エピローグ
ステラの卒業式の日、式典の後に学園のホールでパーティーが開かれた。婚約者を探すために12歳で行われるデビューもあるが、貴族の1人として正式な社交界デビューは学園の卒業をもって認定される。
「エスコートさせてくれる?」
「もちろん」
ステラはアルフレッドにエスコートされ、パーティー会場へ入る。青い染物のドレスに赤い宝石を散りばめたネックレスとイヤリング。エスコートするアルフレッドは髪をかき上げ、ピンクのピアスをつけているのがよく見える。
アルフレッドは17歳の青年となってステラより20㎝も身長が高くなり、並んでもおかしくならないよう、ヒールは相当な高さになっている。細マッチョを目指していた彼はどこに行ったのか、今では騎士のように立派な体格となり、軍服のようなデザインの正装がよく似合う。
ステラは発育の良い体つきだったが、16歳となって身長の伸びは止まったものの胸は急成長した。流行の胸元が開いたドレスを着ようものならアルフレッドが「俺の前以外は禁止だ」というので、今日のパーティーでは胸元は開いたデザインだが刺繍のレースで隠してある。若干透けているので「そんな煽情的なデザインはダメだ」と文句を言ってきたが、好みのデザインは譲れないのでレース有りか無しかで選んでもらった。
きらびやかな会場では、まず成人の挨拶を王へ行ったあとに関係の深い貴族へ挨拶へまわる。どの人に回らなければならないかは暗記済みだ。もしミスをしようものならアルフレッドに足を踏まれる。
挨拶周りが終わるまでは気を張っていたが、人の多さに疲れてしまった。
ステラの気疲れに気付いたアルフレッドが、バルコニーで少し休もうと移動を提案する。
開いているバルコニーに移り、ウエイターから飲み物をもらって夜風にあたった。
「お疲れ様」
「アルこそ、エスコートありがとう」
「俺はステラのデビューにふさわしい男になれたかな。初めてステラに好きだと伝えたときは、ステラは本当に可憐なお嬢様で、俺はぽっちゃりした田舎者だっただろう?」
「あら、ぽっちゃりしてた頃も愛らしかったですわ」
「本当?でも今の方が良い男でしょ」
「そうですわね」
「ステラは本当に綺麗に成長していくから、俺が見劣りするんじゃないかって気が気じゃなかったよ」
「そういえば、以前イライザさんがおっしゃってましたわ。相手のことがよく見えてしまうのは恋によって盲目になっているのですって」
「俺の目は盲目じゃないよ。本当にステラはどの女性よりも美しいから、自覚した方が良い。今日だって何人の男がステラを見ていたか」
「私より美しい女性なんて大勢いらっしゃいます。それは盲目というのでしょう。それにアルも多くの女性から視線を送られていたじゃありませんか。お互い様ですわ」
「他の女性なんてどうでもいいよ。俺が嫉妬深くて独占欲が強いのはわかってるだろ。ステラはどんどん綺麗に成長して、婚約が保留にされている間に他の男に盗られたらどうしようかと不安で仕方なかったんだ。いまのステラは俺に盲目になってくれている?」
「とっくの昔から、アル以外誰もかっこよくないんですの。皆様お芋に見えてしまって困りましたわ」
ふふふと穏やかに笑いあう。
「俺、もうすぐ死ぬんじゃないかって不安になるほど今が幸せだよ」
「死なれたら困りますわね。私のためにも長生きしていただかないと、これから家族になるのですから」
「そうだね。生涯愛することを誓うよ。ステラ、俺と結婚してくれますか?」
アルフレッドはステラの手を取り、片膝をついてステラを見上げた。
「もちろんですわ。私でよろしいんですの?」
「ステラがいいんだ」
アルフレッドは立ち上がってステラを抱き寄せる。
ステラの頬に手を当て、優しく口付けた。
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本編は最終回を迎えましたが、アルフレッド視点の番外編を掲載して、完結とさせていただきます。
どうぞ最後までお付き合いください。




