魂24◎伝えたいことの何%
頭の中で悶々と妄想続けること十数年――とか、ザラにあります。表現力と執筆スピードが足りないので、妄想力に追いつかないんですね。そのうちにどんどん頭の中からネタがどこかへ飛んで言ってしまうので、無駄になったアイディアはかなりのものじゃないかなぁと思います。でも、メモを取る暇もないし、書くにも私生活や仕事があるしで。考えることは嫌いじゃないです。物語を組み立てるのももちろん好きだし、具現化していくのは特に楽しい。だけど、それを実現するだけの技術と時間を確保するのは、社会人として母としてはなかなか難しいことだったりするのです。
アイディアは大抵、台詞か映像として浮かんできます。イメージとして頭に焼き付けるために何度も何度も同じ画面、同じ台詞を違うアングルから撮りなおす、映画監督みたいな気分で組み立てていきます。この台詞を言うにはどのシチュエーションが一番カッコイイかとか、どうしたらもっと心情を伝えられるか、舞台と天気、キャラ設定などを練っていくわけです。
そうこうして何とか上手いプロットになったとしても、果たして自分の力量でそれを伝えきれるかという問題が出てきますね。文章力も知識も、思いついた話に追いつかなきゃ意味がない。書き上げたとしても漠然としたイメージだけの作品になってしまったら、面白さが半減するんじゃないかと思ってしまいます。強迫観念というのでしょうか。こういうエッセイばかり書いているからかも知れないんですけど、面白い話を書かなきゃいけないという使命感みたいな義務感みたいなものに駆られ、必死に書いていくんです。
前も書きましたけど、どの表現方法をとるのが一番いいのかを考えます。どの部分の、何をどれくらい伝えたいのか。ものすごく長い話を思いついたけど、その話の中で言わせたい台詞はたった一つ。だとしたら、思い切って短編として切り取ってしまう。そうすればより凝縮させて一番いいところをアピールできるかも知れない。いや、長編として最初から最後までドラマ調に行こう。その方が臨場感を伝えきれるんじゃないか。こういうのを考えている時間がものすごく長い。
私はキャラクターから物語を作成する方法は殆どとらないので、如何にしてキャラを魅力的に見せるかというのにもものすごく苦労してる方だと思います。普通の人をただ登場させるのじゃなくて、それぞれの個性をこっそり滲ませ、書き分けが出来るようにとムダな努力をしていくんですね。口調もそうだけど、考え方、生い立ちなんかも、漠然とですが考えていきます。
何とかして、ネタを形にしようと必死なんですよ。いつまでも頭の中で同じ場面を繰り返していたところで、何もしなければ消化不良になってしまう。いっそのこと全部はき出してしまえば違うことを考えられるのじゃないかと。描きたいシーンになるまで何万字もかかるんだけど、それでも書き続ければ辿り着くかも知れないだなんて。毎回ですよ。苦しいながらもキーボードを打ち続ける。
もしかして、書いているより消してる方が多いんじゃないのかってくらい、推敲を繰り返し繰り返し。頭の中に浮かんだそれに最も近い表現になっているか、文章なり絵なり、何度も何度もチェックしていく。
SFで、頭の中で考えていることを画像化できる〜なんてものが偶に現れるじゃないですか。ああいうの、本気で欲しくなるときがあります。こんなにカッコイイ場面考えてるんですよ、伝わってるか自信ない気取っていう検証。それから、自分自身のネタをどこかしこできっちり保存して欲しいっていう甘え。
溢れてくるんです。どんどんどんどん。だけどそれには形がない。気がついたら目に見えない遠いところへいなくなってしまうような、はかない存在。頭に浮かんだ、伝えたいことの一体何パーセントが他者に伝わっているのか。書いても書いても、不安になります。自分の実力程度が見えてしまうから。
今、以前書いた話の書き直しをしてるんですけど、顕著にその葛藤と戦えてしまって。
当時はきっと必死に書いていただろう文章と話に、どんどん粗が見えてくるんです。何故こんな展開にって、思うことが多々あります。描写不足で一体何をしてるかわからないところもありました。あの時は鮮明に浮かんでいたはずの映像が、すっかり色あせてしまって覚えてない。どうしようもないので、再構築です。メモもある程度は残ってるんですけどね。あの当時の興奮(妄想力)を取り戻さなければ、書き直していってもクオリティを落としてしまう。
思いついたとき、書きたいと思ったときにガッと書き上げてしまうのが一番なんだなと思い知らされています。集中力もだけど、話の全体像がだんだんわからなくなってくるからです。書き続けることの大切さと言うんでしょうか。同じテンションを保っていくことで、アイディアの色あせは防げたのかもなぁと。そう言う意味では、短期集中で書き上げ、ゆっくり推敲した作品の方が面白いと自分でも思います。
理想は理想ですけどね。与えられた時間内でやっていかなきゃならないわけですから。
自分のテンションを保ちつつ、作品の質も下げない。こういうことができるようになったら、もっともっといい話が書けるようになるのかも知れませんよね。それこそ、今頭に思い描いていることを高い割合で読者に伝えられるのかも。……善処します。