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魂4◎ユニーク・PV――即バック率を考える

 お祭りやイベントに参加し、その熱気や雰囲気に飲み込まれる、なんてことは誰だって経験があると思います。伝統行事だとか世界中が熱狂なんてフレーズがあると、それだけで興奮するものですよね。小説や漫画、映画やドラマで感動して涙する、ハラハラドキドキするってことも、日常茶飯事。だから、自分の書いた話だって誰かが感銘を受けてるはずって、思いませんか。

 実際その作品に相手を引き込めたかどうかっていうのは、感想やメッセージ、WEB拍手などの目に見えた反応がなければわかりませんが、声になっていない声だってきっとあるはずです。それをどうにかして実感したい! そんなときに便利なのが、アクセス解析です。

 最近のアクセス解析は大変優れていて、モノによってはどこのページにどのくらいの時間いて、どこからそのページに辿り着いたのかまでしらべてくれます。が、そこまで追跡しなくても、せめて訪問者数ユニークとページビュー(PV)がわかれば、自分の作品にどれほど読者が食いついてくれたのか、わかるのではないでしょうか。

 このエッセイを掲載している小説投稿サイト「小説家になろう」では、作者用のページで作品TOPへのアクセス数(訪問者数)とPVを知ることが出来ます。各話毎のユニークアクセス数も折れ線グラフで知ることが出来る(PC版のみ)のが更に嬉しい。自作品への読者の食いつき方が手に取るようにわかるわけです。

 私は、自分が書く話はマニアックなんだと思っています。展開も暗いし、救いようがないし、終いには「鬱になりそう」と言われたことも多々。そんな話はさすがにグラフがぐぐっと右下方向に急降下しますけど、モノによっては緩い右肩下がりで済んでくれたり、時には激しい乱高下をするモノも。その差は何だろう、何が人を引きつけたり、引き離したりするのだろうと、たびたび考えることがあるのです。

 エッセイや一話完結の短編連作なんかだと、気になる話題や話だけ掻い摘んで読まれる方もいらっしゃるようでなかなかPVが安定しませんけど、短い連載モノや短期集中連載モノはだらだらと長期連載を続けているモノよりはきちんと読まれる傾向にあるようです。まぁこれは私の作品に限ることなのであまり参考になさいませんように。


 いつだったか、某チャットでバック率の話になりました。バック率とは「即バック」、どの話で読者がその話を見放したか、その比率です。私がよく書くSFジャンルでは特にこのバック率という奴が深刻な問題なのです。

 SFはその世界観、テクノロジーを伝えるために、どうしても文字数を費やさなければならない分野です。たとえ面白かろうとも、その説明文の書き方如何で読者を突き放してしまう恐れもある、なかなか難しいジャンルです。しかし、説明を一切なしにしてしまうと読者を置き去りにしてしまい、「作者だけが理解している」恐ろしい状態になってしまう。これを上手く解決しない限り、長編モノほど即バック率が上がってしまいます。

 バック率を上げず、かつ難解な解説をなるべくわかりやすい言葉に代えて読みやすくするにはどうしたらよいか。SFに限らず、社会派、ハイファンタジーなど、独自の世界観や専門性を必要とする分野では特に課題となってくる部分でしょう。自分の作品を顧みても、やはり難しい説明を多くしている話のあとはグンと読者数が減ります。その減り方が著しいということは、読者にとって苦痛なほど読みにくい話であると言うことなのでしょうね。

 こうした状況を打破すべく、長編SFを書き直していますがなかなか進みません。何というか、自分の中でのプロット進行と現実に書かねばならぬシーン、説明などのバランスが難しすぎると痛感してしまうのです。どこまで削除すれば読みやすいか、どこまでなら書き込み可能か、練っても練っても練り足りない。

 自分でも「この辺りから話が難しくなった」と思っている箇所のPVを見ると、恥ずかしいくらい読者が離れていますし、何度も読み返してくださる方の少ないこと。とりあえず「目を通してくださった」らしき足跡は、むしろ感謝すべきなのでしょうけども。


 そうした中でふと過去作品のバック率を確認しますと、難しい説明を少なくした作品ほどバック率の低いことがわかりました。WEBでは特に難しい話や文字の詰まりすぎている文章は読まれにくいと聞いたことがあります。まさにその通り、深刻さのたいしてない話ほど手軽に読まれているようです。更に、展開の早さも重要みたいですね。そして、丁寧な描写。それでいて説明不足であったり、都合のよい展開になっていない話の方が、読まれる確率は高い――というのがわかります。

 しかし、書きたいモノはそうした手頃な作品ではなくて、重厚で渋みのある、私にしか書けないであろう真っ黒な話だったりするわけで。そうなってくるとバック率だの読者数だの気にせず、好きなように気の向くまま書いてしまいます。「さて、これで果たして面白いと読んでくださる方がいらっしゃるのだろうか」と不安になるまでに。筆が乗って作品にのめり込んでしまったモノは、案外それでもバック率が低めのようです。かといって、何でも好きなように書けばいいというわけではないのも事実。作者側の興奮具合(作品への熱の入れ方)というのは文章を通じて読者に確実に伝わります。戦闘シーンや駆け引きの場面など、臨場感溢れる箇所は読者離れを食い止めることは出来ますが、その前後で書き方を誤るとそこまで読者がついてきてくれません。「見せ場」まで読者を離さない魅力的な導入部、弛みのない起伏ある展開があるか、そこが最も重要なんですよね。


 読者数を増やしたい、目立ちたいだけなら、最近流行の展開や目を引くようなタイトル・あらすじで攻め、エロ描写やコメディをがんがん入れりゃいいのです。そうすれば否が応でもアクセス数はうなぎのぼり。作品への訪問者数だけで競えというなら、それなりの筆力があればアクセスランキング上位までいけるでしょう。けど、そんなことをして読者を得たところで何が面白いのか。ランキング上位の称号なんて、どうでもいい。大切なのは、最後まで飽きずに読んでくださる読者様の存在ではないでしょうか。

 どんなセンセーショナルな作品でも、掴みだけで終わってしまう、話題性だけで終わってしまうのでは意味がない。アクセス数なんて、荒らしや悪意のある晒しが原因でも増えるのです。ましてや作品の善し悪しの指標になんてなり得ません。また、宣伝方法、交流の幅によっても変わってくる実に不安定なものです。

 アクセス数の高い作品が果たして良作でしょうか。その作品は最後まで読まれているでしょうか。果たして何割の方が読了なさいましたでしょうか。

 宣伝が上手くいったとしても、訪問者数が上がったとしても、途中で読むのを放棄されたんでは意味がありませんよね。最後まで楽しんで欲しいと願うのが作者の共通の願いです。数字に踊らされず、信念を曲げず、作品を仕上げることの大切さを今一度考えて欲しいと思います。

 いつまでもだらだらと書き続けていませんか。起承転結、山場、説明過多・不足についてはいかがでしょう。私も人のことを言えるほど立派なモノを書いているわけではありませんけれど、せめて読んだ人の心に何かしら残せるように、バック率の少ない作品作りを心がけていきたいと思います。

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