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魂36◎指示語、接続語との戦い

 高校の国語の先生の口癖、どんなだったか忘れてしまったんですがやたらと同じ言い回しをなさる方で、授業中にその言い回しが何回出てくるのか「正」の字を書いて数えていたものです。何度も何度も、多分本人はわかっていてやめられないんでしょうね。口からつい出てしまっていたのかも。いけ好かない先生だったんですけど、卒業時まで楽しませていただきました。

 同じ言葉を何度も繰り返すというのは、ある意味呪詛にかけられているかのような変な錯覚を起こします。くどくなる。その言葉だけがずっと引っかかって、本題までたどり着けなくなる。これはとても辛いことです。

 ところが、自分の作品を読み直していたら、私も人のこと言えんなぁと涙が出てきたんです。何度書き直しても出てくる「言葉の重複」「指示語の連続」。読み辛い。書き直そうか迷いましたが、何度直したって後から後から粗が見えてくるんですから、諦めて前に進むことにしました。悔しいんですけどね。仕方がないです。

 何度も読み直しているうちに、自分の文章の欠点が見えてきました。指示語の多さです。

 とにかく何度も「これ」「それ」「あれ」が出てくるわけです。でもって、仕草の表し方も単調。あー、これは途中で飽きますわ。純粋に自分の作品を読者として見つめ直したら思いました。これはまずい。実にまずい。

 おまけに「しかし」「だが」の多用。これも良くないのです。前の分を否定して次の文章に繋ぐこの部類の接続詞は、多用しすぎるとかなり読み辛い。

 今から直せるなら、直せるところは直してしまった方がいい。そう思い始めました。


 秋に開催したSF企画前後に、他の方の作品をたくさん読む機会に恵まれまして、多分そうしたことも影響しているんだと思います。人の振り見て我が振り直せって言いますでしょ。感想や指摘事項書いてる場合じゃないんです。私自身が気をつけなければならないこともたくさん浮かび上がってくる。自分以外の作品を読んだことで、より明確になってきたんです。

 私は自分の文章の言い回しに自信がないときは、なるべく声に出して読むようにしています。

 文豪の作品や童話絵本はどうして読みやすいのか考えてみたら、やっぱ言い回しが上手なんですよ。スラスラと引っかかりなく読むためには余計な表現は削ることも必要ですからね。ただ足せば描写になる、プラスにというのは浅はかなんです。「声に出して読みたい日本語」とかいう本がありましたけど、やっぱ文章は声に出してなんぼですよ。自分の声でスラスラ読めないものが、他人が突っかかりなく読めるはずない。自信がなくなったらとにかく読め、読んで納得できるまで練り直せ。そういうスタンスで推敲するようにしています。

 声に出していると、不思議なことに何度も自分の唇を動かしているせいでしょうか、言葉の重複が気になり始めます。「また同じこと書いてる」とその言葉を消して、改めて周囲を見回すとあちらこちらに同じ言葉が散在している。無意識に書き殴った文章であればあるほど同じ言葉の繰り返し。泣きたくなりますね。

 例えば「うなずく」がしょっちゅう出てくる。「相づちを打った」「理解した」「首を縦に振った」色々いい方があるのに、なんで「うなづいて」ばかりいるのかってことです。他にも書き方があるだろうと。同じことが文末や接続詞にも言えて、「しかし」「だが」「そして」何度も連続してしまうともう、くどくてくどくて。何故にこんな書き方しかできなかったのかと一人反省会を始めてしまいます。


 うろ覚えなんですが、「なるべく接続詞や指示語を使わずに書く」と文章が締まって見えると聞いたことがあります。

 同じ言い方を避けるために指示語を使うのは決して悪いことではないのです。問題はその頻度。気づかずに「あれ」「それ」多用することで、結局何を指しているのかわからなくなってしまう可能性があるんです。

 以前、「魂8◎文末と言い回しに対する執着心」でも語ったのですが、文末の「~た」の連続ほど辛いものはない。それに似ています。話を堰き止めちゃうんですよね。「今いいところだったのに、この文章で台無しだよ!」とか言われることを想像してみてください。最悪ですよ。物語に集中できない読者、集中してもらえない作者、どちらにとってもいいことなんて何もない。これは由々しき事態です。

 読みやすい文章ってのはどんなだって具体的に追求するのは学者さんにおまかせします。だって、明確な答えなんて素人に出せない。だけど、より読みやすい文章になるように努力することは、モノカキには出来るはず。自分の欠点、他人の欠点、そして長所ももちろんですが、何でもかんでも取り入れて、読みやすさを追求していく。推敲には必要なことです。

 表現の見直しだけが推敲じゃない。どれだけ読みやすくして物語にのめり込んでもらうかということ。

 文章の書き方で読むスピードを自在に操ることが出来るのが、映像作品とは決定的に違う所じゃないですか。音や画像がなくても臨場感を味わえる。それは文章を脳内でしっかりと画像や感覚に置き換えてもらえるからですよね。読者の想像力の広がりを手助けするためには、やっぱり文章の読みやすさ。それに敵うものはないように思います。例え凝り固まった表現、奇抜な表現をしていたとしても、童話のようにあっさりとした易しい文章で綴られたものより脳内で画像に変換できなかったら意味がない。読みやすさが想像を膨らます手伝いをしてくれているからこそ、童話は好かれるんだと思うんですよ。私論ですけど。凝った表現が出来るようになる前に、読みやすい文章を書く。そうしてしっかりと読者の心を掴むことが出来てからでも、遅くはないんじゃないかなと。

「全然難しい言葉は使ってないけど、心に染みた」って言われたい。だって、難しい言葉なんてわからないし。難しい言葉を使おうとするからやたらと指示語や接続語が増えるのかも知れませんしね。「読みやすいから作品の世界に浸れました」なんて言われたら、作者冥利に尽きますと涙流してしまいますよ。

 私には学も技術もないのでね、せめて読みやすい文章を書けるようになりたいと思って執筆を続けています。書いているのが皆様とっかかり難くて敷居が高いと言われる(似非)SFですので、この辺りも考慮して。「難しくない、読みやすいからスッと読めちゃうSF」なんていうのが書けたらいいかなと思っているわけです。

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