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魂15◎ヒーローからの脱却

 今でも戦隊ものが好きで、子供と一緒に観ています。無駄に熱い主人公たちは観ていて面白いし感情移入もしやすい上、小さな子供にもわかりやすい構成が何より目を引きます。クライマックスへ突入するまでは大抵一話完結だし、どこから観ても興味を持てるようにテンプレート化された部分もあって。だけど、そういうのは視聴者獲得には必ずと言っていいほど必要なので、シリーズが更新されるたびに「また今回も上手い商売やってるな」などと思いながらもついつい観てしまうんですよね。

 話の筋書きは毎度新しくても、ある程度話が進むと仲間が増えたり力が増えたり、敵に共感してしまう部分が出てきて、ライバルが現れ、主人公たちの秘密みたいなのが暴かれてみたりと、毎回同じ下りが出てくるのは、多分狙ってのことなんでしょう。しかも、こういった展開はどのような舞台・設定でも興味を引くので、様々なものに適応します。


 毎年この罠にはめられていたかつての私は、なぜか自分でもヒーローものを書いてみたいなどと思ってしまったのでした。そのときのプロットらしきものと登場人物ラフが残っていますが、実に(今で言う)中二病臭い……恐ろしいものです。できれば封印してしまいたいと思いつつ、いや、いつか使うかもしれんととってあるあたり痛々しいですが。

 簡単に筋書きを言うと、普通の男子高生Aは幼なじみ女子高生Bと通学途中、突然攻撃を受ける。身に覚えのない襲撃に唖然とするAとB。立ちはだかった敵Cは、Aを最近話題のヒーローDと勘違いしているようだ。Dはその頃、ヒーローとしての重圧に耐えかね戦いを放棄してしまっていた。AとBに最大のピンチが訪れる。そのとき、Dに力を与えていた未知の生命体Eが、Aの前に現れ、Aに力を授けると言い出すのだった。

 ……どうです。使いたい人がいても使ってはいけません。漫画に起こそうとコンテまで切ってあるものを、後生大事にとっていましたが、多分もう使わない……というか、使えないでしょう。あまりにご都合主義な展開。読んでいて恥ずかしくなるシナリオ。こういうのが好きな時期もあったんですよね、きっと。


 テンプレに沿わなくても、展開自体に見覚えがあったり、何かをもじったとすぐにわかるような話は、読んでいても大体先が読めたり途中で飽きてしまったりするものです。そうやって、どんどんお蔵入りしてしまった話がどれだけあるか。オリジナリティに欠けてしまうわけです、どうしても。何かを模倣しようと思った時点で、私もそういうものを書いてみようかななどと思って書いている時点で、実は創作は終わってしまう。結果、途中放棄です。チラシの裏や自分のパソコンでやめておけばいいものを。中途半端なそれをネットで流してしまったらそれはそれは、大顰蹙ですよね。それも、テンプレ好きなヒーロー万歳読者が付いていたらなおさら。

 やめておけばいいのに、どうしても書いてしまう。そういうのって、どうしてもあるのかもしれません。自分も書きたいという衝動は確かに大切ですけど、それはある程度の範囲では笑って許されるというだけのこと。例えば、友達同士で見せあいっこするだとか、密かに自分で楽しむだとか。だけども、誰が観ているともしれぬインターネットでこれをやってしまうと、下手したら「痛い子」のレッテルを貼られてしまうのです。ネットはそれを払拭できるほどのスキルも期待される結構シビアな場所だなんて、思って書いている人なんて殆どいないのかもしれませんが。


 何も、主人公をヒーローにする必要はないんだと思いますよ。必ず主人公の前で特別なことが起きなくてもいいんじゃないかと。普通の人間で、特に変わりない平坦な、だけど少しいつもと違うという奇跡を描いた話の方が、バリバリヒーローものより面白かったりしませんか。

 ある程度年齢を重ねると力の入りすぎた熱さに疲れてしまいます。読んでいて面白いのはじっくりと煮込まれたスープみたいなもので、なめらかで様々な素材の味が混ざって、くどくなく、口の中で転がして味わえるようなものを好むようになります。全体も面白いけど、一つ一つがどことなく引き立ってバランスがある、そういうのが最終的に長く好まれている気がするんですよ。

 ご都合主義で熱いのも悪くないんですけどね。長く愛されたいと思ったら、ヒーローから脱却してみるのも手かも。味の濃いのはすぐに飽きてしまいますから。一時的な好奇心の高鳴りでなく、じっくりゆっくり人間を描いていくことも、長いモノカキ人生の中では大切になっていくような気がします。

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