ブタのマスコット
「留学してすぐにステラ様がアルフレッド様から告白されていたという噂を聞きました。本来の物語であれば、アルフレッド様はわがまま令嬢との婚約は保留にしていて、財政のために愛のない結婚をするか悩まれているところから始まって、田舎ENDの攻略対象でした。ですが、噂ではステラ様が保留にしていて、あまりにもゲームと異なるステラ様のお姿を見て、転生者であることを確信しました。ゲームの知識がなかったのは想定外でしたが、知識がないからこそ物語を好転出来たのかもしれませんね」
「本来の私はどんなキャラクターですの?」
「わがままで、ピンク色のブタのマスコットになってグッズも販売されてましたので、愛されるライバルキャラといいますか、憎めない悪役令嬢と言いますか……」
あっ…(察し)。本来はボンレスハムのままわがまま令嬢のネタキャラになっていたのだろう。
「断罪される系でないだけ良かったですわ」
「あー、私が死ぬ前は転生ものと言えばそっちの方が主流でしたね。そして悪役令嬢に転生したけど物語を変えて主人公の方が人生めちゃくちゃになる話が多かったです」
「私はめちゃくちゃにするつもりはありませんわよ。裕福に穏やかに暮らしたいという願望はありますけど」
「ステラ様が同じようなお考えで安心しました。私も王子様ルートは務まる気がしなくて、穏やかな生活が送れそうな薬師か騎士か田舎のどれかにしようと思っておりましたので」
田舎ルートとは、アルフレッドのことではなかったか。
「イライザ様はアルフレッド様をお慕いしてますの?」
「あっ!!いえいえ!違います!誤解させて申し訳ありません。その中から攻略しつつ決めようかなと思っていたのは確かですが、お慕いしているわけではありません。それにステラ様へ告白するくらい好感度が上がっている状態でどうにかしようとは思ってません。あっ、そうだ。アルフレッド様のルートは気を抜くとすぐ好感度が下がって勝手に失恋ルートに入って僕は君が好きだったよって過去形で語り始めるので頑張ってください!」
ものすごく身に覚えがあった。アルフレッドから君は僕が好きではないだろうと話されたことを思い出したのである。あれは勝手に失恋ルートへ入りかけていたのか。しかし、なぜ持ち直したのだろうと軽く疑問に思ったが、考えたところでわからないのであきらめた。
アルフレッドはマリーからの報告で、ステラはアルフレッドが学園で他のご令嬢を好きになるかもしれないと不安で婚約はもう少し待って欲しいと聞き、脈ありだ!と持ち直したのである。脈ありだと思ったからこそ学園でステラだけを愛していることをアピールすればいけると思い、未来の妻だの、ギルバードには渡さないだの言えたのである。
「ちなみに続編では彼への告白と彼からの告白と1人の攻略キャラで2通りのENDがあったり、彼への告白に失敗したら他のキャラから彼からの告白ルートに入って俺にしろよって告白されたり、なかなかスチル集めが大変なんですよ」
ほがらかに笑って話してくれるが、難易度が高すぎやしないだろうか。
スチルを集めきれる気がしない。
「今のところ薬師か騎士ルートを楽しみつつ過ごそうと思っておりますが、せっかく大好きなゲームの世界に転生出来たので、ゲームの知識無双をして薬関係に就職してから普通に恋愛してもいいですからね。ステラ様が気になるルートがありましたら、攻略情報などお伝え出来ますよ」
「攻略情報は遠慮しますわ」
「そうですよね。あれだけアルフレッド様に愛されてたら好きになっちゃいますよね」
顔が熱くなるのを感じた。
「図星でしたか」
ニヤニヤするイライザ。
「自分ではよくわからないんですの。恋愛経験が乏しくて、好きって何なのかわからなくって。それに、すぐ婚約、結婚に繋がってしまうから不安で」
「簡単ですよ、ステラ様。ときめいてドキドキしたら、それは好きってことです。彼の良いところばかり目についてしまうなら、それは恋愛の盲目フィルターにかかってます。結婚を不安に思う気持ちはわかりますよ、私も前世は結婚して後悔したまま死んでしまったので。でも、結婚って結局ギャンブルじゃないですか。仕事の環境や子供が生まれて生活が変わったり、その時の状況に合わせて考え方だって変わってきます。自分も相手も、一生変わらない人間なんていないんですから。今はまだ若いから、不安も強いかもしれませんが、婚約して一緒にいて穏やかに過ごせるならそのまま結婚って、段階を踏んでステラ様のペースでアルフレッド様と歩まれてはいかがでしょうか」
「達観してますのね」
「一度結婚に失敗した記憶があるからかもしれません。失敗したからこそ強く思うのかもしれませんが、今度こそ幸せな恋がしたいし、好きな人と一緒に過ごしたいって自然な欲求なんだと思います」
「イライザさんに幸せな恋がおとずれるよう祈ってますわ」
「ふふっ。ありがとうございます!ステラ様とのろけ合戦が出来ることを祈ってます」
「のろけ合戦って…プフッ」
思わず噴き出したステラとアハハと大きな口で笑うイライザ、対照的な二人であった。
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