優秀なオレ様こそが本当の王太子!
第一話です。
『完璧令嬢と無能王太子』のシリーズに属するお話ですが、単独でも読める……はずです。
あと、もの凄く男女差別がひどい勘違い男が主人公なので、そういうのが不快な人は、避けたほうがよいかもしれません。もちろん最後は報いを受けますけどね。
オレ様は生まれながらの支配者。偉大な王になる運命の男さ。
生まれた時から人生の勝利者。ほぼ完璧。
ひとつだけシミのような問題があるが、それもすぐ解決出来るだろう。
まずオレ様の血筋は完璧。
オレ様はこの国の国王とその正妃の息子だ。
正妃である母の実家の侯爵家の歴史は500年に及び、何人もの王女が嫁いできた名家。
もちろん父である国王も、先代の正妃から生まれた長男。純血だ。
オレ様以上に尊い血筋の人間はこの国にいないのだ。
もちろん頭脳は優秀。これだけの血筋だから当然だ!
両親がつけてくれた教師達はみな口を揃えて「こんなに優秀な生徒は受け持ったことがありません。それに引き換え……」
と言ったものだ。
それは座学だけでなくて、武術まで及んでいる。つまり文武両道。
武術の時間。教師の中には、オレ様が実質的には王太子なので、遠慮して負けたのもいたが、そういうヤツは容赦なく打ちのめしてやった。
オレ様相手に手を抜いたのだから当然だ。
半殺しにされて切れて本気を出して立ち向かって来たヤツを完膚なきまでに叩きのめすのは最高だ。
最初から全力で懸かってきたヤツを叩きのめすのも、また最高だ。
何人か殺したが、オレ様は実質的な王太子だし稽古中の事故なので、無罪。
オレ様が身につけた武術の肥やしになったのだから、感謝してしかるべきだ。
一度、殺した相手の娘だという若い女が切りつけてきたことがあったが、返り討ちにしてオモチャにしてやった。
処女で、泣き叫ぶばかりだったが、それはそれで愉快だった。負け犬の悲鳴は心地いい。
それでもまだ生意気な目をしていたので、部下達に下げ渡した。
その娘は、その日のうちに自害した。手間がはぶけた。その点だけは褒めてやろう。
当然ながら、オレ様は容姿も優れている。
波打ちきらめくさらさらの金髪。
明るいサファイア色の瞳。
秀麗な山のような鼻。
長身で均整が取れた体つき。
ほほえめば天使と呼ばれ、その声は天上の音楽と讃えられる。
透明感さえあるしろい肌にはシミ一つない。
全裸で立てば、古代の彫刻のようだと賛嘆される。
鏡を見れば、目の前に世界で一番美しい男がいる。愚鈍そのもののアレとは正反対だ。
絵画で美化して描かれる神々や英雄もかくやという神々しさだ。
そして、男としても圧倒的に優れている。
長ずるに従って、女どもはみな、オレ様に媚びを売るようになった。
オレ様が実質的には王太子だから、というだけではなく、容姿も能力も優秀なのだから、当然のことだ。
女は優秀で美麗な男には弱い。男よりも動物に近いから仕方がないことだがな。
オレ様はすでに10代前半には圧倒的な量の経験を重ね、女どもを弄び、メスにするテクニックを心得ていた。
最初はおつきの侍女。
それからは、次から次へと手を広げていった。数えたことはない。
今まで食べたパンの数を覚えているような人間はいないだろ? それと同じだ。
そして判ったのだが、女はどれも大して変わらないということだ。
おつきの侍女から、娼館の女から、貴族の未通女から、未亡人から、大臣の娘まで。
簡潔に言い切れば、脚のあいだに男を喜ばせる穴があいた動物だ。
すぐあきる程度のオモチャだ。その価値は、オレ様のような優秀な男の子孫を残すことにしかない。
我が国では、女は爵位を継げないが理の当然だ。女に政治など不可能なのだ。
あいつらが本能に支配された哀れな存在だと、オレ様は身をもって実感している。
あいつら、婚約者がいても、平気でオレ様に靡いてくる。
何回か抱いてやると真実の愛だの子供が欲しいだのほざきだす。
あの物欲しげな目つき、その卑しさ、判で押したように同じだ。
オレ様のような高貴な存在の子を孕みたがるのは当然だが、この血筋がばらまかれるのは面倒だ。
注意はしているが、出来てしまうことは何度かあった。
だが大過ない。
面倒になったら闇から闇へと葬ればいいのだ。その権力と処理能力がオレ様にはある。
処理した数は、食べたパンの数と同じで覚えてはいないが、両手の指の数よりは多いだろう。
最初は両親に頼んだり、自分の権力を使ったりと力任せにもみ消していた。
だが今ではすっかり熟達して、手抜かり無く処分できるようになった。
証拠は髪の毛ひとつ残さない。
別に残したところで揉み消せるのだが、立つ鳥後を濁さずだ。オレ様は優雅なのだ。
何度も言っているが、オレ様は優秀。
農業大臣の娘である侯爵令嬢も、何の障りなく処理ができた。
あの娘は最後まで、侯爵令嬢である自分は助かると妄信していたようだが、どんな肩書きがあろうと所詮はメス。最高の男であるオレ様の前では無力だった。
最後、部下達に掘らせた穴に生きながら埋めてやったが、ホントウにうるさかった。
水を流し込んでやったら、死ぬまで豚のように啼いていた。
ばれないかって? ばれるわけがない。
この国では誰もオレ様に逆らえない。
娘の親である農業大臣の侯爵がオレ様に疑いの目を向けてはいるが、何も言えないのだからな。愉快。
証拠を残すような不手際はないから、オレ様を告発出来るわけもない。我が王国は法治国家なのだ。
証拠がないのだから犯罪はない。俺の手は純白だ。
そして法は選ばれし優れた者達だけのためにある。
オレ様は非公認ながらも、貴族なら誰もが知る、次代の王なのだから。
選ばれた人間。王になるべくして生まれた人間なのだ。
オレ様が、ありとあらゆる方面で優秀であることこそが選ばれし人間である証拠。
大した努力をしたわけでもなく、出来てしまうのだ。
才能というものを母親の胎内へ置いてきたあの愚鈍などとは、比較にもならない。
まだ続きます。