表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

住めば、都かもしれない 2

衝撃的な出来事は、私にとって受け入れがい事実だったに違いない。


坂野さんにキスされた後、私の意識は、暗転した。


目を覚ますと、頭の上で誰かが言い争っていた。


一人は、坂野さんで、もう一人は知らない声だった。


「まったく、お前は。新入生相手に何してるんだよ。」


「いいじゃない。桃ちゃんだって、私の美貌に見惚れていたのよ。」


「だからって、合意なく襲っていい理由にはならないだろう。見境ない奴だな。」


「あーら。モテない男のひがみかしら。」


「誰に言ってるんだよ。」


「去年のバレンタインチョコは、私の方が、4倍多かったわよ。」


「男からも貰うなんて、卑怯だぞ。」


「愛は、卑怯なものよ。」


「よく恥ずかしげもなく、そんな台詞言えるな。」


「なんですって・・・って、あら、桃ちゃん、起きたの?」


般若のような表情から一転、坂野さんは、二人の激しい会話のキャッチボールを見守っていた私に菩薩のような笑顔を向けた。


「は、はい。えっと。」


慌てて体を起こした私は、返事をした。


なんて言えばいいのやら。


「いいのよ。私とのキスが、素敵すぎて、失神してしまったことなんて、全然気にしてないわ。むしろ、そんなに楽しんでくれたなんて、こ・う・え・い。」


頬を添えられた白い手が、妙に熱い。


後ずさりした時、坂野さんの頭にお盆が直撃した。


坂野さんは、頭を押さえて、小さく呻いた。


「もうやめろ。明らかに怖がっているだろう。」


お盆を手にしているのは、見たことない男の人だった。


大人っぽいから、多分、高等部の人だろう。


身長が、かなり高くて、180センチ位ある。


日焼けした肌が、健康的なスポーツマンといった感じである。


「何すんのよ。乙女の頭を叩くなんて、紳士失格ね。」


「どっかの野獣よりはましだよ。」


男の人は、とんでもないことをさらりと言うと、私に向き直った。


「高等部1年の真咲佑介だよ。よろしく、雲野さん。」


差し出された大きな手を握ると、真咲さんは、爽やかな笑みを浮かべた。


「よろしくしなくて、いいわよ。こんな馬鹿は、放っておいて、私と黄昏ランデヴーしましょう。」


坂野さんは、私の手を握っていた真咲さんの手を叩くと、懲りずに近寄ってきた。


「黄昏ランデヴーって、何だよ。それより、もう飯の時間じゃね。やっべ。俺、今日は、テーブル当番じゃね。」


私の心の中の声を代弁してくれた真咲さんは、時計を見ると、慌てたように出て行った。


「あら、残念。それじゃあ、真夜中のティータイムにしましょうね。さ、桃ちゃん。食堂まで一緒に行きましょう。」


坂野さんにひきずられるようにベッドを出た私は、そのまま一階の食堂へ連行された。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