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現実世界恋愛系短編

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしがあるどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

「好きです。付き合ってください!」


 目の前には、ずっと好きだったクラスメイトの坂口(さかぐち)くん。緊張しているのか、整った顔はこわばっているし、目は落ち着きなくきょろきょろしている。


 うんうん、そりゃあそうだよね。内心納得しながら、一歩近づいてみた。ぴくりと坂口くんの肩が揺れる。さては逃げようか迷ったな! 坂口くん、乙女心は傷ついたぞ。


 いわゆる美少女ならここで頬を膨らませるものだろうけれど、私には無理だから。代わりに、腹の底から声を出す。


「……名前をつけて、もう一度!」

「は? はい! 山本(やまもと)さん、好きです! 付き合ってください!」


 ああ、いい声だわ。顔良し、頭良し、性格良しの坂口くんだけど、やっぱり一番好きなのはこの声かも。


「今度は下の名前でどうぞ!」

「? め、めぐみさん、好きです! 付き合ってください!」


 きゃ、坂口くんに名前呼んでもらっちゃった! せっかくなら、携帯で録音したかったなあ。この声を目覚ましにセットしたら、きっとぱっちり目が覚めるはずなのに。


 でも仕方がないよね。犯罪に引っかかる可能性があることはやめておこう。


「私のどこが好きですか?」

「図書室でいつも楽しそうに本を読んでいるところです!」


 優しい性格の坂口くんは、ちょっと焦りながらもしっかり対応してくれている。そういう真面目なところも好き。


 しかもボッチって言わないでくれる坂口くんの優しさといったら。まあ、でもそういう私だからこそ()()()()()()()に選んだんだよね?


 もうすっかり夏だ。少し前までなら、部活や委員会が終わったあとともなれば、すでにとっぷり日が暮れていたけれど、まだ窓の外はほんのりと明るい。窓の向こうのグラウンドを見つめたまま、私は小さく息を吐く。


 じれったくなったのか、坂口くんが焦ったような声を出した。確かにこんな現場、誰かに見られたら坂口くんのダメージが大きいよね。()()()()のうちに終わらせてあげなくちゃ。


「あの……、返事は……?」

「本当にありがとう。すごく嬉しい!」


 いくら罰ゲームとはいえ、好きなひとの声でこれだけ「名前」と「好き」を連呼してもらったんだもん、罰ゲームのネタにされたとはいえ、しばらく笑いものにされてもお釣りがくるわ!


 英語の時間の和訳で「好き」という単語が出てくるたびに、坂口くんが訳してくれないかなあと黒板に書かれた日付と出席番号を照らし合わせてしまうような私だもの。


 にこにこ顔で答えたら、私を上回る笑顔で坂口くんが輝いた。


「ということは、返事はOKってことでいいんだね! よかった、ありがとう! これからよろしくね」

「……は?」


 私の両手をつかみ、跳び跳ねる坂口くん。そんなアホな動きしても素敵! って、これ嘘告白じゃなかったっけ? いつの間にOKしたことになってるの?


 あ、わかった。しばらく付き合ってから、「ドッキリ大成功、嘘告白でした〜」ってやるやつよね。知ってる知ってる。坂口くん、意外とゲスな遊びをするのね。


 でも、そういうところも好きよ。これが惚れた弱味ってやつだから、お望み通り付き合ってあげようじゃないの。


「こちらこそ、どうぞよろしく」


 たとえ坂口くんの気持ちが嘘でも、隣にいられるなら満足だから。嬉しさを隠さないまま、私は素直に頭を下げた。



 ***



 坂口くんたちの会話を聞いたのは、本当に偶然だ。


 先生に頼まれて、授業で使った資料を準備室という名のガラクタ置き場に運んでいると、途中の空き教室から笑い声が聞こえてきた。


 用事がないときには入り込まないようにとは言われているものの、鍵がかかっていないせいで特定の男子たちの溜まり場になってしまっているらしい。うちの学校は自律をモットーにしているせいか、進学校のわりに校則がゆるゆるなのだ。


