにしなければ。
……シンプルながらに可愛い部屋着に『俺が選んだ』エプロンを付けてニコニコしてるプロメを見て、もう今すぐでも抱き締めたいと思うがそんなこと悟られてはならない。絶対に。
◇◇◇
「シドウさん、おはようございます♡ 朝ですよぉ♡」
メイド服を着たプロメが起こしてくれた。
寝起きで惚けた頭だと『うわ〜可愛い〜最高だ〜』としか考えられない。
「シドウさん♡ いえ……旦那様ぁ♡ 今日も旦那様にご確認してもらいに来ました……♡」
確認? はて? 何のこっちゃ。
戸惑う俺の目の前で、プロメは頬を赤らめ目を潤ませながら、なんとメイド服のスカートの裾を震える手で摘み上げた。
おいおいおいおいおい最高だけど何してんだ、いや、あと少しとかじゃなくて太ももに白いガーターベルトってのはこれ白ってのが最高だよなとかそう言うんじゃなくて待て待て待て待て最高だけど待て待て待て待て!
「……旦那様に毎朝下着の色を確認して貰うのは…………っ……妻兼メイドのお仕事ですからぁ……♡ ん、っ……とっても、とっても恥ずかしいですけどぉ♡ ……ちゃんと、しっかり見て、確認してくださいね♡ シドウさぁん♡」
あ、あと少しだ……と思った瞬間。
「!!!! ………………死にてえ」
目が覚めた。
罪悪感で死にたくなった。
「水……かぶろう」
毎朝ずっとこんな夢ばかり見ては、戒めも込めて朝から冷水シャワーを浴びていた。
こんなひっでえ夢を毎朝見られてプロメも気の毒だ。
申し訳無さで死にたくなる。
……いや、夢自体は最高だったし、なんか今も体温が高く感じるし、なんかフラフラするし……?
「げほっ……けほっ……? ……あれ?」
体に違和感を覚えながらも冷水シャワーを浴びて、プロメのとんでもない夢を毎朝見てしまうことに反省した。
禊を終えて風呂場から出ると、顔を真っ赤にしたプロメと鉢合わせた。
いや、冷水を浴びたあとはきちんと服を着てから出てるので見苦しい姿をプロメに晒すことは無いのだが、それでも鉢合わせると戸惑ってしまう。
「ど、どうしたプロメ? お前もまた水シャワーか? 令嬢だし、そりゃ朝シャンくらいするだろうけど……お湯使っても良いんだぞ? ガス代くらい気にすんなよ。そもそも、この国地熱が盛んだからガス代安いし」
プロメはとろんとした真っ赤な顔でフラフラしている。潤んだ目を見ていると、夢に出たプロメが目の前にいるみたいで心臓がエライことになってしまう。
「いえ、冷水で構いません……というか、冷水じゃなきゃ申し訳なくて……。不埒な夢を毎朝見てしまう禊なんです。……あ〜でも最高やったな〜今朝の夢。……最初は強引に力尽くで押し倒して来られて優しい無理矢理な感じで『ウヒィィイイイ堪らんなあ〜〜〜堪らんなあ〜〜〜』って感じやったんですけど、途中からざぁこざぁこ♡ って感じで私に敗北しちゃって最高やったんすわ……」
「よ、よくわからんけどすげえ夢だな。……げほっ、悪い、なんか、今日……調子悪くて、俺」
咳が出る度身を捩って背後を向くが、その頻度がだんだん数多くなってくる。
頭もなんかフラフラするし、体も熱くてぼうっとしてしまう。
「あれぇ……シドウさんもですかゲホェッ、ゴヘェッ……うう、私もなんか、ズビっ、頭はフラフラ体もフラフラって感じで……」
「おい!! 大丈夫かプロメ!!」
プロメがふらりと倒れてしまう。
そんなプロメを抱きとめた俺も、正直体がしんどくて仕方なかった。
◇◇◇
「まさか……二人揃って風邪か……ゲホッ」
体温計を見ながらため息を付いた。
現在プロメは『三階に上がって自分の部屋に戻るのががしんどくて、シドウさんのベッドで寝たいです!! いや、これは風邪のせいで階段登るのがキツくてですね、風邪のせいなんでマジで』と言っており、本当に風邪が辛いのだろうと可哀想になる。
そんなプロメは
