第3章 英雄
遅くなってすいませんでした。
見てる人いるのか分かんないけど。
「おはようございます!」
その声と共に体を起こす。
「ファァア、おはよう」
呆けた声で返事を返した。
頭を数回かき、頭を冷ますために頬をパンパンと叩く。
今日も変わり無く平和な日である。朝御飯を食べたら早速研究室に籠って…
いや、いつもと違う。1人暮らしだぞ。誰が声かけてくれてんだよ。
「あの、何て言うか、朝弱かったりしました?」
「ん、あぁ、すまない。恥ずかしいところを見せてしまったな」
そうだ。俺はまだ夢の中にいたんだった。夢の中で寝ることなんてまず無いから忘れていた。
「今日は明日王国へ出発するための準備するので、村を散策でもしていてください。お昼頃には帰ってきて下さいね」
「わかった。では辺りを見てくることにする」
「行ってらっしゃい!」
村をうろうろしてみたが、THE田舎という感じの場所だった。商店街のような出店がいくつかあり、広場で子供が駆け回り、武器や魔法の鍛練をしている者もいる。RPGの世界をそっくり描いたような風景だ。流石俺の夢。
グゥー
…そう言えばまだ朝食を食べていなかったな。適当に何か買って食べるか。
「いらっしゃい!騎士の兄さん!こんな村に騎士さんなんて珍しいね!」
「少し用事があって立ち寄っている」
「そうかい、騎士も大変だろう。まぁなんもない村だがゆっくりしていってくれ!」
「ありがとう」
「ところで、商売の話だ!今日はヤマリンゴが安いけどどうだい?」
「あぁ、1つ貰おうか」
「毎度あり!10ジェイルだ」
「ではこれで」
そう言って銀色に光る硬貨を出した
「おいおい…プラチナ硬貨はねぇぜ!すまねぇがそんなもん出されても釣り出せねぇよ」
「あぁーこれだこれだ。すまない、似ていたのでそちらを出してしまった」
俺は袋から銀色の硬貨を出した。
「勘弁してくれよな…ハイよ。あんましそんなもん見せてると周りの連中に目ーつけられるぞ。気ーつけな」
「忠告感謝する。では」
店を後にしてベンチに座りヤマリンゴを齧る。
なんだこれ…見た感じ林檎なのに甘味は少ないし固ぇ…
まだ発展途上ってとこなのか…
夢の癖にそういうとこはリアルみたいだ。
そしてもう1つ分かったのが、この銀貨1枚でお釣りが出なかった事から10ジェイル、プラチナ硬貨1枚は計り知れない価値を持っていることだ。現在袋には銅貨20枚、銀貨5枚、金貨4枚、プラチナ硬貨2枚が入っている。まぁこれだけあれば生活には困らんだろう。
ぼーっとしながら辺りを眺めて過ごしていると村の入り口の方から何やら騒ぎ声が聞こえてきた。
「大変だ!北の森からナイトウルフの群れがこっちに向かって来てるぞ!」
おぉーやはりゲームっぽい!ではまたまた村を救うためにいってみようか。
村の入り口付近には人が集まり不安の声を募らせている。
「そういえばこの村に騎士さんが来てるって聞いたんだが…」
「私だ」
「騎士さん!今村にナイトウルフの群れが押し寄せて来ているんです!自警団の者にも知らせて来ますので先に向かって貰っても宜しいですか?」
「あぁ、構わん」
「ありがとうございます!では、宜しくお願いします」
そう言ってその村人は駆けて行った。
辺りからは感謝や称賛の言葉が飛んでくる。こういうのも悪くない。
「では、行ってくる。皆期待していてくれ!」
そう言うとうぉー!と歓声が響き渡った。そして、俺は村を出た。
村を出て北に向かうと広い草原があり、遠くに紺色のざわめきが有るのが見える。ナイトウルフというからどんなものかと思っていたら、毛色が夜に似た色をしているからそう名付けられたのかと考えると少し微笑ましく思った。
そう思ったのもつかの間。ナイトウルフが近づいて来るにつれて大きくなっていく。50匹位の小さなモンスターの群れだと思っていたのが実は5匹の超大きな狼だったのだ。頭の紺と白の毛がうまい具合に騎士の兜を思わせる形をしており、四肢から伸びる爪はまるで剣のように鋭く長い。
