【アンソロジーで】追放されたやさぐれ聖女はイケオジ公爵に溺愛される~元婚約者と祖国なんぞ知るか!~【漫画化!】
アメーリア・アッシュフォードは聖女だが、元婚約者が結婚したい相手を聖女とするために、偽聖女の烙印を押される。
そんな元婚約者とそんなのが王子な国に嫌気がさしたアメーリアは、結界を破壊して国を後にする。
素性を隠して国から出ると、魔物に襲われている馬車を発見。
祖国の馬車ではないからと助けると──
「と、いうわけでお前がいると不都合なんだ」
私は脳みそお花畑の屑の言葉に怒りを通り越してあきれ果てた。
「アメーリア、悪いがお前は婚約破棄そして追放だ」
女を侍らせているコリー殿下の言葉に耳を疑った。
「どういうことですか?」
「僕は彼女と結婚したいんだ、でもそうなると聖女のお前が邪魔になる。だから偽聖女として追放して僕は『本当』の聖女の彼女と結婚するのさ!」
べらべらと自分がドツボに陥る発言をしているコリー殿下の発言を「音貝」に記録させつつ私は喋らせておく。
「と、いうわけでお前がいると不都合なんだ」
私はため息をついた。
こんな馬鹿に付き合うのも嫌だし、恨みを買うのも嫌なので──
「分かりました、私は今日限りでこの国を出て行きます」
そう言って、私は部屋を後にした。
「ふざっけんなよ!! お前みたいな屑こっちから願い下げじゃボケ!!」
一度屋敷に戻ると、私は被っていたフードを床に叩き付けた。
「よし、出て行ってやる、後は知るか!!」
と、私は荷物をまとめて、結界も全部解除して、馬に乗り国を出て行った。
あの馬鹿が私の事を偽聖女と公言しているだろうから、フードで顔を隠して出て行った。
一週間で国を出て、さてどうしようと馬を走らせていると、魔物に襲われている馬車があった。
あの国の馬車ではないようだったので助けることにした。
「魔物よ、去れ! 光よ!!」
魔物は私の光に逃げ出していった。
「無事ですか?」
馬車に近づき、私は尋ねると、馬車の中からイケオジ……いいえ、壮年の男性が姿を現しました。
青黒い髪に、白皙の肌、黄金の目、チャームポイントのような整った顎髭。
顔つきも整っており、あの屑王太子なんか目じゃないくらい素敵な容姿の方でした。
けど、問題は中身。
注意して見届けなければ。
「ありがとうございます、お嬢さん」
「いいえ、為すべきことを為したまでです」
「ん? 貴方はアメーリア・アッシュフォード様では?」
ぎくり。
「は、はい。その通りです……」
「何故貴方のような位の高い聖女が一人でこのような場所に?」
目が射貫くような圧を持っていました。
私はその圧に耐えきれず、喋ってしまいました。
「何を考えているのだコリー殿下は、バレたら王位継承権を剥奪モノだぞこれは」
「多分バレるかと……私の代わりの聖女見習いにはそんな力全くありませんから」
「国に戻るつもりはないのですか?」
「残念ながらありません、戻っても恨みを買うのは目に見えてますので」
何で出て行ったとか逆恨みも買いたくない。
「……アメーリア様、宜しければ我が国に、私の領土に来ていただけませんか?」
「えっ?」
「我が国には聖女はおらず、兵士達は国を守る為に魔物と戦う日々、それを終わらせてはいただけませんか?」
「……」
「アメーリア様がいることは内密に致しますので」
「はい、喜んで行かせて頂きます」
そう言うと、その御方はにこりと笑って私に手を差し出しました。
「私は、ブラドル・ダウンディング。ダウズウェル王国の貴族です」
「ちなみに地位は?」
「公爵です」
おぅいぇ。
何かとんでもないことになったけど、身を寄せる場所ができたのでよしとするかぁ!
「さて、私の領地に行く前に国王陛下にお会いして欲しいのです」
「国王様にですか?」
「ええ、魔物対策に連日追われている陛下が貴方を見れば貴方を庇護するのを良しとするでしょう、その際理由も教えて差し上げてください」
うへー、またあの黒歴史言うのか、嫌だなぁ。
「嫌でしょうが、それが後々の為になります」
「え、今顔に出てました」
「はい、はっきりと」
ブラドル様に指摘されて顔が茹で蛸の様に真っ赤になってしまった。
恥ずかしい!