「はあ……っ! はあ……シドウさんのベッドに潜り込むことに成こゲホッ……ああ、このベッドでシドウさんは毎晩お休みになられゲヘェッ」
と咳き込みながらなんか楽しそうにブツブツ言っているが、きっと俺に心配をかけないよう気丈に振る舞っているのだろう。
「シドウさん……、今回の風邪、これ多分私のせいです……ゲホェッゴヘァッ」
「え……? 毎朝二人して冷水被ってるせいかと」
「加護人の騎士のせいです。……私達、命が繋がっちゃってるんで、私の風邪がシドウさんにも来てしまったんでしょう。……だから、私に比べてシドウさんのお風邪はまだマシなんでゲヘェッ」
確かに、体温も咳も俺よりプロメの方がしんどそうだった。
「シドウさんごめんなさい……。ご迷惑をかけて……」
「いいよ。気にすんな。……でも、お前の身の回りのことしてくれる人がいた方がいいよな……ゲホッゲホッ」
プロメは多分手持ち無沙汰だったんだろう、俺の枕を抱いてベッドでゴロゴロ寝返りをうちながら
「あ〜そうですね。このままじゃお風呂入るのも厳しいですもんね……だから温かいタオルとかで体を拭いてもらえませんかシどゲホッ」
と咳き込んだ。
瞬間、熱でフラフラで潤んだ目をしたプロメの寝巻きを脱がせて温かいタオルで体を拭きながら『ゃんっ♡ 熱いですっ♡ シドウさんの、熱くてぇ♡ ……ひゃぅっ♡』とか言われる妄想をしてしまい首を振って深呼吸をして表情を真顔に固定させた。
駄目だ。風邪のせいでいつもより頭がボケーっとしてアホになっている。
「取り敢えず、ロマン先輩に聞いてみるよ……ゲホッゲホッ」
警察騎士鑑識部隊隊長研究室というロマン先輩のきったねえ部屋に電話をかけた。
先輩頼む……起きててくれ……と祈る。
幸い、ロマン先輩は起きていて「なんね」と答えてくれた。
「ロマン先輩……ゲホゴホッ、すんません。……俺達、風邪引いちまって……っ! だから、プロメの身の回りの看病頼めますか……」
『……看病イベントば邪魔してよかなら』
「何言ってるかよくわかんないんすけど頼みます……ゲホッ」
ロマン先輩は『早めに仕事あがるけん。……でも、なんか色々と盛り上がって邪魔されたくなかったら玄関ドアに立て札でも掛けといて。……二時間くらいどっかで時間潰すけん』と言って電話を切った。
良かった……と安心する。
プロメは今、風邪を引いて体が弱っているのだ。
男と二人なんて怯えさせてないだろうか。
「シドウさぁあん……あのぉ、私ぃ……ゲホゴヘェアッ、風邪引いたときはいつもぉ……マリア伯母さんが一緒に寝てくれててゴヘッ、だからぁ……風邪のときは一人で寝られなくてェ……あ、これ風邪引いた女の扱いに慣れるための勉「わかった俺でよければ」
風邪でアホになった頭で『プロメの習慣を守るためだから問題無し』と判断したので、少し距離は置きつつも俺もベッドに入った。
◇◇◇
時計の秒針がいつもより響く静かな室内で、俺とプロメはベッドに伏せてぐったりしていた。
俺はまだギリ体力があって動けるが、風邪の大本になったプロメはまだまだ厳しいだろう。
代われるもんなら代わってやりたい。
「ああ……今までで最高の風邪ですゲホッ、すみません」
「最高? ……そんなにしんどいのか……」
「ま、まあしんどいっちゃしんどいですけど、いや、それ以上に最高でして……ウゲヘッ」
プロメは抱き込んだ枕に顔を埋めて咳をしたあと、苦しかったのか深く深呼吸をしてから「ああ……エエ匂いや……最高やでこれ」と笑っている。
こんなときでも心配をかけまいと笑っていられるプロメの気丈さに、素直にすげえなと思った。
欲にまみれた俺と違って、心根が真っ直ぐなのだろう。
だから、俺の枕に顔を埋めて深呼吸しながら頬擦りしているのは、きっとぬいぐるみでも抱いて安心したいからなのかなと思った。
そんな時である。
呼び鈴が鳴ったので、ロマン先輩を出迎えに行った。