「期末テストの合計、せいので見せ合うぞ!」

「恨みっこなしだ!」

「マジかよ。勘弁してくれ!」


 わちゃわちゃと賑やかなのは、学校でも評判の男子3人組。眉目秀麗スポーツ万能、ま、私は坂口くんが一番カッコいいと思ってるけどね。ふふふ、眼福眼福。こっそり拝んでおく。


「わかったな、坂口。約束はちゃんと守ってくれよ」

「俺たち、罰ゲームの結果を聞くのを楽しみにしているからさ」

「……わかった」


 え、なになに。テストの点数の合計で罰ゲームを決めてたの? 学校の人気者なあのひとたちも、そういう普通の男子みたいなことをやるんだねえ。


 ちょっとだけむすっとした顔の坂口くんも珍しい。一体、何を罰ゲームに設定したのやら。微笑ましく思いながら、通り過ぎようと思ったそのときだ。


「じゃ、坂口。さっそく今日の放課後、告白してきてね」

「せっかくだし、見学に行こうかな」

「バカ、来るな。帰れ!」


 ど、どういうこと?

 罰ゲームが、嘘告白とかそれはちょっとやりすぎのような……。そういうひとを傷つける遊びって、坂口くんらしくない気がする。


「会話を録音して、公開してくれてもいいんだぜ」

「それ、犯罪だからな」

「坂口、厳しい~」

「俺は、山本さんが嫌がるようなことはしたくない」


 嘘でしょう、罰ゲームの対象って私なの? ショックなような、腑に落ちるような。なんとも言えない想いが広がる。いやいや、山本なんてよくある名前だし、他の学年にも同じ名前の女子がいるのかも? 知らんけど。


「まあ、クラスメイトだからな。失敗したら、終わりだな」

「ハードルを上げるんじゃない!」


 私でした! でも、ある意味良かったのかなあ。普通に坂口くんのことを好きな女の子にそんなことをしたら、きっと刺されちゃうからね。


 私はそんな風に雑に扱われても、坂口くんに認識されていること自体が嬉しいと思っちゃうような、そんな残念な脳みそをしているから全然問題ない。


 だったらその罰ゲームに乗らなきゃ損でしょう? 普段なら絶対に声をかけられない相手が告白してくれるって言うんだもの。せっかくなら、たくさん好きって言ってもらわなきゃね。


 たとえ嘘でもいい。5分だけでも、私のことを見てくれるならそれはなにより幸せなことだと思うから。


 それなのに。

 嘘告白のはずなのに。

 どうして坂口くんは、告白が成功してそんなに嬉しそうなの?



 ***



 その日以来、私と坂口くんは高校生カップルらしい交際を続けている。つまり、清く正しい男女交際ってやつね。今日もコンビニの期間限定ドリンクを買って、のんびり下校中だ。


 2種類の味で迷っていたら、坂口くんが片方買ってくれた。えーと、これはまさかひとくちくれるタイプの罠ですか?


 いや、私は止めたんだよ。嘘告白なのに、あんまり周りに「付き合い始めました!」ってアピールしても意味ないだろうし。それなのに、坂口くんってば無邪気な顔をして、すごいセリフを吐いてくるんだもん。


「山本さんの彼氏は、俺ってちゃんとアピールしとかなきゃ」

「いや、誰も私の彼氏なんて興味ないと思うよ」

「俺が心配なの」


 そのままぐいぐい近づいてくるものだから、正直気絶するかと思いました。嘘告白って、ここまで相手のために尽くしてくれるものなんだっけ?


 坂口くんって、罰ゲームにも手を抜かないタイプなのかしら。高く高く上げて落とすとかエグい。でもそういうとこも好き。


 心配していた坂口くんファンからの嫌がらせもない。これも後からまとめてくるのかなあ。


 嘘告白の日、坂口くんはちょっと帰りが遅くなった私のことを、なんと家まで送ってくれた。それから、登下校は一緒というのがいつの間にかお約束になってしまっている。朝玄関のドアを開けると、好きなひとが笑顔で出迎えてくれるんだよ。罰ゲーム、ありがとう!


