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佐賀のやばい嬢ちゃん

佐賀のやばい嬢ちゃんepisode.5 輝夜の贈り物

作者: 川里隼生

 ある初夏の日、誘拐立てこもり事件が発生した。佐賀県警はその犯人の逮捕賞金を最高八十万円と発表。賞金稼ぎの一人、新地しんち輝夜かぐやはすぐ現場へ駆けつけた。現場は犯人の自宅で、登校中だった無関係の小学生二人を誘拐し、身代金を要求している。


 他にも多くの賞金稼ぎたちが集まり、我先にと侵入を試みようとしている。輝夜は犯人の隙を見て裏口から潜り込み、犯人の足元に向けて銃を撃った。犯人の肩が一瞬大きく震え、現場に緊張が走る。一歩、二歩、徐々に輝夜が近づいても、犯人は震えることしかできなかった。

「捕まえた♪」

 少しふざけたような、輝夜の逮捕宣言が犯人の耳に伝わった。


 警察が犯人を連行し、賞金稼ぎたちも去っていった。人質の小学生二人のうち、背の低い方が輝夜に近づいて叫んだ。

「どうして助けたんだ! お前には関係ないじゃんか! 俺なんかここで死んだほうがよかったのに!」

 その子はCPDと呼ばれる難病を抱えていた。彼の皮膚は非常に脆く、健常者なら何でもない刺激でも出血してしまう恐れがある。


 その少年は、何か強い主張を瞳で発信していた。病と闘う運命を悲観する瞳だった。輝夜も鋭い目線で返し、こう言った。

「『死んだほうがいい』なんて言わないの。君だけじゃなくて、君の周りの人まで否定することになるんだから。今から七年くらい前なのかな。身体が引き裂かれる程の痛みに耐えてまで、あなたに生きてほしいって願った人がいるんでしょ?」


 輝夜の身体は完全なものではない。そのため幼少期に周囲から『自分とは違う存在』として見られ、輝夜もそういうものなのだと思って個人主義に生きてきた。だからこそ、犯罪者の賞金稼ぎという、犯罪者とさほど変わらない職業に就けているのかもしれない。輝夜は警察署で賞金の受け取りについて打ち合わせを済ませると、花屋に寄ってカーネーションを一輪買った。今日は母の日だ。

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