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デートなんて前世も含めて初めてじゃないかしら。


あの頃は婚約者がいたけれど、政略でしかなかったし……そういえば、贈り物もされたことがなかったわね。婚約者に使う費用があっても、あの方は他の人に貢ぐのに使っていた様だし。

あの方から、私に逢いに来ることも無ければ、声も掛けても来なかった。

ただ、私が『精霊の愛し子』だったから、婚約者になってしまっただけ。


他に『精霊の愛し子』が現れ、その人が愛しい人なら、そちらを選ぶに決まっている。

……選びたかったのだろう。

けれど、政略である以上、私の公爵という王族の次に高い身分の家の娘である以上、簡単には破棄出来なかった。

破棄出来ず、同じ『精霊の愛し子』である私の弟と婚約を許してしまった。


『精霊の愛し子』は二人いれば、良い。

その二人が固く結ばれれば、三人目は必要無く。公爵の嫡男(わたしのおとうと)が国の、王族の支えとなれば、公爵の娘(わたし)との政略の必要さえ無くなる。

国から、王族から、公爵家(いえ)からも必要無くなった三人目(わたし)は持て余す存在で、危険な存在だった。

他国に目を付けられる可能性があるからだ。

もし奪われれば、他国がより強い力を手に入れ、国を危うくする。

『精霊の愛し子』の力で国を守ってきた私達の国には、それは脅威だった。

他国に奪われない様にする為に、何処かに隠すか、処分するか。

どちらにしろ大義名分は必要。

人の目には触れない様に何処かに閉じ込めておく為に、在らぬ罪を着せたのだろう。下手に精霊に愛された者を殺せば、何が起こるか分からないから。

初めから自由の無い人生なのに、今度は一生日の当たらないところに閉じ込められて過ごすなんて耐えられず。心の拠り所であった弟にも冷たく見放されて、何も考えられなくなっていた。

それで、最期に自分で選べた自由が“死”だった。

一番好きな場所で、日の下で、選べた自由。


あの頃は、冷静ではいられなかった。

今以上に子供だったから。

ああいう自由しか無いと思っていた。

味方がいなかったから、初めから亡命は諦めてしまっていたのもある。

生まれ変わった今世の世界を見たら、他にもやり様はあったのではないかと考える。

考えたところで過去は変わらないにしても、これからには生かせるだろう。


あの非常識なお姫様の言うことが、今世に関係するならば。


ハッピーエンドを狙ってるというのだから、バッドエンドもあるのだろう。前はバッドエンドになったらしいし、

単語だけで推測するなら、シナリオはあってもやり様によって物語(ストーリー)が変わるものなら、小説ではなくゲームの方か。

彼女は自分がヒロインだと言って、星野百合(わたし)を悪役にしたがって、男達と楽しんでいる雰囲気……所謂、乙女ゲームというものの世界?

やったことはないけれど、知識は少しある。

ヒロインと呼ばれる女として、攻略対象の美形(イケメン)と疑似恋愛をして楽しむゲーム。

攻略対象は何人かいて、選べる仕組みだったと思う。

あのお姫様と仲良さげにしていた美形の男が三人いた。ソイツらが攻略対象だろうか?

大学が舞台?

……ノアがいないとも言っていたし、他にも攻略対象がいるかもしれない。

悪役は星野百合(わたし)だけなのかしら?

他の人に絡んでいるのは見ないし、噂も聞かないから、他にはいないのかも。

すでに男達とは良好なのだから、それで良いじゃない。と思うけれど、あの剣幕。

一番の推しの為?他にも狙いがある?


それにしても


「ノア、か……」


口に出して、懐かしさを感じた。

生まれ変わって、只の、赤の他人になってしまったのに。

今世では一度も口にはしたことがなかったのに、不思議。


公爵令嬢(わたし)の、双子の弟の……名前。


そして、今世で一番、星野百合(わたし)の近くにいる男の……セイの、本名(なまえ)




精園(せいえん) 乃愛(のあ)』。


前世で、公爵令嬢(わたし)の双子の弟だったセイの本名(なまえ)だ。









【君の隣で夢を見る】






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