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結果と恋と

 アルフレッドからの告白後、始めは多少ぎこちなさはあったもののアルフレッドの大人の対応によってすぐいつもの状態に戻った。


 アルフレッドがすぐ普段通りに接してくれて本当に助かった。ステラは恋愛と仕事をうまく両立出来るスキルなんて持ち合わせていないのである。


 今日は半年の成果をカージナル辺境伯にお披露目する日である。王都へ用事があったそうで領主様が別荘に来る日に結果をお伝えすることになったのだ。


「半年でこの結果なら、十分な成果をあげたと言えるのではないかと思っております。いかがでしょうか」


 ステラは広間で並ぶ10人の姿を見て満足していた。

 子どもたちの栄養状態は改善され、クワシオルコルの疑いがあった子も棒のように細い腕にポッコリお腹の異常な体形から、痩せ気味の子供レベルまで改善し、今では他の子どもと庭園を走り回れるくらいだ。本人からの話によると、どうやら孤児で劣悪な環境でご飯も満足に与えられず、かろうじて生きていたところを保護されたばかりだったようだ。無気力な状態からよくここまで回復したものだと、彼の生命力を褒め称えたい。


 キツネは飛びがちだった生理が毎月くるようになり、生理痛も軽くなったそうだ。貧血の疑いも、以前より良くなっているのは顔色を見ても明らかである。


 オババは今後孤児院でボランティアをしたいと希望しており、子供たちと遊ぶ体力もついて劇的に回復している。オジジもオババと一緒に孤児院でボランティアをするそうで、子供たちに読み書きを教えることになったようだ。活動量ではまだ改善の余地はあるが、自宅から孤児院まで通うことを考えれば今後もっと活動量の増加が見込めるので心配はないだろう。


 ママンは産後に十分な休養をしたことで、今はハツラツとしたお母さんである。ママンに抱っこされた赤ちゃんも、毎日母乳をたっぷりのんでムチムチに成長している。こんなにふっくら元気よく育った子は初めてだと感謝された。


 肥満のクマは途中から筋トレを追加したため、体重の減少は途中で止まったが肥満体型は脱却出来た。メタボの象徴ポッコリお腹は改善し、プロレスラーのような体形になっている。


 痩せていた男の子も、アルフレッドに触発され筋トレを自ら希望してトレーニングに励んだ。細マッチョに近いのは彼だと思う。


 最後にアルフレッドは、筋トレで増量後に減量したことで顔周りはもちろん全身から余分な贅肉が落ち、ちょいポチャから精悍なイケメンに進化した。どこの少女漫画のヒーローなのだろうか。あどけなく可愛かったアルフレッドはどこにいってしまったのか。


「ここまでとは」


 カージナル辺境伯は10人の姿を見て、特に実の息子の変化に驚きを隠せないようだ。


「食事を改善することで、これだけ体つきが変わってきます。食事とは飢えをしのぐだけではなく、体を作るために食事の内容が大切であることは明白です。領民の食事を見直し、健康状態を改善することで領民はもっと元気に日々を過ごせるようになり、生活の満足度も上がるでしょう。今後のカージナル領は領民によって豊かに発展していく素晴らしい領土となるでしょう」


「よくわかった。たった半年でもここまでの変化があるのであれば、希望者を募り養鶏、酪農の事業を始めよう」


「ありがとうございます。今後のカージナル領の発展をお祈りしております」


 肩の荷が下りた。やっと終わったという疲労感と、今後のカージナル領の人々の健康を守る大きな仕事をやり遂げた充実感。カージナル領の発展を祈るのは本心だ。


「9人はカージナル領へ連れて帰ろう。アルは今後学園も始まるからこの別宅に残るか?それとも寄宿舎に入るか?」


「このまま別宅に残って、ここから学園に通いたいと思います」


「そうだな。寄宿舎も煩わしいことも多いだろうから、それが良い」


 10人と使用人とステラがいつも過ごしていた半年間、お屋敷はいつも賑やかだった。アルフレッドが1人残るとなると、寂しく感じる。


「なんだか寂しくなりますわね」


「息子を案じてくれるのか。ステラさんなら、いつでも結婚してここに一緒に住んでもらってもいい。学園に在学している間に私が祖父にならないよう気を付けてもらえれば」


「なっ…‼ばっ父上!!」


 アルフレッドが面白いくらい動揺しているおかげで墓穴を掘らずにすんだ。


「今馬鹿と言おうとしたか?」


 カージナル辺境伯が険しい目でアルフレッドを見る。

 キツネが肩を震わせているのが視界に入った。絶対笑ってやがる。


「アルもステラさんも、もうすぐ結婚出来る年齢だ。領主として願わくば結ばれて欲しいが、親として二人に無理強いするつもりはない。将来についてはよく話し合っておきなさい」


「わかってるよ!!」


 顔を真っ赤にするアルフレッド。みんなの前で子供らしい反応は初めてではないだろうか。

 ステラはこのとき初めてカージナル辺境伯が無理強いするつもりがないことを知った。貴族の爵位からしても、カージナル家から嫁にこいと言われれば断れない。


 政略結婚になるのだろうと諦めていた。この世界でも恋とは無縁で一生を終えるのだと思っていた。

 もし恋をしていいのなら、家のことを考えなくてもいいのなら、私はどうしたらいいのだろう。恋なんて、どうやったら出来るのだろう。恋とはなんなのだろうと、頭にこびりついた。


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