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「オレの別荘で何騒いでいるんだ」


扉を開いてすぐ、セイは広い玄関で揉める連中に鋭い視線を向ける。

サングラスをしたままなので彼らには解らないだろうが、隣に立った私には見えた。


「星野百合!?」

「こんなところまで……エルのストーカーかっ!」


いや、ストーカーはそっちじゃない?

声を掛けたセイより私に注目が向いて、大変迷惑なんだけど?


「無視すんな。話し掛けてんのはこっち」


セイも声のトーンが下がって、少し苛立っているわよ?


「お前は……」

「耳が遠いのか?オレの別荘で騒ぐなっ()ってんだよ」

「オレの?ここはエルの……いや、精園の別荘だろう?」


あら、知っていているのね。

……えっと、元王太子は。

でも、セイ──ノアにはまだ気付いていない?

子供の頃に逢っていたらしいけれど、大学でも気付いていない様だとセイは言っていたから、鈍いのかしら?


「だから、オレの別荘だって何度も言わせんな」

「……まさか、ノア!?」


元王太子は驚く。

その隣に立つ、迷惑なお姫様──改め、元“愛し子”も「え、嘘!ぜんぜん姿が違う!?」と驚いていた。……姿が違う?出逢った時からこんな風貌なのだけど、この子は。

彼女は他の姿を知っているの?


「そうだよ。面倒臭ぇな」

「昔と随分変わっていたからな。だが、その白い髪…………大学の?」

星野百合(ねーさん)の隣にいたイケ好かないチンピラですけど?」

「……そうだったのか。すまない。そうとは知らずに」

「いらない謝罪は良いよ。とっとと帰ってく」


「ノア!あなた、本当にノアなの?私ね、ずっとあなたに会いたかったの」


セイと元王太子の会話に割って入る元“愛し子”。

嬉しそうに、笑顔でセイに手を伸ばして来た。


パシッと触れられる前に払い除ける。


「馴れ馴れしく呼ばないでくれる?赤の他人が」

「赤の他人だなんて……私はあなたの家族よ。あなたのお父さんの義理の娘になるの」


え?


「オレの父親?そんな奴知らねぇな。オレには生まれた時から母親しかいなかったから」


なんか、複雑な家庭環境が見えて来るわ。

今世では親に恵まれていると思っていたけれど、少し違っていたのね。

確かに、セイの母親の取材記事にはよく息子の話は出ても、夫の話は一度も無かった。もしかしたら、NGワードだったのかもしれない。


「それはあなたのお母さんがお義父さんを追い出したからよ。お母さんにお義父さんが悪いって吹き込まれているんでしょ?違うの。本当はあなたのお母さんはお義父さんやあなたに酷いことばかりする悪女で、お義父さんはあなたを守る為に連れて家を出たかったのにお義父さんだけ追い出されてしまったの」

「私も話を聞いている。たまに会えていたらしいが、途中で会えなくなり。一緒に暮らせないことも悔やんでいた。手も上げられているのだろう?私とも会えなくなったのはそのせいか?」


セイ、アンタの家……DV家庭だって言われているわよ?


私はまったく知らないから、今は口を出すべきじゃないと思って見守っていたのだけれど……。

セイはあからさまな溜め息を吐いて、私を見た。


「ねーさん、オレの身体にDVの痕あった?」

「無かったわよ。私より綺麗なぐらい……」


って、何その表情(かお)


私が答えているとセイがサングラスを取って、口角を上げた。ニヤリといった感じに。


「ちょっと!なんで、アンタがノアの身体知ってるのよ!?まさかノアを襲ったの!!?」


何故、そうなるのよ?


「そうよ。絶対そうだわ。最低ね!ノアは小さい頃から虐待されてて、年頃になったら性的にも手を出されているのよ!?母親に!だから、ノアは女が苦手なの!それなのに、無理矢理襲ったのね!!みんな!その女を今すぐ叩き出してノアを助けて!!!」


はあっ!?

勝手な妄想止めてほしいわ。


動いたのは、元護衛と元侯爵令息で。

元“愛し子”に言われた通り私を叩き出すなのか、近付いて来て、手を……。


思わず、セイの後ろに隠れて服を掴むとセイがまた溜め息を吐く。先程とは違って、少し熱っぽく。


「ねーさん、それ可愛過ぎ」


はあっ!?

そんなこと言っている場合か!


掴んでいる服が背中部分だったので、つねってやろうかと思ったのに無駄な肉が無くて摘まめなかった。

チッと舌打ちしたら、セイは笑って振り向き、ぎゅうと抱き締めて来る。


()っどい妄想だよね?むしろ、オレの方が可愛い百合を襲いたいのにさぁ。母さんも虐待どころか、オレの恋の応援までしてくれるぐらいオレを想って大切に育ててくれたんだよ」


私を襲いたいってのは聞き捨てならないけれど、大切に育てられてきたのはなんとなく解る。


「虐待と変わらないことしてたのは、オレの父親だとかほざいてる浮気男の方だよ」


私達のことを話す優しい声から一転、酷く冷たい声で言った。









【君の隣で夢を見る】






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