 下校の時間も、私の委員会があるときにはちゃんと終わるまで待っていてくれる。だから私も坂口くんの部活が終わるのを待つのが当たり前になってしまった。


 わりと長い帰り道なのに、坂口くんといると会話が途切れない。


「修学旅行では、同じ班になれるといいね」

「そうだね。ねえ、知ってる? 修学旅行って、2年生で行くところと3年生で行くところがあるんだって。学校によって違うんだって」

「そうなんだ。俺は、山本さんと一緒なら毎年でも旅行に行きたいな」


 毎年はまずいです。卒業しなくちゃ。

 でもそんなこと言っちゃう坂口くんって、お茶目だよね。


「体育祭の後夜祭では、一緒に過ごそうね」

「うん、後夜祭ってフォークダンスとかなかったっけ?」

「たくさん踊ろう。俺、ある程度なら社交ダンスも踊れるよ」

「普通にフォークダンスでいいよ……」


 後夜祭でサルサとか、チャチャチャとか踊り始めたらやばいヤツなのでは? でも、そういうこと平然と言っちゃう坂口くんが可愛いよね。ナチュラルに踊れるのもすごくない?


 ただちょっと困っているのは、いつまで経っても坂口くんがネタばらしをしてくれないこと。大丈夫? もしかして、お友だちの間でドッキリのネタばらしまでのハードルを上げるように指示されていたりしない? いじめに繋がっていないか、ちょっとだけ私は心配です。



 ***



 1学期も終わりが近づき始めたある日、職員室で部活の顧問の先生に声をかけられた。1年生の頃からお世話になっている先生は、我が家の家庭環境のこともよくご存知だったりする。


「アメリカに行くんだって? これから、寂しくなるな」

「あら、先生もご存知なんですか。話が広まるのが早いなあ」

「すまん、これ極秘事項だったのか?」

「極秘事項なら担任の先生にちゃんと口止めしておきますよ。大丈夫です。どうせすぐにみんなにわかることですし」


 私が笑えば、先生が胸をなでおろしていた。最近は個人情報保護とかで色々と難しいみたいだもんね。大丈夫です。うちの家庭の事情は、友人にはフルオープンですから。


「でも父は嬉しいみたいですよ。記念日すら一緒にお祝いできないと、父は気にしていたみたいですし」

「いいお父さんじゃないか」

「むしろ母の方が記念日を覚えていないので、オンライン通話に気がつかずに無視する形になることも多いみたいで」

「……お父さん、気の毒に」

「まあ、時差もありますからねえ」


 昔から母にぞっこんの父は、ようやく久しぶりに一緒に住むことができるようになり、毎日ご機嫌でメッセージを送ってきている。普通に面倒くさい。


「うちの母はあそこなら一緒に行きたいけれど、ここならついて行きたくないなんて割とはっきり父に言うような感じでしたので。アメリカは母的にOKだったみたいです」

「それじゃあ念願叶った感じかもしれんな」

「とはいえ、そのしわ寄せが私に来ているのはいただけないんですけれどね」


 この時期に引っ越しとか、環境があまりに変わるのはちょっとしんどいんだけどね。それでも、父の希望を叶えてあげたいという想いもあるんだ。


「大丈夫か。来年、受験だろう?」

「最近はネットもありますから、連絡も調べ物もなんとかなりそうです。あとは私の体力が持つかどうかですね」

「そうか、お前がそう言うなら安心だが。無理するんじゃないぞ。エナジードリンクは万能薬じゃないからな」

「ぎくっ」


 自分の中の不安は、誰かに話すことで解消されることもある。だから先生と思わず話を弾ませてしまった私は、気がつかなかったんだ。先生との会話を、坂口くんが聞いていたなんて。