ここで俺は驚き少し身を引く。しかし、この程度のモンスターなど敵ではない。俺は勇猛果敢に飛び込み剣を振った。ゲームで培った剣技を真似して多少の傷を与えることができた。しかし数秒後、ナイトウルフの爪が俺の身を切り裂いた。途端に切り裂かれた部位から血が出る。痛みを伴う。我を忘れる。そして、逃亡する。
そこに運悪くも自警団が現れた。フルフェイスの兜であるため表情は見えないだろうが、左肩の露出した部分から血が出ているのを見て自警団が声をかけてくる。
「大丈夫ですか!」
それと同時に倒れ混み剣でナイトウルフの方を指しながらこう叫んだ。
・・
「死ぬ!」
その瞬間剣先から4色の光がまっすぐナイトウルフの方へと飛んでいく。
「へ?」
俺は訳の分からぬまま呆然としていたが、4色の光が当たった1匹のナイトウルフが焼け焦げた。それを見た残りの4匹は一目散に逃げていった。
一瞬の沈黙の後、大きな歓声が巻き上がる。
「なんだよあの光」
「俺聞いたことあるぞ、さっきのは原4属性の閃きを放つ竜峰の奥義、四怒って技だろ!あんたすげぇな!」
「ま、まぁあの程度造作もない」
「正直ナイトウルフが来たって聞いて正直ヤバイなって思ってたんだよ!」
「帰って宴だ!この村を救った英雄を祝してな!」
…とまぁ良くわからぬうちに事は丸く収まったようだ。
こうして俺は村に帰り宴に招かれた。
宴の席で俺は壇の上に立たされた。そして、壇の隅の方からいかにも村長という老人が歩いて来た。
「儂はこの村の村長をしておるアドラ・マーゼルと言う者じゃ。村を救って下さりありがとうございますじゃ」
そう言って深々と礼をされる。俺も同じように頭を少し下げ、
「いえいえ。たまたま勝てただけですよ」
そう。俺にも何が起こったのか分かっていないのだ。ただ、先ほど出たビームがすごいということはなんとなく察せた。
どことなく村長はむっとしながらこう言った。
「ご謙遜なさるな。あの程度のモンスター、フリューダ殿にとっては敵ではないだろう。」
「フリューダってあのフリューダ・イグリシアか!?」
「行方不明だと聞いていたんのだがまさかこんなときに来てくれるとは。流石副団長殿だな!」
…副団長だったのかこの人!道理で強いわけだ。多分夢効果で能力とかスキルも受け継いだんだろう。
というかなぜ村長が俺の名前を知ってるんだ?
「すまないが村長殿。なぜ俺の名前を知っているのだ」
「そうじゃのう…シャスティアが報告にきてくれたんじゃ」
「そうか」
そうであれば納得だ。
「すまぬが後で儂の家に来てくれんか?」
「分かった」
「では、皆のもの盃を取れ!今宵は英雄を称賛しここに宴を開く!」
アドラ村長がそう言った後俺の方をちらっと見てきたので、俺も声を大にしてこう言った。
「乾杯!」
そこからはお祭り騒ぎで正直どうなったかは覚えていない。一つ覚えているとすれば飲み過ぎて特に意味のない話を延々としていたくらいだろうか。
こうして、イーダ村の脅威は去り夜は更けていった。
前回創作用語を出したのに説明できてなかったので、ここで説明させてもらいます。
○希晶
世界のあらゆる物を構成する物質。様々な特性を持った希晶が存在し、一つの現象が起こる場所では別の質を持つ希晶は基本的に同時に存在することができない。(ただし例外は存在する)
現在判明している特性を属性と呼び、火、水、土、風、光、快、想、幻、癒の8つに分類している。(一部不明あり)優劣関係は基本的に無く操作次第である。また、質という概念があり、基本的に表と裏で表される。
希晶が固まった物を希晶石、また高濃度で結晶化したものを高希晶エレメントと呼ぶ。これを使用する事で魔法を使うこともできる。これと同様に武器や防具に付与することも可能である。
⚫こんかいのおはなしにでてきたようご⚫
○ジェイル(お金)
1ジェイルは約10円
100銅貨=1銀貨(約千円)
10銀貨=1金貨(約一万円)
10金貨=1プラチナ硬貨(約十万円)
○ 竜峰
エンセス=イグリシアによって作られた剣技。体内の希晶と精霊との結び付きを知ることで武器を媒体にし、鋭い魔法を放つ道。