二日ほど移動して、お城に着くと、ブラドル様に案内されました。
「ブラドル様、本日は何用ですか?」
「聖女がいらしたので陛下に」
「!? 急ぎブラッド陛下をお呼びしろ!!」
城中が騒ぎ出しました。
「ブラドル! せ、聖女とは本当か?!」
やつれた感じの王様が謁見の間にいらっしゃいました。
「はい、こちら。アメーリア・アッシュフォード。隣国コールフィールドの聖女でしたが、追放されて居たところに遭遇し、来て頂きました」
「あ、アメーリア・アッシュフォード?! な、何故天才聖女と名高かった貴方が追放されたのです?!」
王様は驚きのあまりひっくり返りましたが、それでも私に問いかけました。
「それは──」
私は思い出すのも嫌だけども、あの時のことを話しました。
「なんと愚かな」
「コリー殿下に愛想尽かしたので結界全部解除して出てきたので、向こうは大騒ぎになってますよ、そろそろ」
「コリー殿下がそのようなことを言った証拠が──」
「あります」
私は「音貝」を見せて、録音した声を再生しました。
「──これは酷い」
「屑の極みだ」
ブラドル様は吐き捨てるように言いました。
「アメーリア嬢、貴方のことは私が守ります故、どうかこの国をお守りください」
「も、勿論です」
真摯な眼差しに、くらっと来ましたが、なんとか堪えます。
「ではさくっとやりますね」
「──光の壁よ」
「包み込め」
はい、魔物が通れないように障壁ができました。
中にいる魔物達もはじかれたでしょう。
「これで大丈夫です」
「陛下!! 魔物が押し寄せてこなくなったと!!」
「ありがとう、ありがとう!! 貴方のおかげだ!!」
「い、いえ、そんな……」
ブラッド陛下に感謝され、恐縮してしまいます。
「陛下、その辺で」
「おお、すまなんだ」
「では、私の領地へ向かいましょう」
「ちょっと待ってくれ、その『音貝』何枚録音されている」
「十枚ほど」
「一枚譲って頂きたい」
「はぁ……」
私は一枚くらいいいかと、ブラッド陛下にお渡しした。
「では、参りましょう」
ブラドル様に手を引かれて城を出ました。
どんよりとした空気はなくなり、澄み渡る青空が目に飛び込んできました。
一日後、ブラドル様の領地へと着き、屋敷に案内されました。
「素敵なお部屋ですね」
案内されたのは本当に素敵なお部屋で……少々勿体ない気がしました。
「アメーリア様、そろそろ普通に接してくださっても宜しいのですよ」
へ?
「はい?」
「アメーリア様は、ネコを被ってらっしゃいます、そうでしょう」
「あ、あはははー……」
ばれてーら。
「あーもーはい、そうですよ! 本当は色々と面倒なことはやりたくない聖女なんですよ私!」
「でも、やってくれた。それが嬉しいのです私は」
ブラドルさんは私の頬を撫でました。
「可愛い私のアメーリア、どうか側にいてください」
「え、それって?」
「こんな年寄りは嫌でしょうが、貴方が良ければ私と結婚──」
「しますします!! 全然問題なっしです!!」
こんなイケオジと結婚できるなんて夢みたいだ!
「ああ、夢のようだ!! でも式は秘匿しましょう、誰が嗅ぎつけるか分からない」
「はい!」
こうして、交際すっ飛ばして結婚生活が始まった──
「私の可愛いアメーリア、どこです?」
「愛しのアメーリア、貴方は本当に素敵な人だ」
「我が妻アメーリア、ご機嫌はどうです?」
ブラドルさん、私のことかわいがりすぎぃ!!
って言いたくなるほど、可愛がってくれてるから恥ずかしくてしょうがない。
「何故顔を隠すのです?」
「は、恥ずかしいので少し手加減を……」
「できません」
「ひぇぇええ……」
腰を抜かすような素敵なお声で、私を愛してくださるのは耳に毒だし。
整った容姿を直視すんのも、目に毒だー!!
