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不可思議少年和田智玄  作者: おこめi)
26/55

26.紅に染まった着物

長かった。

「もしもし、ああちょっと相談そうだんがあって、あと、心配しんぱいかけてごめん。うん、大丈夫だいじょうぶ。え、そうなのそれはごめん。ロビーでわれたの?もういないって、ははは、すれちがっちゃったね。で、相談そうだんなんだけどバイトをはじめたいっておもって、ん、借金しゃっきんほうわったけど。いや、なんかほしいとかじゃなくて社会勉強しゃかいべんきょうというかおれ勉強べんきょうというか、ちょっと複雑ふくざつなんだよね。いつかえない。ちがちが五日いつかじゃなくて、あ、そうか年末帰ねんまつかえときはなせばいいのかそうだね。いつやすみ。明日あしたから、わかったかあさん達はかえってくるの。わかんないって毎日(まいにち)連絡(れんらく)()ってるんだろ。ああ、いそしいんだ。おれ(こと)()ってないの。ああ成程なるほど。うん明日あした明後日あさってもどるからよろしく。」

 ブラックカンパニーをおとずれたよるおれ親父おやじ電話でんわをした。

 たわいもない親子おやこ会話かいわだ。あたらしいアルバイトの相談そうだん凍死とうしして心配しんぱいかけた謝罪しゃざい翌朝(よくあさ)退院(たいいん)というホテル感覚かんかく入院にゅういんによるすれちがい、年末帰省ねんまつきせいはなし


だれだ。彼女かのじょか。」


 貞時さだときさかさまでおれまえてきていてくる。


ちがう、彼女かのじょなんていない。」

はなてきおやでしょ。おとうさんのほうかな。」

「ご名答めいとう今日きょう相談そうだんだよちょっと世間話せけんばなしもしてたがな。」


 夕飯ゆうはんはケチャップライスにした。本当ほんとうはオムライスをつくるつもりだったが、つくってる途中とちゅうりょうおおくてつつみきれないことにづき、そのままいやになって玉子たまごくことすらやめた。

 しかし、ケチャップライスだけでも美味うまい。

 ミックスベジタブルと鶏肉とりにくだけでつくったが、ケチャップの酸味さんみ食欲しょくよく増進ぞうしんさせ、そこからごはんあまみがつたわってくる。ミックスベジタブルのそれぞれがあじ食感しょっかん変化へんかくわえてくる。グリーンピースははじけるような食感しょっかんから、独特どくとくかおりがひろがりコーンはグリーンピースとはちがかわやぶるとジュワっとひろがるつよあまみできさせない。そしてにんじんが、ごはんとはちがやわらかさとあまみから他二ほかふたつとはちがうが、んだあじ変化へんかせてくれる。最後さいご鶏肉とりにく一口ひとくちサイズでった鶏肉とりにくがケチャップライスのあじからうまみをせてきて、満足感まんぞくかんがプラスされる。

 玉子たまごでくるめば玉子たまごあまみでマイルドにととのえてくれるだろうが、いならいでうまみががんがんめてきてまたいいものである。

 ご馳走様ちそうさまでした。

 

