魂27◎企業戦略と創作
娘とプリキュアを毎週観ています。最初は三人でスタートした、フレッシュプリキュアですが、どうやら人数はもっと増えるとのこと。つい先日、四人目が登場しました。
四人目が誰かという話になったとき、うちの娘たちはプリキュアのダンスの師匠に違いないと言い出しました。徐々にシルエットが明らかになり、新プリキュアの髪の毛のピンク色を観たときに、それが確信に変わったようで興奮していました。……が、そんな娘たちのそばで私は一人、「せつなだよ」と言い続けます。「せつな」というのは、プリキュアの敵の一人が彼女らに近づくために使用した名前です。「敵がプリキュアになるわけないじゃん」子供たちの無垢な考えに私が敢えて反論すると、「何でそんなこと言うの」と言いかえされます。
「その方が面白いからだよ。ママがプリキュアを作る人ならそうするよ」
見事当たり、尊敬の眼差しを受けたのは言うまでもなく。
日曜朝の子供向け番組には実はいくつか決まったパターンがあり、それが季節や時期を観見極めて展開されていることをご存じでしょうか。これは私がどこから得た情報でもなく、勝手に分析したものです。ので、鵜呑みになさらないようにお願いします。
番組スタートが、二月前後です。なぜ四月の新学期、番組改編時でなく二月なのか。実は二月に開始させれば、三月の入学進級グッズ準備に間に合うのです。わざと番組開始を前倒しさせることで、需要を満たすわけですね。四月にスタートさせてしまうと、全く興味のない番組のグッズを持たされてしまうかも知れない。子供の中でのリスクもこうして軽減できます。
アニメや特撮は、特に関連商品の売り上げを伸ばすためにきちんと番組編成を考えてありますよね。そういうのにはまってしまうと、それこそテレビに踊らされているような状況に陥りますから、きちんと視聴者側もその辺賢く乗り切らなければなりません。
開始から緩かった話が、大体五、六月になると急展開してきます。最初の中ボス戦がこの辺であります。開始からすでに四、五ヶ月経っていますので、引き締める必要があるのと、ここから更に飛躍させるための足がかりになってきます。
中ボス戦前後に、必ずと言っていいほど、昨今の戦隊ものなどは新しい仲間が増えます。何故か。目前に迫る夏休み対策のためだと思われます。夏休みになれば家にいる時間も長くなり、またおもちゃを買ってもらう絶好の機会ですね。帰省の折や親の休みにショッピングセンターに。その時に、シリーズ最新のおもちゃを手にとってもらうため、丁度この時期に新しい新商品が出せればおもちゃメーカーにとっても嬉しいはず。そこで、新しい仲間や力を増やすのではないでしょうか。
プリキュアの変身グッズ、戦隊の超合体ロボ、変身携帯や武器なんかは、番組開始直後にばっと出してしまうじゃないですか。買ってもらえた子は、丁度この時期、夏休み前にはもう飽きてしまうはずです。新しいのが欲しいと思っていた矢先に新しいおもちゃが増えれば、すぐにでも手に入れたいと思いますよね。
夏休みに映画作品を公開するものも現れました。観客動員の観点からしても、夏休み公開というだけで格好の客引きになります。映画作品関連グッズも売れます。――では、夏休み後や秋に映画公開する場合のメリットは。これはもちろん、その後のクリスマス商戦へと繋がっていくはず。子供たちの熱気がさめやらぬ間に次々と新しいものを追加で出せば、売れるんですね。
そして、最終回が近づけば、更に物語の緊張度が増し、家に揃ったグッズやおもちゃ一式が番組の中で大活躍。子供たちは大満足です。そのころはというと、丁度正月ですね。お正月商戦に巻き込まれます。あと少しで番組も終わるのに、今番組で活躍している武器やロボが欲しいと子供は思ってしまうわけです。
次々とやってくるイベントと上手く絡ませた関連商品販売、話の展開は流石プロのなせる技だと思います。関連商品を売るための話であり、番組である。商売ですから当然です。
企業側のこうした戦略に気がつかず、子供に振り回されるままおもちゃやグッズを買い与えるような親にはなりたくないですからね。不況ですし。何でも節約しなきゃならないのに。我が子にさえ、「企業戦略だ、バ○○イに踊らされるな!」と教える私らもどうなのと言われるかも知れませんけど。
クリスマスプレゼントの用意をしたかと去年十二月のある日、知り合いのお母さんに聞かれたときのこと。プリキュア一色になってしまったと嘆くその人に、思わず「二月で番組終わるのにプリキュアものは買えませんよ」と言うと、何でそんなことがわかるのと驚かれました。案外普通の主婦は知らんのだなと。だけど、毎年のことですから「知らない」なんて言ってられないですよ。次々におもちゃ買えるような贅沢な暮らしは出来ないので、如何にして子供を納得させ、代替商品に魅力を感じさせるかということに頭を使わなくては。
以前も書いた気がするんですが、このようなある程度決まった、いわゆる「テンプレートにはまった」作品でありながらも毎回子供たちの興味を引いて離さないのは、それでいてそこに揺るぎないオリジナリティがあるからではないでしょうか。王道ワンパターンでもなおかつ愛される作品というのは、いざ作ろうとすると簡単なようで案外難しいものです。
しかしながら決められた事柄を取り入れて書く、ストーリーを考えることは、モノカキを続ける上ではなかなかよい修行になると思います。お題小説(決められた題材で書く小説)と呼ばれるものがその一つ。枠にきちんとはまりながら自分にしかないものを見せつける。やってみると、頭の回転率は自由に書けといわれたときより数段上がるはずです。
お題とまでは行かないまでも、例えば競作企画(同じテーマで書かれる小説やマンガ、イラストなどの企画)などに参加してみたらいいかもしれませんね。何を書いたらいいかわからないけど書いてみたい人も、こういうのに参加すると、自分の知らない可能性に気づくこともあるようです。
少年漫画原作のアニメなどにはない、この決まったパターンで展開される日曜朝の番組群。選り好みし観ない方も大勢いらっしゃると思いますが、話作りをする上で参考になる要素もたくさん入っています。三〇分の中での起承転結、季節ごとに必ずクリアしなければならないイベント、ストーリー全体の起伏バランス等々。騙されたものだと思って、モノカキ視点からご覧になってみては如何でしょうか。