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3.居抜きってコスパ高いよね

「強豪じゃないわよ。確かに将棋は強いわ。でも、あれはただのクズよ」

そう苦虫を嚙み潰したような表情をする美人がこちらに歩いてくる。

「まぁ、あれは、ねぇ。将棋は強いんだけどね。色々と問題の人だよねぇ」

甚助先輩も困った顔をしている。どうやら椿姫先輩の相手というのはいわくつきの選手のようだ。


「あなたたちは入部希望者ね。私は宮ノみやのした 椿姫つばき。ようこそ、歓迎するわ」

「はいっ!よろしくおねg」

「いやいやいやいやいやいやいや。俺は付き添いで別に入部希望者じゃないし」


「えっ?」

「えっ?」

間髪いれず否定した俺を見て、そう声を上げたのは葵と甚助先輩。


「たっくん、私と将棋部に入ってくれないの?」

「なんか入部する気満々で入ってきた気がしたんだがなぁ」

「流石に気のせいだと思いますよ。俺、将棋にちっとも興味ないし」


「あら。聞き捨てならないセリフね」

そう言うのは椿姫先輩。美人なんだが、この人の言葉や目にはどうにも圧があるように感じる。

意思や芯の強さが由来のものだろうか。

「そう言われたってなにも変わらないですよ。将棋は面白いゲームだと思いますけど、部活でやるってイメージがないです」

「じゃあ貴方が部活でやるイメージのあった活動ってなんなのかしら」

「そりゃもうアイドル研究会ですよ!!」


間髪入れずに甚助先輩がツッコミを入れる。

「それはもう既にある団体じゃない?行ってみたらどうかな」

「あー…私たち実はさっき行ってきたんですよ」

葵が頭を抱えながら答える。

「えっ、そうなんだ。どうだったの?」

「イエッタイガーでファイボワイパーでした」

「えっ、なにそれは」


「そんなわけで、俺の目指していたアイドル研究会はもうないんですよ」

「なんのことかサッパリわからないのだけど」

頭を抱える椿姫先輩。しかし、すぐに彼女はこちらに真っすぐな視線を向けてくる。

「でも、それと将棋に興味が湧かないっていうのは別の問題じゃないかしら」

「どういうことですか?」


俺が椿姫先輩にそう問いかけると、先輩は少し考える素振りをしたが、すぐに話しはじめた。

「ここは新入部員が欲しい。経験者であることに越したことはないけど、初心者でも『ホネ』があれば歓迎したいわ」

「俺を勧誘したいってことですか」

「そうでもあるんだけど、それだと条件が対等じゃないわよね」

「そうですね。俺に旨みがありません」


椿姫先輩はまた少し考える素振りをし、また口を開く。

「わかったわ。それじゃ将棋の駒落ち…ハンデ戦をしましょう。でも普通のハンデ戦では不公平だから、貴方との力差以上のハンデをつけてあげる」

「なるほどですね。先輩が勝ったら俺が入部するってことで。逆に俺が勝ったらどうなりますか?」



「ここをアイドル研究部にしていいわ。もちろん貴方が部長。部の方針や活動も貴方が決めていい」


その発言にどよめく葵と甚助先輩。

「えっ!?ちょっ!?椿姫!?!?」

「ちょっと先輩!なに言ってるんですか!?」


「私はいつだって本気よ。条件は対等以下、でも負けるつもりはないから安心して欲しい」

「いや、安心ったってなぁ…確かに椿姫の力はよく知っているけど、万が一でここがアイドル研究部になることも…」

「あぁ…私の幼馴染がアイドル研究会の舎弟を作ったかと思ったら今度は将棋部をアイドル研究部にしようとしている…」



あれよあれよの間に対局の準備が進んでいく。

パイプ椅子に座り、長机に鎮座する将棋盤の前につく。

「貴方、将棋はどのくらい指せるの?駒の動かし方くらいはわかるわよね?」

「昔、祖父に教わりました。棒銀と矢倉囲いくらいならわかります」

「だいたい7、8級くらいってところかしら。それなら8枚落ち※くらいが妥当なんだけど、今回は10枚落ちで指してあげる」


※歩、王将、金将、銀将のみでゲームを行うこと。10枚落ちは更にここから銀将がなくなる。


先輩の陣地から飛車、角、香車、桂馬、銀将がなくなる。圧倒的なボードアドバンテージを得たが、相手は「4人」で成果を出した大学の選手の1人だ。

その事実が、将棋についてはほとんど素人の俺に圧し掛かる。


「それでははじめましょうか。私が先手よ。それじゃ」


「「お願いします」」

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