 一通ひととお家事かじ帰省きせいする準備じゅんびもした。


明日あしたから帰省きせいするから一人ひとりのときでないとはなせなくなる。」

了解りょうかい。」

すこしさびしいわね。」


 二人ふたり各々(おのおの)反応はんのうせる。電話でんわ時期じきから予想よそうはしていたという反応はんのうだ。


「まあかえってもやることはあんまりいのでそのへん解消かいしょうかんがえてきたいとおもう。」

「そうだな、そと会話かいわできないのはちょっと不便ふべんだったな。」

「ああ、でもかえまえにやらなくてはいけないことがある。」

「え、かえ準備じゅんびわったんでしょ。」


 なん本人ほんにんかえしてくるのかな。まあいいこういうのははやいほうがらくだし二人ふたり知恵ちえりたいしな。


なん本人ほんにんわすれてるんだよ名前(なまえ)()めるぞ。」

「あ、そうね。ありがとう。」


 すこししおらしくなるがかおはうれしがっているようなやさしいかおをしている。

 しかし、めるにしてもどうしたらよいかかんがえていない。


「しかし、どうするかな。」

なんにもかんがえていなかったのか。」

名前なまえなんてけたこといからな。」


 なんかヒントがほしいな、ゼロからはじめるのは少々しょうしょうなんがある。


なん生前せいぜん、いや、死後しごでもいいか、なん印象いんしょうのこっていることはないか。」

印象いんしょうのこってること。」

「そうだな、なるべくたのしかったりうれしかったりすることのほうがいいな。」

「んーいや記憶きおくしか印象いんしょうのこってないわね。」


 やはりむずかしいかすこしずつ記憶きおくしていくか。


「その着物きもの生前せいぜん記憶きおくなのか。」

「これは、ちがうわよ。」


 あわいピンクを中心ちゅうしんとしてめられた着物きものにまとっていたためなにおものものかとおもったが、ちがうようだ。


生前せいぜんしぶ地味じみなものしかられなかったからね。いつだったかわすれたけれど、綺麗きれい着物きものてるなってまねしてみたのよねどう似合にあってるかしら。」


 全体的ぜんたいてきにはあわいピンクなのだが所々(ところどころ)はなのようなえんくずしたしろ模様もようひろがっている、生前せいぜん修行しゅぎょうもあってかまっておりけっしてふとえなく、身長しんちょうたかめの彼女かのじょあわいろがより彼女かのじょながうつくしさをきたたせている。また、黄色きいろ中心ちゅうしんとしたおび着物きものくらべてはっきりとしたいろで、彼女かのじょ着物越きものごしであるにもかかわらないくっきりとしたボディラインをせ、あか帯止おびどめがしっかりとまとめているようにかんじる。ひかえめにいってすごい似合にあってる。


「とても似合にあっているよ。大人おとなっぽい雰囲気ふんいきだから寒色系かんしょくけい似合にあうかなともおもっていたけれど、暖色系だんしょくけいもよく似合にあうね。綺麗きれいきみだからかな、スッキリとした笑顔えがおがよりかわいくあかるくえるよ。」


 素直すなお感想かんそうでほめてみた。血液けつえきとおってないはずなのにあかくなってらしてれてる。かわいい。きているひとにはあんまりわないような台詞せりふをためらいなくはなしてしまった。まあんでるからあんまりにせずガンガンこう。

 いやかんがえたらかかわりのあるきている女性じょせい家族かぞくくらいのものだったな。

 まあ、いたとしてもおれれてそんなこと絶対ぜったいえないけど。


「それにしても綺麗きれいいろだね。」

「でしょう。どこだったかしらきたほう地域ちいき使つかってるかたってってたわね。あかとかだいだいとかももとかのいろせるんだったかしら。」

きた染物そめものあか・・・。」

「あと、口紅くちべににも使つかわれていたんだったわ。」

べに・・・紅花べにべな。」

「え。」

「それ紅花染べにばなぞめじゃないか。どこだったか黄色きいろだいだい綺麗きれいはながあるんだ。そこから抽出ちゅうしゅつしたいろめる伝統芸能でんとうげいのうだったかな。」


 はっきりとはおぼえていなかった。歴史れきし調査ちょうさがメインでってたまたまった知識ちしきだしな。こういうのもあるのか程度ていどでしかいてなかった。


「そのはな紅花べにばななのね。」

「そう、安直あんちょくかもしれないけど紅花べにばなめるから紅花染べにばなぞめ。」

「へえ、紅花べにばなか。」


 紅花べにばなかハンドルネームみたいだな。そうか、べつにちゃんとした名前なまえにこだわらなくてもいいのかな。


「・・・紅花べにばなか。」

「なんかおもいついたのか。」


 ひとかおてニヤッと貞時さだときこえをかけてくる。本当ほんとうかんのいいやつだな。


「いや、そのいろってるんだったら紅花べにばなって名前なまえわるくないんじゃないか。仮名かめいとしても不自然ふしぜんじゃないとおもうし、もしかしたらいまから本当ほんとう名前なまえつかるかもしれない。おやからもらったいい名前なまえだったらもったいないだろ。だからいっそ名前なまえっぽくない仮名かめいのほうが使つかいやすいんじゃないかとおもってな。もちろん、らないならしっかりとした名前なまえをつけるよ。」

「と、うことだがどうかな、おじょうさん。」


 彼女かのじょあごかんがえる。むずかしいかおをしているそりゃそうだ簡単かんたんめることじゃない。彼女かのじょ口角こうかくすこがりこたえる。


「いいねその案乗あんのった。そして、仮名かめい紅花べにばなわるくないとおもうわ。わたしはこれから紅花べにばなとして名乗なのっていきます。」


 不満ふまん一切いっさいないかおでしっかりとこたえてくれた。

 貞時さだときかお見合みあわせあらためて挨拶あいさつとする。


「それじゃ代表だいひょうして、これからもよろしく“紅花べにばな”。」



という訳で名前の発表でした。紅花で行きます。よろしくお願いします。

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