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魂14◎筆力の限界

 アイディアが浮かんで、書こうとして。だけどどうしても書けないときってありますよね。なんて言うんだろう、それこそ、自分の実力の底を知ってしまう瞬間。悔しくてがっくりくるけれど、私はそれ以上書くことができなんだってわかると、そこで筆を置いてしまう。一番やりたくないパターンですが、これが途中放棄の原因なのかもしれないと、今更ながら思います。自分の経験の幅と言うんでしょうか、結局はそういう範囲でしか想像できないのかもしれません。

 壮大な話を書きたいって、意気込んでた時期があったんですよ。だけど、それは絵空事でした。形になんてなるはずもなかった、夢の一部に過ぎなかったんです。

 なにせ本を読むのが苦手で漫画ばかり読むような人間だったし、旅行にも行けない、資料も買えないような未成年時代に、空想した事柄を文章や絵に起こそうとしても無理だったのかもしれません。身近なことよりどこか遠くにあると勝手に思い描いた異世界を舞台に、訳のわからぬ人間関係図をこしらえ、キャラクターの絵を描いて、あらすじを考え、満足していました。クラスの友達にノートを見せ合う程度のレベルで、いかにもオリジナリティ溢れてますよと言うのを見せつけたかったのか。それは、痛いというレベルであったことは言うまでもありません。

 思いついたことは何でも漫画や小説にできると思っていた時期があります。アイディアさえあれば書けるだなんて、勘違いも甚だしいですが、子供の時分、誰だって考えてしまうことじゃないでしょうか。漫画やアニメの二次創作もどきのような作品をいくつも考えては途中でやめ、また新しいのを考える。そうやって、アイディアやネタを膨らませている気になっていました。

 そんな私が中学の時、トレンディドラマというやつを初めて観たときの衝撃は、すさまじいものでした。テレビをあまり見せてもらえない厳しい家庭だったので当時はやっていたドラマに疎かったせいもあり、夕方に再放送があるまでそのドラマの存在を知りませんでした。俳優の演技と脚本にあまりにも感動してしまい、私は思わずそれまで書いた自分の作品を全てゴミに捨てしまったのです。

 他人から見たら愚かしい行為だと思うでしょうが、当時は必死です。自分のアイディアなんて結局はその程度のものかと――、奇抜なつもりが全然奇抜さがないとか、誰かの二番三番煎じの話しか書けないだとか、とにかく悔しくてたまらなかった覚えがあります。計画性もない、訴えたいこともない、その日の気分次第でどうにでもなるような話のどこがおもしろいんだろうかと、そのとき無駄に深く考えてしまいました。

 目が覚め、自分の愚かさに気がついたとき、ゴミに出した絵や小説は全部焼かれてしまっていました。もう戻ることはありません。くだらない一時の感情で全部投げ捨ててしまったあと、残ったのは虚無感でした。

 自分の力には限界があると、そのとき感じてしまったんですね。結局は身の丈の話しか書けないのに、何故背伸びをしてしまうのか。それも、背伸びした上に高い高い竹馬に乗ってしまって足下覚束ない状態、一歩か二歩踏み出すのがやっとの状態に自分を追い込んでしまう。こんな制作の仕方では、どう考えても話が一つも完結しないじゃないかと、思い知ったわけです。

 チラシ裏で終了するなら、壮大な話もありかもしれません。だけど、不特定多数が覗き見るインターネット上で同じ事をやると、きっと後悔すると思うんです。最初ばかり壮大で、あとはどんどん……竜頭蛇尾っていうんですよね。そんなの、面白いと思いますか?

 モノカキならば、自分の実力のほどを知っておくことも必要なのではないかと考えます。書けもしない話より、書きあげて充実感のある話の方が面白い。結末を知りたくて読んでいるのに、結末がいつまでもこなかったり、結末する前に投げ出されたら、読者だってたまったものじゃない。読むのに時間を費やす分、そうしたことも頭の片隅に入れてみたらどうでしょうか。

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