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()()()、と言った。


記憶では、とても愛おしそうに()()を呼んでいた筈なのに、今はその存在に煩わしさを覚える様に口にする。


「今更、何を言っても言い訳にしかならないけど、まるで何かに支配されている様だった」

「何か……」

「魅了の魔法だったかもしれないし、他の力が働いたのかもしれない。今となっては調べ様にがないことだ」


確かに、もう調べることは出来ない。

同じ世界で生まれ変わったなら未だしも、まったく異なる世界の話。

ここには精霊もいなければ、魔法も無い。

記憶があっても、どうしようもない。


嘘を、言っている様には見えないのよね。

王太子への態度が演技なら今のも嘘かもと思ってしまう私がいるし、今のだけが演技で共謀していたかも……。

嫌だ。人間不信になりそうだわ。


「それで、あの後……ノエル(わたし)が死んだ後はどうなったの?」


聞くのも今更なことなのにね。

あの世界の全てに、未練なんて無いと思っていた。

未練があるとしたらノアのことだけ、の筈なのに。

無責任に役割を投げ出した所為かもしれない。


「知らない」


ん?

あまりに素っ気なく放たれた言葉に、聞き間違いかと思った。

私の視線に一度溜め息を吐いて、「知らない」と繰り返す。


「知らないってどういうことよ?」

「ノエルがいなくなったって聞いて、みんなで捜したんだ。それでノア(ぼく)は他と分かれて、『精霊の園』に行って……ノエルを見つけた。その瞬間、愕然としたよ。なんで、もっと早く正気に戻らなかったのか。あの時程、自身を呪ったことはない。ノエルがいない世界に何の意味もノア(ぼく)には無かったのに。それで堪えられなくなって、ノエルの後を追った」

「えっ」


後を、追った?

それって……。


「ノエルが飲み残した瓶があったから、それで」


何でもない様に言っているけど、どんでもないことを言っている。


「馬鹿じゃないの!!?」


思わず、テーブルを叩いてしまった。

そんな私に、目尻を下げて柔らかにセイは微笑む。


「うん、馬鹿だと思うよ。でも、そんな馬鹿になるぐらいにノエルが好きだった」


テーブルを叩いてジンジンと痛む手に、私より大きな手が重ねられる。


ノエル(わたし)の後を追ったノアが、その後のことを知らないのは当たり前だった。

『精霊の愛し子』の力で護られてきた国。

最も精霊に愛されたと言われる()()なら、一人でも国を護っていっただろう。ノエル(わたし)の何倍も力があると言われていたもの。


その気持ちには「……そう」としか返せない。


「私は、ノエルじゃないわ。記憶があっても、もう別人よ」


記憶は少し前に思い出しただけ。

それまでは影響されることなく生きて来た。

例え潜在的にはノエルの部分が残っていても、この世界では星野百合という別の人間でしかない。


「解っているよ」


重ねられた手の下から、引こうとすると握り込まれる。


「僕は生まれた時から記憶があって、もしかしたらノエルもいるんじゃないかって捜したこともあった。でも、それは自己満足でしかないって気付いた。僕も、精園乃愛でしかないからね」

「なら」

「捜すのを止めたのに逢っちゃったんだ。百合に。運命って思っても良いよね?だけど、百合(きみ)はノエルとはぜんぜん違っていた。逢ってすぐに殴られるなんて思っていなかったから驚いたよ、本当に。ノエルは腹が立っても決して手を上げたりはしない人だったのに。あの頃はもう終わって、今は新しい名前で生きている。あの頃とは違う環境で、違う人達と出逢って、百合(きみ)がいる。解っているよ。ちゃんと、違うってことは。それでも、今の百合(きみ)と一緒にいて、今の百合(きみ)を知って、精園乃愛は星野百合を好きになったんだ」


真っ直ぐ、優しい瞳で星野百合(わたし)を見て来る。

ちゃんと、今の星野百合(わたし)を見てくれている気がして、胸が熱くなった。


……くっ、まだ絆されるには早過ぎるわよ!私。









【君の隣で夢を見る】






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