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大学生生活初日を終えて、これからほぼ毎日の様にねーさんと逢える幸せに浸っていた夕食終わり。

入学祝いを母から贈られたのだが、そのついでとばかりに告げられた内容に盛大に顔を顰めた。祝いの席でする表情ではないのは解っていても、僕の祝いの席だから別に問題は無い。

問題があるとしたら、祝いの席で凶報を告げた母の方だ。

幸せ気分が吹っ飛んだ。


知ろうとしなかった僕も悪い。

ねーさんとの幸せな時間に浮かれて、頭からすっかり抜け落ちていた僕が悪い。


ねーさんごめん。

あの頂岳悠輝(バカおうじ)が同じ大学にいる……!






いたとしても関わらなければ良い。

逢わなけれ何の問題も無い。

大丈夫、僕がねーさんを守るから。


GWが過ぎ、一月以上何も無かった。

GWに映画を見に行ったり、大学進学を機に一人暮らしを始めたねーさんの家を見に行ったり、楽しく過ごした。

一緒にご飯を食べない代わりにねーさん手製のクッキーを貰い、家でじっくり味わって食べた。甘味控えめで幾らでも食べられるぐらい美味しかった。……手料理もいつか食べたい。

昂った気持ちで電話をして、お礼と美味しさを語ったら電話越しに笑い声が聞けた。また作ってくれると言ってくれた。幸せ!


休みが明けても舞い上がった気持ちのままで、GWで一緒に過ごしたのが楽しかったと話していたら、ねーさんの名前をフルネームで堂々と呼び付ける馬鹿がいた。

非常識だけど、こんな恥ずかしいことをする奴がいたことが可笑しかった。

つい声を出して笑ってしまうと脇腹にねーさんの肘が入る。

……うん、ごめん。

名前をあんな大声で知られたねーさんも恥ずかしいよな。


脇腹を押さえてしゃがみ込んだ僕を待つことなく歩いて行ってしまうけど、そんな冷たいねーさんも好き。

……なんて、悠長に考えていたら、悠輝(バカおうじ)がねーさんの肩を掴む。

チッ、出遅れた!

しかも、ねーさん凄く苛立っているし。

このままだと殴るな。

別に悠輝(バカおうじ)の顔が変形しようと構わないけど、ねーさんの手が傷付くのは頂けない。

急いで、悠輝(バカおうじ)の手を叩き落として、二人の間に割り込む。

苛立っているから、その際に後ろに下がらせたことを怒られた。

ひどい。ひどいけど、上から目線的な台詞も良いね。新しい扉が開きそう。


ごめん、今はそんなこと思っている場合じゃなかった。

悠輝(バカおうじ)だけじゃなかったのか。

見知った奴らがいる。

見知っただけなら良かったけど、ねーさんと逢わせたくない馬鹿共だ。

特に、昔と同じ様に男を侍らせてお姫様気分の()()()までいて最悪。


また有りもしない罪をねーさんに被せてくる。

大学に入ってから、お前らと一切関わってねぇだろ?

……って、あれ?()()()……同期だったか?似た雰囲気の奴がいた気がする。

顔までは知らなかったが、あちらこちらから黄色い声に混じって聞こえて来る奴らの名前は悠輝(バカおうじ)も含めて大学内での有名人のものだ。

何の冗談だ?こうも因縁深い人間が一処に集まるのは。

かつても僕達のことを学園の中では知らない者はいないぐらい有名で、今こうして注目を浴びた時点で僕とねーさんもこの有名人達と同じぐらいに知られたことになる。そして、ねーさんがまた立場を悪くする様なことを大っぴらに言って孤立させようとして……。

似た様な状況を作ろうとしている様にしか見えない。

示し合わせて似た状況を?

偶然、同じ大学に通うことになっただけで?

ここに通うこと自体を誘導…………は流石に無い。二人だけで話して決めたことだから。

ねーさんに苛められたと主張する()()()は解らないが、奴らが揃って因縁を付けてくるのは、かつての記憶を持って、でも無さそうだ。

悠輝(バカおうじ)は目の前の乃愛(ぼく)にも気付いていないしな。

何かの力が働いている?

この世界には魔法や精霊の祝福みたいなものは無い筈だけど……。

幸い、僕のねーさんへの想いも変わらないからねーさんの味方をするだけ。


ねーさんが僕以外の男に興味を持ったかと思ったら、違う様で良かった。もし興味を持っていたら全力で排除するから。

僕は知っているけど、奴らのことは知らないフリをした。

段々、ねーさんも疲れた表情になって来て、切り上げることにしまみたいだ。

確かに疲れるよな、話の通じない馬鹿共相手じゃ。


帰るねーさんを引き留めようとする奴らの前に立つ。

「邪魔をするな」と睨んで来るけど、お前らじゃ怖くないんだよ。


「邪魔はアンタらの方。ねーさんが言っただろ?自分の人生にまったく関係無い赤の他人だって。だから、関わるな。ねーさんの幸せをまた奪う様なら……」


殺す、と声に出すのは我慢して口パクで留めた。

ねーさんと一緒に幸せになりたいのに自分から不幸を選ぶことはしない。


優しいねーさんが僕のことで心を痛める必要は無い。









【君の隣で夢を見る】






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