 ***



 すっかりお馴染みになった登下校。でも夏休みが明けたら、私たちが一緒に並んで歩くことはなくなるはずだ。コンビニの期間限定ドリンクを飲みながら帰ることも、もうできない。


「あのね、坂口くん。2学期からは一緒に登下校はできなくなるんだ」

「どういうこと?」

「うん、実は私、もうすぐ引っ越すんだ」


 そうだ、このタイミングで嘘告白のネタばらしをしてもらえばいいんじゃないのかな。1学期の終わりに付き合い始めて、夏休み明けには別れているカップルとかわりとよく聞く話だし。それなのに。


「嫌だ、俺、遠恋なんて耐えられない。やっと、山本さんに好きだって言えたのに」

「え?」

「時差があるから、電話だって全然繋がらないなんて無理だ」

「いや、あの」

「俺、頑張るから。医者になってめっちゃ稼ぐって約束する。だから、今すぐに結婚して。アメリカなんて行かないで」


 泣きながら私の手をつかんでくる坂口くん。待って、待って。私たちって、しょせん嘘告白で付き合い始めた関係だよね。いや、私はこんな関係でもずっと一緒にいられて幸せでしたけどね?


 っていうか、一生懸命働くからとか周りの視線が痛いから!


 あのモブ顔でイケメンに貢がせてるの? マジで?みたいな驚きの顔に耐えられないから!


 それになにより……。


「転校とかしないけど?」


 私の言葉に、坂口くんが目をぱちくりとさせていた。


「でも、さっき職員室で引っ越すって……」

「来年は受験でしょう。向こうの大学を受験するのは正直難しいし、普通に日本の大学を受けるならこっちにいた方がいいから、おばあちゃんの家から学校に通うことにしたの。だから、夏休み明けから、電車通学になるんだ」


 いや、本当にアメリカになんて行かないよ。行くのは両親だけ。……ってもう父は他国からのスライドでアメリカ入りしているから、今からアメリカに向かうのは母だけなんだよね。


 って言おうと思ったんだけど。坂口くんが今まで見たこともないくらいになんか取り乱しちゃってて、どうしたらいいんだこれ。落ち着け、坂口くん! あ、そうか!


「でもさ、坂口くん、別に私のこと好きじゃないよね?」

「……どうして、そう思ったの?」

「だって、そもそもこれって嘘告白だったじゃん」


 ああ、さようなら私のアオハル。

 私は別に嘘だろうが、ドッキリだろうが、坂口くんと過ごせるならなんだって良かったんだよ。でもね、坂口くんが傷ついた顔を見るのは嫌なんだ。だから、もういいんだよ。無理して彼女のことを大好きな彼氏の役なんてやらなくていいんだ。


「……そういうことか。よし、じゃあ、信じてもらうために今から命綱なしバンジージャンプしてくるよ」

「いや、そこ、命賭けてくれてなくても! っていうか、命綱がなかったら死ぬから。死んじゃうから!」

「じゃあ、俺の話をちゃんと聞いてくれる?」

「聞く聞く、聞かせていただきます」


 坂口くんは、意外と涙もろくて、結構面倒くさい。

 でも、そんな坂口くんも好きな私はやっぱりたいがいだと思う。



 ***



「期末試験のテストが全部返ってきた日。空き教室で坂口くんたちが罰ゲームについて話しているのを聞いたのよ。でも嘘告白じゃないってどういうこと?」


 私の質問に、バツが悪そうな顔をする坂口くん。うん、そういう表情も素敵だね! いかんいかん、今は坂口くんの格好良さを愛でるのではなく、どう言うことなのかを確かめるのが優先だったわ。


