プロローグ3
数分前....
空中管制艇《フラッド1》C-13のブリッジ。
ブリッジの基本構成は通信担当2人、気象計測担当1人、索敵担当1人、予備員1人 操舵主1人の合計6人と簡易型AIで構成されている。
索敵担当のミカエラ・スミスは、索敵レーダーに謎の磁波が映り込んだのを目にした。方位は南東約1㎞上空約2000mの地点である。
すぐに、AIに解析を任せるとともに、通信担当のロン・ウィルキットに声をかける。 そう言って、スクリーンの円形状の赤く表示されている部分を指さす。
「ロン、これ見て」
座標は、雲海の中で悪天候による多少のずれはあるものの、そこから異様な磁場が発見された。
基本的に赤の時は粒子リフトの終点付近の空間に発生する磁場のことを意味している。この時点で、2人はこの現象の違和感に築く。なぜなら、転送時の磁場の数値が自分たちの保有している機体数値の想定よりも、はるかに強いのだ。また、前回の出現時とほぼ同じ数値が出ている。
「解析結果は?」
<解析結果>
:移動中の高エネルギー反応検知
:移動中の物質体の推測:約200
:重力場を使用したフィールド形成によるジャンプである可能性:大
:固有周波数解析結果:メタルヒューマノイドタイプ
:解析結果:IA
簡易型AIがはじき出した結論は、”敵” であるということ。
ミカエラはすぐさま、地下の母艦にデータ転送をするようロンに指示を出す。
「空中管制艇《フラッド1》よりH.Q、粒子リフトによる磁場を検知。座標、SE47・55。イクス・アームズだと推測します。 オーバー」
『了解。受信した、確認する』
確認には10秒ほど要する。この短い時間が、とても長く感じられるのは、やはりなれないものだと実感する。
『H.Qより空中管制艇《フラッド1》。貴艦は迎撃態勢に移行されたし。オーバー』
「空中管制艇《フラッド1》了解」
そして、艦内の第2小隊隊長と連絡を取る。
「宗一郎隊長。IAです。数は200。120秒後に接敵します。戦闘配置についてください」
「了解した」
声の雰囲気でわかる。とても冷たく、重い感じ。意識が戦闘モードに変わった証拠だ。いつも、優しく仲間思いな宗一郎が唯一、変貌する瞬間である。
通信を終えると、艦内にアラートとアナウンスが流れた。
『敵接近。各員戦闘配置に着け、繰り返す。各員戦闘配置に着け。戦術強化兵は出撃後、迎撃態勢に移行せよ。リフト付近に近づけさせるな』
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宗一郎達は、装備室へ向かっていた。
「何で都合がいい時に出てくるんかな~」
走りながらライモンが悪態をつく。
「仕方がないですよ。ばれてしまったんですから」
マクマードが宥めるように言う。
実際こんな軽口を、言える状況でない。奴らに見つかれば皆殺しにするまで襲ってくるのだから。それから逃れるには、どれだけの犠牲が必要になるのか。現段階で数こそ少ないが、最悪な事態はいつでも想定すべきだ。
装備室に入ると、それぞれ指定されたブロックに移る。
ブロックにはそれぞれロボットアームがあり装甲の装着、各種武装の取り付けを全自動で行ってくれる。着衣型強化補助服の上から装甲を装着する。また背部に単身スラスターユニットを装着と脚部には装甲の外側から、スラスターユニットを取り付ける。関節部の隙間は、フルメタルナノマシンで覆い、最後にヘルメットをかぶる。これで全身装甲となる。
装着が終わると、背部にスラスターを挟み込む形でウェポンアーム2つが取り付けられ、追加武装や各種オプションを装着する。取り付けが終わり、ブロックの横にあるラックから、ブルパップ式アサルトライフルのAG5を取り出す。
ハンガーは、装備室と隣り合わせになっており、装着が終わった者から順に、カタパルトに向かう。
『各員準備しながらでいい、聞け』
唐突に宗一郎から第二小隊各員に通信が入る。
『本部より本作戦の変更が入った。母艦ラビロンはこのまま地上に浮上。浮上後,
粒子リフトによる亜光速移動で中枢管理センター跡地へ向かう。俺達は、ラビロンが地上に上がるまで山岳の入港口を死守、そして地上に浮上した際の援護とのことだ』
つまり、粒子リフトで移動するまで守りきれと。
「こりゃ~死に場所は決まったな」
つい本音がぽろっと出てしまった。
カタパルトは横に3列に並んでいてライモンは一番左のカタパルトに脚部のコネクタを接続する。
カタパルトに着くとアナウンスが入る。
『現在気象が激しいため、フライトユニットを装着して下さい』
上からフライトユニットが下りてくる。ウェポンアームが接続の邪魔にならないよう、水平に傾くと背中のコネクタに接続される。
隣のレーンには、マクマードが待機していた。
緊張のあまり、バイザーが開いたままになっていた。
ライモンとっさにマクマードに通信を入れる。
「おい、バイザーおりてないぞ」
気づいたのか、すぐに首元のスイッチを押してバイザーを閉めた。
「ありがとうございます」
声も少し震えている。彼にとって久々の実戦なのだから仕方ないだろうが、心構えが甘かったのは、本人の責任でもある。
「マクマード」
「はい」
震える声を押し殺している。
「死にたくなったらいつでも俺に言え。その時はすぐに俺の手で殺してやる」
「へ?!」
とんでもない発言に思わず変な声が出てしまっている。
もしあいつらの実験体にされるくらいならそっちの方がマシだ。
「分かりました。ありがとうございます」
理解したのか、安心したのか、声が少し落ち着いた。
外は風が強いが発艦については発着口が風向きに沿っているので問題ないだろう。
「システムを戦闘モードに移行」
『戦闘モードに移行します』
そう言うと、電子音声とともにヘルメットが戦闘形態変形し上部と左右から装甲がバイザーの上に覆いかぶさった。上部の接合部分がオレンジ色で光る。
『発艦許可が下りました。各員出撃してください』
カタパルト信号が3つに灯ると、藍色の戦士達が体の浮遊感とともに嵐の中に勢いよく飛び出していった。
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