ロマン先輩が来てくれたら、プロメも少しは安心出来るだろう。
そうしたら、俺はソファーで寝て添い寝役はロマン先輩任せるか。
かなり残念だが、その方がプロメも安心して眠れるはず。
そう思ってドアを開け
「ど〜も〜! ピザの配達です……とでも言うと思ったかシドウ!!!! と言うわけで勝負だぁッぐふっ!!!」
「ンなこったろうと思ったわァアッ!!!!!!!」
ピザを持ったリヒト先輩が膝蹴りをかましてきたので、蹴り上げられた膝を右腕で抑えるように受け流しながら喉輪落としをした。
◇◇◇
「舞台の練習に来ないから俺みたいに異世界転生でもしたのかと心配したぞ!! なのに風邪とは情けない!! 体調管理も役者の仕事だぞ!! しかもお前他の女と浮気とは!!! そういうとこだけ役者っぽいことをするな!!!」
リヒト先輩はピザを食いながらプロメを指差し「俺とロマンとボロネーゼというものがありながら誰だこの女は!!!!」と怒っている。
「あの、この人は普通にプロメですけど」
「ん? そうなのか! ああ! あの犬の耳みたいな髪型が無いからわからなかった!!」
確かに寝起きでいつもの髪型を解いているプロメは「私ら顔合わせて結構経ってますよね」と疲れた声でそう言ったが、リヒト先輩は「知らん!」と答えた。
寄りによってコイツが来てしまい、流行りの言葉だと『看病人ガチャ大爆死』という結果になったが、こんなのでも二十五歳の立派な大人だ。
しかも刑事部隊隊長という地位もある。いないよりいた方がマシだろう。
「まあいいや、先輩。ピザありがとうございます……。風邪引いたときに食いたいもんではありませんが、飯でも食えば少しは体力が戻ると思いますし」
ふらつきながらピザの箱を開けると、中身は空っぽだった。
「ピザは来る途中に全部食ったぞ!! 美味しかった!!!」
「…………ま、まあ病人がピザ食うのもあれっすからね。……取り敢えず、昨日作った焼きそばの残りが冷蔵庫にあったはず」
「おお! 俺のために用意してくれたのか!! あれならさっき頂いたぞ!! シドウ、あれ美味かった!! でも俺はソースより塩派だから今度はその方向性で頼む!!」
「…………」
リヒト先輩はにっこり笑って親指を立てた。
文句を言う気力すら無かった。
「というかシドウ、お前風邪薬すら常備してないのか?」
「……あ〜、そうっすね。風邪薬切らしちゃってて」
「いかんぞシドウ! 社会人の宿敵である風邪はいついかなる時でも牙を向くんだ! 社会人として風邪薬くらい常備しなければな!」
「……」
人ン家の飯食い尽くすのが社会人のやることかよ、と言いたいが頭がフラフラしてそれどころではない。
もう無理だ……とベッドに倒れ込んでしまう。
コイツが来てから余計に体調が悪くなった気がした。
「仕方ない! 俺がお前らを看病してやる!! この俺と看病イベントを過ごせるのを光栄に思うが良い!!! ハハハハハハ!!!」
「……マジかよ」
なんでこんなことになったんだろう。
これは俺に対する罰なのだろうか。
風邪を引いたとき『あれ? これもしかしてプロメに看病してもらえるってことか? お、おお……最高か……?』と妄想しまくった罰なのだろうか。
一方のプロメは「パワーハラスメントクソミドリがよぉ……」と苦しそうな声で呟いた。
「安心しろ」
そんなパワーハラスメントクソミドリ――――いや、リヒト先輩は、優しく笑ってベッドに寝てぐったりしている俺とプロメの頭を撫でた。
「俺も子供の頃、母上達に看病して頂いてな。今でもよく覚えてるよ」
「……先輩」
リヒト先輩のお母様は早世されていたことを思い出す。
少しだけ先輩が寂しそうに見えたのは気のせいか。
「薬くらい、俺が買ってきてやるから。……だからお前達は休んでろ」
穏やかな声でそう言われると、なんだか安心してしまい眠気すら出てしまう。
