魂28◎企画と感想・レビューのあり方を考える
お久しぶりです。
また毎週末お付き合いください。
長くご無沙汰しておりました。
SF企画も無事終了し、今は後片付けに次の企画の執筆、その他色々作業に追われております。夏の日にこちらのエッセイ連載を休止して以降、様々ありまして、そのことを一つずつエッセイにしたためようかと思います。
私は小説の競作企画というヤツが結構好きです。自分で企画を立ち上げるくらいなんですから、それは言わずもがな、ですね。
この企画というものは時に主催者をも翻弄します。それなりにきちっと管理していなければ管理態勢を叩かれます。その企画に出された作品の質も、普段の連載や投稿作品より高いものを求められてしまいます。わざわざ「企画」という名目でたくさんの人の興味を惹き付けた上でのことですから、ある程度は仕方のないことだと感じていたのです。
WEB小説家にとって、企画とは自分の実力を測るところであると同時に、こんな作家もいるんだよと自分を知ってもらうための機会として非常に大切です。その二つの比重は人それぞれでしょうけども、誰しも内に秘めていることではないでしょうか。ですから、売名行為ととる人もいますし、自分の実力をどの程度だと思っているのかと罵る人が出てくるのも頷けます。ですが、私としては素直に企画というものを楽しんで欲しいと思って過去二回、SF小説の競作企画を主催しました。
しかし、企画というのは先に述べたように、主催者の手からいつの間にか離れて独り立ちしてしまう習性を持っているのかも知れません。私の思惑とは違う捉え方をなさる参加者、読者、傍観者は少なからずとも存在します。その舵を上手く取っていくことは必要ですが、主催一人ではどうにもならないことも出てしまうものです。
私があまりこの点について語りすぎれば、次回企画には参加したくないと思われる方ももしかしたら出てくるかもしれません。もし、自由に何でも好き勝手出来る、例えそれが相手を傷つけることになってもと思われている方がいらっしゃるならば、以下の文章をお読みになるのはおやめください。
もし、企画という不特定多数の目が監視する場に今後も参加していこうと思っている意欲的な方、前向きな方であれば、出来るだけお読みいただきたいです。
この問題は実にシビアで、時に人を傷つけ、憤慨させます。
それでも、誰かが口を開いていかなければ、今後も発生する問題ではないだろうかと。これは私の問題提起に過ぎず、それぞれ皆さんが結論を導き出して欲しい事項でもあります。
ですから、断定的ないい方は避けようと思います。私の書いていることはあくまで私個人の感想であり、決して強制決定されたものではないのですから。
小説の企画ものには大抵サイトのどこかに感想用の掲示板というものが存在します。もしくは、それぞれの小説の感想・レビュー欄に、参加者や読者がそれぞれ読了後の感想を寄せるのが常ですね。
みんなが集まって一つのテーマについて色々書くわけですから、そのテーマに興味のある様々な人間が書き込みをしていきます。それがどのような種類のものにせよ、感想というものは個人の受け取り方を形にしたものですから、否定は出来ません。そのスタンスは今も変わりません。
ただ、感想やレビューといった、人目に触れるとわかっている場所に書き込む文章をどれくらい推敲しているのだろうかと首を捻ってしまうことがあります。その言葉によって、どれくらい励まし喜ばせるか、落ち込ませ地に堕とすか。前者はもちろん大歓迎ですけど、後者の場合は特に気を遣わねばなりません。それを、どのくらい認識しているかということについて、私は悩みました。
感想は、ただ褒めればいい詰ればいいというものではないですよね。
どの辺がどう心に響いたのか、自分にとっては受け容れられなかったのか、そうした点を詳しく書いて、次に読む人や作者の参考になればと足跡残していくものだと思っていました。ですから、私は良い点と悪い点をそれぞれ挙げて、こうなったらもっとよかったという具体的事例も添えて書くようにしています。私がそうして欲しいと思っているからでもあります。だって、ただ「面白い」「つまらない」だけではどうお返事したらいいものか迷ってしまうんです。
自分がして欲しい、してもらったら嬉しいことを自分もする。それは、人間社会生きていく上で基本的なことであって、小学生でも幼稚園児でも知っているごく当たり前のことです。ですよね。
だけれども、それが出来ない人がいる。
とにかく思ったことをどんどん積み重ね、言葉の刃にして相手を深く傷つける人がいる。例えそれが本音であったとしても、そこまで言うべきか否か迷わないのかと。
辛口レビューと誹謗中傷の境目について、実際かなり悩みました。もし私が全くの部外者であれば、やはり匿名の方から指摘のあったとおり、誹謗中傷と決めつけていたかも知れません。しかし、その方々のおっしゃっていることは決して間違いではない、的を射ていないわけではない。どこまでが許されるのか。そのギリギリのところで私は追い詰められていました。
企画サイトには「誹謗中傷は削除します」と書きましたけど、それらの書込は果たして該当するのか。
参加者のレベルは実に様々で、まるっきりの初心者から公募にガンガン出しておられる方、そうでなくてもセミプロ並みの実力のある方までいらっしゃいました。厳しい意見が悪いというわけではなく、その書き方に問題があるのではなかったか。
難しい問題です。
私は残念ながら面と向かって指摘するような力を備えてはいませんでした。
一つの辛口レビューを削除することは、その他の辛口レビューをも削除するということ。ガイドラインがはっきりしない問題だけに、どこまで許すかなんて私には決められるはずありません。
悪意による書込か、そうでないか。どうやって判断したらよいのでしょう。
辛口レビューは、時に必要です。甘口ばかりで本筋を見てないレビューがたくさん並ぶよりは、ぴりっとスパイス効かせそれでいてどこか優しさを漂わせるレビューが混じってた方が締まるからです。だけど、度が過ぎてはいけない。入れすぎたスパイスは凶器でしかありません。優しさを確実に感じる程度でなければならないと私は思います。
スパイスの加減はある程度経験を積まなければ上手になりません。それには相手の好みを測ることも必要になってきます。文章の筋、物語の組み立て方から作者を想像し、この人はどんな感想を待っているだろうかと想像を膨らませます。その上で、自分が今相手に伝えることの出来る最高の感想を送る。正直、私は一つの作品に感想を書くのに一時間近く時間を設けることもあります。どうしたらいいのか何度も推敲しああでもないこうでもないと頭をぐしゃぐしゃにしながら書くのです。
もちろん企画ですから、出来るだけたくさんの作品を読んで感想を付けることも大切です。そのため、推敲が半端になってしまうこともあるでしょう。それでも、優しい気持ちで書いていれば「貰って嬉しい感想」になるのでは。
感想というのは贈り物だと思います。
今はわからなくても、いずれ身に染みてくる手紙のように、いつか役立つモノでありたい。
一人のモノカキとして感想を送るならばなおさら、感想を貰う行為の大切さがわかるはず。
重ねて書きますけども、厳しい感想が決して悪いというわけではないのです。厳しい中に優しさを含ませてください。送った感想やレビューが原因で傷ついて、優れたモノカキの才能を一つ摘み取ってしまった、などということのないように。
また来年、もしかしたら企画を催すかもしれません。私自身も次々企画に参加する予定でいます。
『小説競作企画』というお祭りの場で、誰かが傷つくなんて悲しいと思いませんか。
もし、何か思い当たる節があるならば、一度振り返って欲しいなと私は遠くから願っています。