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魂26◎再構築の苦悩

 小説を一から考えるのと、ある程度書き溜めたもしくは完成済みの作品の書き直しをするのと、どちらが楽か。……なんて、くだらない壁にぶち当たっています。どっちにしたって自分の話なんだから、好きにすればいいじゃないと言われたらその通りです。

 半端に放置している話が多すぎて、せっかくだもん、一つくらい真面目に完成させようと、コツコツ書き直しなどしています。元ネタは完結してるからきっとこっちも完結させられるはずだ思っていたのですが、書いているうちにどんどん付け足し付け足し、気がつくとかなりの文字数になりそうです。

 元々土台が出来ているので、そんなに難しいはずはないと思って始めたこの書き直し作業ですが、案外大変。どの辺が大変なのかと言いますと、一言では言い表せないくらい大変だったりするんですよ。


 最初に、語彙の壁にぶち当たりました。

 私がその話を最初に考えたのは今から十三年ほど前のことです。まだまだ未成年の私は、たくさんの言葉をひねり出す術を持っていませんでした。何度も出てくる同じ表現や拙い台詞回しにがっかりし、これではいけないと、やっていること喋っている台詞の意味を変えずに全ての文章を書き直すという作業を強いられることになります。

 仕草を追加したり、わかりやすい言葉に代えたり。人物の性格を修正し、関係図を頭の中で整理して今までなかったシーンを追加してみたり。たいしたことなさそうに聞こえますが、そんなことありません。読み直しているうちに粗は見えるしやめたくなるし。だけど、最後まで書こうと決めたからには続けないとって、誰に義理立てしてるわけでもないのに勝手に義務感に追い立てられて頑張るわけです。

 人称やカメラワークも適当だったものですから、同じ事柄をこの人からみたらどう変わるのかなど、細かいところまで修正します。読む人がそこまで考えるかどうかは別にして、コロコロとカメラの位置を変えるよりは、ある程度固定してすっとアングルを変え、自然に話が流れるようにしなくてはならないと私が思うようになったからです。

 これは今、誰の感情だろうとか、誰の目から見ているのかとか、昔は何も考えず思ったままに書いていたものだなと改めて思いました。


 次の壁は、構成力。過去の自分がどのように考え今の話の大筋を決めたのか、時間が経つにつれてわからなくなってしまったことです。

 大体は覚えているのですけどね。殆ど脳内プロットなんです。

 ノートやメモ帳にあらすじや細かい設定をメモっているわけじゃなくて、頭の中で誰がいつこうしてこうなってと漠然とあるものを書き連ねていただけなものですから、それを思い出すのが一苦労。今更のように整理して、時系列、見取り図、書きながら思い出そうとします。でも、思い出すのって限界があるんですよね。忘れてしまうことの方がものすごく多いって実感します。

 こうなったらもう、ある材料を使って組み立て直すしかない。リフォームですね。必要な材料のみ拾っていくのだったら簡単ですけど、話作りはそうも行かない。絶対使わないと思うような廃材を、むしろ中心に据えることだってあります。書き直し前は名前だけしか決めてなかった人物を主要キャラに格上げ、新たな施設や小道具の追加、なんてこともします。

 何故そう書いてしまったのか。わからなければその理由を作る。

 私は、原因からではなく、結果から逆引きして話を掘り下げていく手法をとっています。ある事件が起きた、事件の真相はどうか、謎を少しずつ暴く。その過程を、謎から作るのではなく、事件を先に作り、謎をあとから作るんです。

 めんどくさいんですけどね。頭使うし。でも、その方があとでつじつま合わせやすいなぁと。どうやって読者を上手く話に取り込もうか、どうやったら興味を引くか、考えていたらそうなってしまったというヤツで。だから、一つの話を書くのでも、苦労するんです。最後のつじつま合わせのあたりで。

 書き直し作業の場合は、この比率がものすごく高いので、頭を痛めます。ただ、該当箇所を書き終えた時の達成感はひとしおですね。だからやめられないのかも知れませんけど、この変なやり方が。


 そして最後、最大の壁は――飽きてしまうこと。

 何度も同じ場面を書いている、同じことの繰り返しが満腹感を生む。これが辛い。

 特に序盤は何度となく書き直しているはずなのに、何度書き直しても進まないような錯覚に陥ります。進んでないわけじゃなくて、ただ単にその箇所を書いている時間がトータルとして長いだけなんですけど。

 そう考えると、思い切り新しい話を最初から構築していく方が脳みそだって安心するような気がするんですよね。新しいキャラ、新しい舞台、新しい話。書きたいなとうずうずしながら、でも半端にしたくないと旧作の書き直し。新作も書かなければならない立場なので、(競作企画のため)そっちもやらなければならないんですけど、労力から考えると、書き直しに重点を置いてしまいます。


 前も書いたと思うんですけど、好きな番組の一つが「大改造 劇的ビフォーアフター」でして、この番組のスゴイところはやはり、再構築という点にあると思うのですよ。いまある骨組みを生かしつつ、新しいものに変えていく。その作業は、小説の書き直しに似ているような気がします。

 骨組みを全部ほどいてしまえば、全く新しい話になってしまう。しかし、それでは意味がないんです。建築のことはよくわかりませんが、多分建築基準法とか、そういうのでここからここまでいじるのはよいが、ここを解したら新築扱いとかあるんでしょうね。新築になるのとリフォームとでは、かかる税金も必要な法定検査もかわってくるはずです。ギリギリリフォームになるようにかつ、新築と違わないように建て直す。スゴイと思いませんか。

 一級建築士の皆さんもスゴイです。それを支える大工さんもスゴイ。

 何かを作るだけではなく、作り直す作業。これは、思ったより頭を使うんですよね。

 洋服のリフォームもそうじゃないですか。例えば全く着なくなったワンピースを今風のものに変えるとか、着物の生地からバックを作るとか。ああいうのって、単純に頭が良いだけじゃ出来ないですよね。機転が必要だし、それだけのものを作れるという知識、バイタリティが求められるじゃないですか。

 そう考えていくと、作り直す書き直す作業の難しいことと言ったら!

 いっそのこと、書き直しやめて新しいの書き進めれば良いんじゃね、とか言われそうですけど、そんな無責任なことは出来ません。書き始めた話は最後まで書く、そのつもりでいないと。読んでくれた読者さんにも、登場人物にも申し訳が立たないですよ。

 中途半端はよくない。だから、無理矢理奮い立たせてでも、書き直し作業を続けているわけです。

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