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封筒を渡された日、セイに大事な話があると言われた。
講義が終わった後はアルバイトがあるから日を改めるべきかと思ったけれど、出来るだけ早い方が良いと言われ、アルバイト終わりに逢った。私の家で。
「………………は?」
ノエルやノアが、なので有り得ない話ではない。
けれど、私が動揺するには十分な内容だった。
「本当、なの?王太子殿下達もこの世界で生まれ変わっているって……」
「顔見たらほぼまんまだけど、気付いてない?」
「ノアの顔以外は霞が掛かったみたいにはっきり覚えていないから」
まさか、その顔が意外と近くに集まっていたとは思わなかった。
私に因縁をつけてきた非常識な顔だけは良さげな連中で、その代表のお姫様はかつてノエルやノアと同じ『精霊の愛し子』だった彼女?
随分印象が違う気がする。
と言っても、いつも王太子やノエルの元護衛が間に立っていたから、姿もほぼ見えていなかったけれど。
別にノエルは何もしていないのに、いつの間にか彼女を一方的に虐げている女にされていた。
まともに言葉を交わしたことも無ければ、顔も合わせたこともない。婚約者だった王太子に近付く彼女に嫉妬して、と言われたけれど……嫉妬する程の想いは王太子に抱いてはいなかった。只の政略で、義務。
想いを抱く程に優しさもなく、美形ではあっても好みでもない相手に想うことは何も無い。
むしろ、王太子に見向きもされず、エスコートもされなかったおかげでノアにエスコートしてもらえて喜んでいたぐらいだ。
……振り返ってみれば、ノエルは弟のことがかなり好きだったわね。
弟の顔しか覚えていない時点で、他に対する気持ちも薄いと言える。
だから、あんな絡まれ方をしても彼らだった男達にも彼女にも気付かなかった。
「あの女はねーさんの話しからして、あの頃の記憶があるのかも。しかも、今も何かの創作物の世界だと思っている。男達は関わりが無いから解らない。ただ、あの馬鹿王子はオレの両親の知り合いの息子だから、昔何度か逢ったけど、その時はまだ記憶は無い様に感じた」
「そう」
教えてもらえたことで、非常識なお姫様の言ったことの意味が何となく解った。
また、私は彼女の世界で悪役なのだ。
うんざりする話。
「ねーさん、頭の中がお花畑の女に負けないで」
「わかってる」
「今度はオレも負けないよ」
「そうね。アンタは彼女曰く“私のノア”らしいから」
「笑えない冗談だよね。気持ち悪い。オレはねーさんのものなのに」
「アンタも気持ち悪い」
「酷っど!」
只の冗談で済めば良い。
一応、彼らのことは気を付けておいた方が良いと注意を促された。
月日は経って、夏休み間近。
セイに引っ張られて水着も買われたわ。
そう!着ないと言ったのに、買われてしまったの!
「ねーさんが着ないと捨てることになる」と言われたから、仕方がなく貰ったわよ。捨てるのは勿体無いもの。勿体無いだけ。
旅行先には露天風呂があるらしいから、そこで使えたら良いんだけど。外で裸になるのは少し抵抗があるもの。
水着を買われた時に、この前のデートが中途半端に終わったから、ついでとばかりに連れ回された。
水着以外にも旅行中に着たら良いと数点、服まで買われた。数千どころか数万円にもなる物が全て奢りだ。
このお金持ちめっ!
指輪だって、高価な物だと思うのにこれ以上もらってしまっても良いのか。
貰ってくれなきゃ捨てる、と半ば脅しに近いことを言われるから貰うしかないのだと自分に言い訳をしていた。
本当は、嬉しい。
セイが選ぶ物は私の為に選んでくれた物だから、嬉しくない訳がない。
ただ、慣れないだけ。
【君の隣で夢を見る】




