魂49◎物語の長さとアイディアの関係
主に長編をだらだら書いていますが、企画に誘われたり公募に出したりするときは短編を書くこともあります。どちらも書けないことはないんですが、特に短編はアイディアが出てこないとかなり辛い。インパクト勝負な所がありまして。私、苦手なんですよね。
プロットは作成します。ある程度ですが。大体の筋書きや年表、細かい設定メモのようなものを次々と継ぎ足して物語の筋にし、誰の視点から切り出すと一番面白いのかを考えて長編を書いていきます。主人公が誰かによって面白ささえ左右されるので、長編を書くときは神経使いますね。書き始めるまでが長い。ある程度固まって書き始めたとしても、最終的に納得のいく着地点に辿り着くまで思うように登場人物の台詞が出てこなかったり動かなかったりで。道筋立ててもエピソードの追加追加で結局頭から煙が出てくるくらい何パターンもの展開を考えて軌道修正していく作業、気が遠いのに毎回やらかしてしまうのです。
でもまあ、大体何文字くらいでこの展開になっていれば文字数制限のこのくらいまでには物語が決着するというのは何となく見えますので、まるっきりの手探りというわけでもありません。書き慣れてくれば大体このくらいの話の規模ならこの枚数、文字数で収まるはずっての、わかるもんだと思うんです。
毎回当たりを付けて何とか文字数制限をクリアしてるんですけど、とにかく困るのは文字数が少ない場合です。一万字だとこれくらい、五千字だとこれくらいっていうのは何となくわかるようになってきたのですがね。二五〇〇字ってのがよくわかりませんで。今、困っているのです。
長編ってのは物語の一から十までじっくり書けるじゃないですか。自分の書きたいこと書きたいものをどんどん詰め込んで、やりたい放題やれる。そこがいいんです。
人間関係から人となり、過去の話や秘密まで、なんでもかんでも詰め込んで、最終的にここに繋がってくるのかって思わせたら勝ちですね。
どこでどう盛り上げようかと考えてる時間も好きです。いくつかの無関係の話題をちりばめ自分で図にして確かめてみたり、伏線を一つずつ回収していったり。書いている間ずっと楽しいじゃないですか。
ところがですよ、短編掌編はそうはいかない。全部詰め込めない。
どこからどう切り取るか、そこが問題なんです。
いらない脚色はしない。必要なことは簡潔にまとめる、最後にこうきたかと思わせるようなオチを付ける。
……特に、オチのところがね。何ともプレッシャーなのです。
長い話の一部を切り取ったり、あらすじとしてまとめたようなものは正直短編や掌編とは言えないと思うのです。その形式でないとダメだと思わせるような書き方じゃないと読者は納得しない。
例えば授業の風景を事細かに記すような長編はいらないと思うし、オチ一つのためにやたらと前書き部分の長い短編なんて読みたくないはず。そう考えていくと、一体どういう話が短編掌編向きなのか、悩むわけです。
悩んでないで書けばいいじゃんと言われたらそれまでなんですが、書き慣れていないのでネタ出しから苦労するんですよ。さて、どっからアイディアを持ってこようか。今までお蔵入りになっていた、くだらない短編用のアイディアを何とかまとめてみようかとも思いましたが、どう考えてもオチが弱い。最後に「プッ」でもいいから、口元が緩むような話を作りたいと、一人悶々と考えに考えました。
長編にする必要のないアイディアのような、でも一つの話として成立させるような。
……難しいですね。
「長いのが書けるんだから、短いのもいけるでしょ」
そんなことはありません! 元々物語の作り方そのものが違うのです。上記のように切り取り型やあらすじ型を避けるためには、根本からネタ作りを変えなくてはならない。短ければいいのだったら、誰でも書けます。問題はそれが物語として成立し、しっかりオチるかどうかなのですよ。
文字数が短くなればなるほど、物語かどうかを認識させることがまず難しくなります。起承転結のある物語にしなければ、ただの文字。何文字書いてあっても、何の感動もありません。限られた文字数の中で、如何に物語を作っていくのか、真価が問われるわけですね。
ええ、全く執筆は進みません。アイディアを何度も出しては消し、出しては消しの繰り返しです。
ホント、短いってのは難しいんですよ。なんで小説や漫画の新人賞原稿募集に短編が多いのか考えてみればわかるはず。短い中で如何にまとめ、必要なことを訴えているのか、秤にかけてるんですよ。ただ長いだけなら誰でも書けますからね。本当の意味の実力ってのは、短編の書き方でわかると言っても過言ではないわけです。
締切まであと一週間。何とかしてアイディアをまとめ、面白かったと言わせなければなりません。くだらないプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、今日も悶々とアイディアを練ります。
こういうエッセイ書いて首占めている手前、納得できるものを送り出したいのです。ええ、誰も期待はしていないと思いますけどね。
締切間近の5分大祭特設会場はこちら↓
http://hp.did.ne.jp/5huntaisai/
次回で最後です。