「確かに『罰ゲーム』扱いにしたのは悪かったけど、告白はもちろん本気。ただ、フラグを立てたくなかったんだ」

「フラグ?」

「俺、この戦争が終わったら、幼馴染と結婚するんだってやつ」

「それ、戦死して結婚できない定番のヤツだ」


 指摘すれば、その通りだといたって真面目な顔をして坂口くんがうなずいた。


「そうだよ。今度の期末試験、学年1位を取ったら好きな女の子に告白するなんて言い方をしたら、フラれちゃうのが決定するみたいじゃないか」

「だから、『罰ゲーム』という言い方をしていただけで、本当は『学年1位が取れたら、その勢いで好きな女の子に告白する』という目標だったってこと?」

「うん」

「それって……」


 それって、まるで、坂口くんが私のことを本気で好きみたいじゃない? 気がついた瞬間に顔が熱くなった。よく見れば、坂口くんも、耳が真っ赤になっている。


「えっと、坂口くんはもしかして……」

「本当に、山本さんのことが好きだよ」

「でも、私、地味だし、特に目立つこともしてないし……」

「誰も気がつかないこと、率先してやってくれてるのを知ってるから。学校の裏庭や花壇が綺麗になったのって、山本さんが美化委員会に入ってからだよね」


 美化委員会なんて全然目立たないのに、気がついてくれていたんだ。


「図書室でも、別に図書委員でもないのに普通に手伝いをやってるし、先生の雑用もこなしてる」

「あれは、私が本が好きだし、先生の雑用は別に他に用事もないからで……」

「でも、同じように本が好きなはずの子たちは手伝わないで読書をしてるよね。先生の用事だって文句を言って手伝わないヤツのほうが多いよ」

「まあ、ひとによるとは思うし……」

「山本さんは誰かの手伝いをしているとき、いつも楽しそうに笑ってる。手伝っても、別に山本さんの得になるようなことではないはずなのに。山本さんの笑顔を見ていたら、いつの間にか好きになってた」


 誰かに褒められたくてやっていたわけではないけれど、目立たない私をちゃんと見てもらっていたことが嬉しい。そんな私に、坂口くんが不思議そうに尋ねてきた。


「というか、むしろ『罰ゲーム』だと思ったのなら、どうして告白にOKを出してくれたの?」

「坂口くんこそ、誰にだって優しくて親切じゃない。相手によって態度を変えたりしないもの」

「でも、『罰ゲーム』する人間だって思ったでしょ?」


 ちょっと不満そうな、意地悪そうにも見える表情にまたきゅんとくる。


「うん、実は裏ではそういうことしちゃうタイプなんだってびっくりしたけど、嘘告白でも付き合えたら嬉しかったから、騙されてみることにしたんだ」

「山本さんの気持ち、嬉しいけど嬉しくない。悪いひとに騙されそうで怖いよ」

「むしろ、坂口くんになら積極的に騙されたいです!」

「やめて!」

「クズでも大歓迎だよ! 私の方こそ、貢ぎたい!」

「ダメだから! 貢ぐのは俺だから!」


 訂正するのはそこなの?



 ***



 そういうわけで、私たちは今日も楽しく青春している。ちなみに、坂口くんの親友たちも、何とか好きなひとに告白ができたらしい。ただし坂口くんの失敗を反省して、罰ゲーム扱いすることはやめたのだとか。当然です。


 おかげでフラグは立てないように、けれど罰ゲームにはならないように、言い回しを工夫し過ぎたせいで、遅れてきた中二病患者みたいになってしまったのだけれど、まあこれもご愛嬌ってヤツだよね。


 ちなみに、オンライン上でうちの両親に結婚への意気込みを語った坂口くんは、無事にお父さんの面接をクリアしていた。


「あのプレッシャーを考えたら、医学部受験の面接もどうにかできそうな気がする」

「そんなに?」


 受験前の模擬面接になったと思えばいいのか、高校生相手に何をやらかしているのかとお父さんを叱ればいいのか、悩むところだ。


「医師になって生活が安定するまでの間のプランニングについても、いろいろアドバイスをもらったんだ」

「何の話をしているの?」


 とりあえず目下の目標は、同じ大学に合格すること。嘘告白からのお付き合いが結婚に変わるまで、そう遠くはないのかもしれない。

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