リヒト先輩がそう言って薬局へ向かったあと、プロメが
「シドウさんがリヒトさんのこと信頼してるの、なんかわかる気がしました。……あんなのでも意外と頼もしいもんですね」
と笑った。
……プロメのリヒト先輩を褒める発言に『俺も風邪引いてなきゃお前のために色々出来たんだけど』とモヤついてしまうが、そんなんプロメには関係無い話なので顔に出さないよう気を付けた。
「……だよな。……困った人だけど、いなきゃ寂しいって思うんだ。……悔しいけどさ」
どれだけ無茶苦茶されても不思議と嫌いになれないリヒト先輩は、さすがロックスターを自称するだけはあると思う。
◇◇◇
「起きろ二人共。薬、買ってきたぞ」
買い物帰りのリヒト先輩に起こされ、いつの間にか寝落ちしてた俺とプロメはゆっくりと目を覚ました。
「ああ……ありがとうございます先輩……」
「取り敢えず効きそうなものを買ってきたら、どれでも好きなもんを選ぶと良い」
そう言ってドヤ顔のリヒト先輩が袋から取り出したのは大量の座薬だった。
「…………なんすかこれ」
「知らん! そもそも俺は生まれてこの方買い物なんかしたこと無いからな! なんか効きそうな感じがしたからこれにした!!!」
「…………他には? なんか買ってきてくれました?」
リヒト先輩は「俺の気遣いに惚れても構わないぞ!!」と言い、満面の笑顔で
「うがい薬!!!!!!!!」
と茶色の液体が入ったうがい薬を見せ付けてきた。
「風邪には日々の予防が一番だからな!! 家に帰ったらきちんとうがい手洗いをするんだぞ!!!」
「遅えよもう風邪引いてんだよこっちは!!! ぶっ殺すぞクソミドリッッッッ!!!!!!!!!!!!!」
クソミドリに掴みかかると、奴は「コラコラそんなにはしゃぐな! ボロネーゼの前で俺の胸に飛び込むなんてお前さては子悪魔だなシドウ!」とかほざきやがる。
一方プロメはクソミドリが買ってきた買い物袋を漁って
「座薬座薬座薬座薬うがい薬座薬座薬……なんですかこの地獄みたいなレパートリー。ゼリーとかプリンすらありませんね……。これ、首輪に金と買い物メモ括り付けたポメラニアンに店行かせた方がマシじゃないですか……」
とぐったりした声を出している。
「もうマジでお前ェのこと大ェ嫌いだわこのクソミドリッッッッ!!! 何なんだよお前ェほんと頼むからもう帰れよ二度とツラ見せんなクソボケがコラァッ!!! 人ン家に襲撃しに来たかと思えばオメー冷蔵庫の中食い尽くすわ薬もまともに買ってこれねェわでこの役立たずがァアッッ!!!!」
魂の底からブチギレると、クソミドリはしいたけの切れ目みたいな目に涙を浮かべて被害者面した。
「酷いぞシドウ!!!!! 俺は傷付いたぞ!!!! そこまで言わなくても良いじゃないか!!! お前さてはモラハラ気質があるみたいだな!!! いかんぞそれは人として!! 先輩としてその性根叩き直してやる!!!」
「お前ェが言うなやパワハラクソミドリがコラァアッ!!!!」
胸ぐらを掴んでクソミドリを揺さぶったその時だ。
「なんだシドウ……マスカルポーネは溺愛するくせに……俺に対しては鬼畜攻めか……? そういう男性同士の恋愛漫画はロマンの本棚を漁って勝手に読んだことあるが……ほげぇ……」
クソミドリはフラリとその場で倒れてしまう。
瞬時にクソミドリを抱き支えて
「先輩!? リヒト先輩!!」
と声をかけるが、リヒト先輩の迷惑なほどにキラキラ輝く目は、ぐるぐるの渦巻きみたいなのが浮かんでいる。
しかも顔は真っ赤になっており、「……ふげぇ……」と苦しそうな声を出した。
プロメが急いで体温計を持ってきたので、リヒト先輩の警察騎士の制服を脱がして脇に体温計をぶっ刺し、しばらく待った。
すると、ピピピ〜と音がしたので体温計を引っこ抜くと、
「四十三度……? 嘘だろ」
風邪の頂点みたいな数値を、ロックスターは叩き出していた。




