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引っ越し

修学旅行以来の京都だ。


道路はきれいに整備され、鴨川沿いには桜の木が並んでいる。

春はきっときれいなのだろう。

散歩したら気持ちよさそうだ。

バスの中は観光客であふれかえっていたが、この辺りはそこまで人は多くなくどこか落ち着いた雰囲気がある。

バスの窓から外を見ると、世界遺産と言う標識が頻繁に見られ、さすが京都だな、と感心してしまう。


理緒のマンションに到着する。

理緒は今日1日仕事で、マンションの管理人に鍵を預けてあるとのことだったので声をかけて受け取り、中に入る。


理緒の部屋はとにかく物が少なかった。

生活感もなく、ただ寝るだけのために帰っているというのも納得だった。

しばらくして私の荷物が届く。

家具などはほとんど処分してきたので、宅配便で十分だった。


理緒に到着したこと、荷物が届いたと連絡を入れる。


まずはゴミ出しの方法を確認する。分別方法や出せる日、使用する袋、それらすべてをチェックしてから荷解きを始めた。荷物が少なかったので、3時間程度で終了し、部屋の掃除を始める。


“今日20時くらいに帰る。初日から悪いけどご飯お願いできる?”

理緒から連絡が来る。

“もちろん”

と返信する。


買い物をしようとスーパーへ行く。売られている野菜が東京とは少し違うのが面白い。

ミーハー心で万願寺唐辛子を買ってみる。お腹に優しい和食にしようと決めた。


「美冬、放置してごめんねー!」

と理緒が帰ってきたので、おかえりなさい、と声をかける。

「なんか、家に人がいるっていいね。ただいま。それになんかいいにおいがする」

理緒の言葉にこちらまでうれしくなる。


「おなかすいたー。え、すご、炊き込みご飯だし、なんか京都っぽいものまで作ってる」

「そう、万願寺唐辛子買ってみたの」

私はお茶を入れながら言う。

「ありがとう!いただきます」

午前中からゼリー飲料しか飲んでないという理緒は久しぶりのちゃんとした食事だと喜んで食べてくれた。

「ねぇ、炊き込みご飯余ってたらさ、おにぎりか何かにしてくれない?明日のお昼ご飯にしたい」

と理緒が言うので、

「お弁当作ろうか?」

と言うと理緒はそれすごく助かる、と嬉しそうにする。

「あ、食費さ、払うよ」

と理緒が財布を取り出す。

「いいよ、食費は出させてほしい。今有休消化中でお給料も出てるし。その方が私も気が楽」

というと理緒はじゃあお言葉に甘え、と言った。


そのあと生活費をどうするかなどを話し合った。

家事と食費は私。家賃・水道光熱費・通信費は理緒。

正直、こんないいマンションに食費だけで住んでいいのかと申し訳なくなったが、食費も家事も浮くから本当に助かる、と理緒は言った。


「あと最低でも1年は私がこの状態だからここにいて大丈夫。でも、やりたいこと見つかったり、一人暮らししたいってなったらいつでも言って。応援する。」


「ありがとう、理緒。ちなみにお風呂も沸いてるから」

「すご、もう初日からスーパー家政婦じゃん」

「理緒ほめ上手だからすごく今日気分がいい」

二人で笑い合う。


今日1日、私はとても楽しくて充実していた。健吾のことも小雪のことも頭をよぎる程度で、ずっとそのことで頭の中を支配されることもなかった。こんなに気持ちが軽いのは久しぶりだ。

私は理緒には一生かけても返しきれない恩ができたなと思った。


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