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オモチャごときを惜しむとは、オレ様もまだまだだな。

第四話です。


 あの愚か者は、他のメスに目もくれなかった。


 入学から2年半が経ってもだ。


 なぜだ!?


 オレ様の思うように物事が進まないなどありえない!


 怒りの余り新入りの侍女を切り捨てた。


 その心地いい絶鳴と温かい血の感触がオレ様に冷静さを取り戻させた。



 死体の処分を命じた時には、すでに頭はすっきりしていた。


 オレ様としたことが、考えるまでもないことじゃないか。


 あいつの愚鈍な見かけ、魅力のなさが、程度の低いメス以外をあいつに近寄らせないのだ。


 メスは良い子種を得ようとする本能がある。だからこそオレ様のような優秀かつ美麗で血筋もよい選ばれた男に群がるのだ。


 逆に言えば、悪い子種しか得られないあいつのような劣等種を忌避する。


 つまり、学園であの愚鈍を誘惑しようとするのは、本能すら働かないどうしようもない低劣なメスばかりで、それではいくらあいつが愚鈍でも引っかからない。


 あいつの愚鈍さが、あいつを守るとは!


 暗殺をくぐりぬけたのと同じだ。愚鈍さ恐るべし!


 だから愚鈍なヤツは嫌いなのだ。自分がどうすれば国の役に立つかすら判っていない。


 優秀なオレ様にさっさと道を譲るべきだというのに! 王族のくせにそんな判断も出来ないのか!


 だが、それこそが愚鈍なのだ。


 その上、あいつの婚約者は優秀だった。メスにしては優秀すぎた。


 あのメス、内心で愚鈍なあいつを見下げ嫌悪しているのに、そんなことはおくびにも出さず、婚約者としての義務は完璧に果たしていた。


 なんという愚かしさ! 優秀とは言っても所詮はメスだ。


 何が国にとって大切か判っていないのだ。自分の完璧さよりも国を優先出来ないのだから。


 そんなわけで、あいつは、致命的な失敗はせず、愚鈍なくせに年月を重ねていき。


 気づけばあいつが学園に入ってから2年半。卒業の学年になっていたというわけだ。



 流石にオレ様達は焦りだした。


 あの愚鈍の正式な立太子の儀はまだだ。オレ様こそが王太子と内定しているからだ。


 だから、口実をつけて引き延ばしていた。


 だが、あの愚鈍が学園を卒業したら、これ以上は引き延ばせない。


 このままでは、あの愚鈍を法律上だけでなく儀式の上でも正式な王太子にしなければならなくなる。


 しかも、あの無駄に優秀な婚約者が、あの愚鈍を婚約者として扱っているので、あいつが王太子であることを皆が忘れたくても忘れられない。


 両親は何度も王家の『影』を使って暗殺を試みたようだが……ことごとく失敗した。


 落ちこぼれだったはずのあいつの『影』達は、オレ様達が十数年に渡って幾度も仕掛けたせいで、手のつけられない優秀な存在になっていた。


 情報はどこからか漏れて、着手前に頓挫することさえしばしばだった。


 落ちこぼれどもめ! 素直に落ちこぼれていればいいものを! なぜ後から優秀になるのだ!


 優秀ならば最初から優秀さを表すのが優秀というものだろうが!


 そうすれば光輝溢れたオレ様が、あいつらを取り立てて、栄光の道を歩ませてやったというのに……。


 今更落ちこぼれどもを取り立てるのは業腹だが、あの『影』どもがそこそこ優秀なのは認めざるを得ない。

 

 そこで、オレ様の『影』として抜擢してやろうとしたのだが、ことごとく断られた。


 明敏なオレ様にはすぐ判った。あの愚鈍が正式な王太子になれば、あの『影』どもは自動的に王太子の『影』となり王の『影』となる。


 いまさらオレ様の『影』に新参者として加わるより、そのほうが地位が上だ。


 元落ちこぼれどもをオレ様が取り立ててやろうと温情を示したのに……小賢しい!



 そこで、あいつの婚約者に協力をさせようとしたが、遠回しに断られた。


 その父親である筆頭侯爵も、婚約者を変えたらどうか、と忠告したようだが、それもあっさりはねつけられたらしい。


 なぜだ!?


 オレ様が好きなくせに、優秀で美しいオレ様の妻になりたがっているくせに。

 

 とオレ様は一瞬だけ思ったが、庭師を殺して頭がすっとしたら、すぐ理解できた。


 なるほど。生意気なメスめ。


 生意気なメスらしい浅はかな考えだ。


 あのメスはオレ様を試しているのだ。


 オレ様があの愚鈍を排除出来るか、試しているのだ。



 面白い。



 だが今更、暗殺という方法は採れない。


 あの小賢しい『影』どもが、阻止してしまうだろう。


 そこでオレ様は、オレ様が手をつけて仕込んでやった中でも、男に奉仕するメスとしては優秀な奴等を使うことにした。


 今まであの愚鈍が間違いを犯さなかったのは、寄っていったメスどもが低劣に過ぎただったからだ。


 極上なメスどもをあてがえば、色事に縁のなかったあの愚鈍は簡単に墜ちるだろう。


 特に乳の豊かさを備えているのを選んでやろう。


 あの生意気なメスへの嫌みにもなる。今から身の程を知らせてやるのも悪くない。


 乳の貧弱なメスなど、他のどんな部分が優れていても、ダメなのだからな。


 愚鈍を、具合のいいメスで楽しませてやるのは癪だが、仕方がない。


 それに、頭空っぽのメスどもは男を楽しませる以外は役に立たないのだから、国のために役に立ててしあわせというものだ。


 ……ふっ。


 まだまだだなオレ様も。


 おもちゃでしかないメスを出し惜しみして、王太子の座を危うくしかけるとは。


 だが、こうやって反省が出来るのも、オレ様が優秀な証拠だ。



 というわけで、オレ様は、選んだメスどもに命じた。


 あの愚鈍を誘惑し、虜にし、人前で婚約破棄を宣言させるように唆せ、と。


 そして、婚約破棄を宣言させた直後、王太子であるあいつに逆らえず無理矢理手込めにされて、従うしかなかったと言うようにと。


 メスどもは、あんな愚鈍の相手をするのをいやがったが、たっぷりとかわいがってやるから、と言ったら、あっさりと尻を振った。


 成功の暁には、オレ様の妻として迎えると言えば、欲望に目をギラつかせてうなずいた。


 こんな裏付けのない言葉を信じるとは!


 メスは本当に単純だ。哀れなものだ。

 子供を産ませることと男を楽しませること以外価値がない。


 お前ら程度のメス、成功したら闇から闇へ処分するだけだ。オレ様のような優秀な男の役に立つだけ光栄と思えよ。


 最初からこうすれば良かったのだ。



もうちょっとおつきあいくださるとうれしいです。

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