と内心絶叫しつつ、それを見透かすような目をしたブラドルさんに溺愛される日々を私は送っていた。
同時期、各国の会議にて──
「コールフィールド王国に魔物増大、兵士達は疲弊している、と」
「息子が『偽聖女』を追い出したと言った時期からだから絶対、追い出したのは聖女のはずだ、だが他の連中は偽聖女と言うばかりで……」
コールフィールドの国王は疲弊した様子で言った。
「皆さんに御拝聴いただきたいものがございます」
「ブラッド陛下、一体何を?」
ブラッドは「音貝」を再生した。
『アメーリア、悪いがお前は婚約破棄そして追放だ』
『僕は彼女と結婚したいんだ、でもそうなると聖女のお前が邪魔になる。だから偽聖女として追放して僕は「本当」の聖女の彼女と結婚するのさ!』
『と、いうわけでお前がいると不都合なんだ』
「な、何だこれは……!? この声は息子の……!! ブラッド陛下貴方は──」
「聖女アメーリアが我が国を通過した際に頂いたものです、各国の会議で聞いて頂きたいと思い」
「あの馬鹿息子が……!! 王位継承権を剥奪することにする!!」
「バロウズ陛下。良いのですか? 御子息は一人のはず」
「親戚でまともな男がいるはずだ、それに継がせる。して、アメーリア嬢は」
「私が出て行ったことは事実なので居場所などは知らせないでくださいと言ってどこかへと去ってしまいました。ですが──」
「連絡はできます」
「ブラッド陛下、頼む! アメーリア嬢を呼んでもう一度結界を張るように頼んでくれ!!」
「一応頼んでみますが、上手くいくかは分かりませんよ?」
「それでもだ……!!」
「だ、そうですが?」
「いやだー。いきたくねー」
「ですよね、お断りしましょう」
ブラドルさんの膝の上に座って私は撫でられている。
「私を偽聖女として追放した関係者全員いなくなったら考えてやってもいい」
「わかりました、お伝えします」
二日後──
「全員追放して他の国でも庇護しないように頼んだから結界を張ってくれ、だそうです」
「はやーい」
「かの国の国王も、それだけ切羽詰まってるってことでしょうね」
「仕方ない、いきますか」
二日前──
「ち、父上?! 何故私を追放するのです!?」
「お前がそこの女と結婚するためにアメーリア嬢を偽聖女に仕立て上げ追放したと聞いたぞ」
「ち、違います、本当にアメーリアは偽──」
「他の連中が吐いたぞ、お前がそこの女と結婚したさにアメーリアを偽聖女扱いしたとな」
「助けてコリー!」
「お前達は全員追放だ!! どの国にも入れて貰えると思うな!! 死ぬまでさまよい続ければいい!!」
「嫌だ! 父上、父上──!!」
「嫌よ、嫌ぁ!!」
「た、助けてくださいぃ!!」
悲鳴を上げて連れて行かれる愚者達を見て、バロウズはため息をついた。
四日後──
早馬の馬車で母国に戻った私は、バロウズ陛下と面会した。
「余の愚息がすまない……」
「陛下が悪いわけではありませんが、私はこの国に戻る気はありません。結界は張りますが……」
「分かっている……」
「では──」
「──光の壁よ」
「包み込め」
結界を張った。
「これで大丈夫でしょう、では私は戻りますね」
「何処へ戻るのだ?」
「愛しの旦那様がいる場所へ」
「……そうか」
陛下は再びうなだれた。
もし、私が結婚してなければ別の男を宛がうことでつなぎ止められると思っていたのだろう。
だが残念、私にはブラドルさんがいるのだ。
馬車に戻り、ブラドルさんと会話をする。
「なんとか諦めて貰えたー」
「それは良かった」
ブラドルさんは私の頬にキスをする。
「ぶ、ブラドルさん?」
「甘いキスは後日ということで」
「……まったく……」
人タラシの天才だと心の中で悪態をつく。
「大丈夫、私は貴方にしかしませんよ」
見透かすように言ってくる。
こっちは嬉しさのあまり恥ずかしくて死んじゃいそうなんだって!!
そして私は私の家に、ブラドルさんの屋敷に帰る。
たくさんのキスと、甘い言葉で私をダメにしてくる愛しの旦那様。
でも、私も愛してますよ!
もっちろん!!