第2章 存在証明
剣士から頂戴したマップには自分の現在地が緑色の光でポイントされており、迷うことはなかった。宛もないので、取り敢えず現在地の一番近くにあった村っぽいマークに向かうことにした。夢なのにしっかりしてるなと感心しながら歩いていると、辺りに光る草が生い茂っていた。
「この世界には光る草が有るのか…もしかすると、これが薬草なのかも」
そう思った俺は辺りに茂っていた草をある程度採っておいた。これで当分は怪我しても大丈夫だろう。したくないけど。
森の出口付近で何やら嫌な感じと物音がしたので木陰から覗いてみると、如何にも子悪党ですといった見た目の男が3人で何か話していた。良く見ると3人に囲まれる形で少女が縛られていた。
「離してください!こんな事して許されるとでも思ってるんですか!」
少女は強気で反抗しているが、男たちは
「へへへ…お前自分の立場分かってんのかよ?」
「パパもママも今はお家にいないんでちゅよー」
「身代金さえ出してもらえればお前は助けてやるよ。命だけはな!」
そう言って少女の口に縄をかけゲヘゲヘ笑っている。本当に子悪党ってのはどこの世界も変わら無いんだなと思った。まぁ、夢の中だし、俺が主人公な訳だし、ちょっくら助けてあげますか。
「おいあんたら、その辺にしときなよ」
そう言って出ていくと、男たちはビクッと体を震わせた。
「兄貴…ここには村の人間は来ない筈じゃ…」
「その筈だったんだよ!てかどう見てもあいつは王国の騎士だろ!多分お嬢さんが村に居ないって聞いてここまで来ちまったんだろ!」
「どうしましょう」
「騎士一人くらいなんだってんだ!こっちは3人も居るんだよ!負けるわけねーじゃねーか」
「それもそうっすね!」
…
「覚えてろよ!」
「次会ったときはあんたの最後っすよ!」
「とっととずらかるぞ!」
「へい!」
男たちはこの鎧が王国の騎士団の物であると言うことを教えてくれたあと、武器を向けてきたので振り払ってやると速やかに逃げ去って行った。
「全く…本当どうしようも無い奴ってどこにでも居るのな。大丈夫か?」
少し怯えつつもコクりと頷いた後に小声でありがとう、と呟いてくれた。
森を出て村にこの娘を連れて行く途中、
「騎士さん、お名前はなんていうんですか?」
「俺?俺はいぬ…フリューダ・イグリシアだ。フリューダと呼んでくれ」
「…!あなたがフリューダさんなんですか!」
「あ、あぁそうだが」
「父と母がいつもお世話になっています」
「あぁ」
「あ、私シャスティアっていいます」
「シャスティアか、良い名だな」
取り敢えずこれいっとけば問題ないはずだ
「ありがとうございます!父さんと母さんがフリューダさんは凄い人だって色々話てくれるんです。例えば西の古の都のゴーレムを倒して核を取ってきてくれたとか、後は、お酒いっぱい飲んでぶっ倒れたーとか他にも…」
「それくらいで良いぞ!」
この人結構凄い人なんだ…だったらなんであんなところで倒れていたんだろう。て言うか、知名度ある人なら話合わせられなくなった時点でスパイ疑われておしまいじゃない?
だったら…
「実は俺は森に入るまでの記憶が無くなってしまったのだ。」
「そうなんですか?」
「そうなんだ。だから…」
「だったらレグザール王国に居る父さんに治して貰えるかも!…しれないです。」
「そうなのか?」
この世界の王国…ちょっと行ってみたいかも知れないな。
「もしキミが良ければで構わないんだが王国まで案内してくれないか?」
「え、私がですか?良いですよ!」
良かった応じてくれた。
「でもその前にフリューダさんであることを示して下さい。疑ってる訳じゃないんですけどもしフリューダさんを名乗ってるだけの人なら大変なので」
終わった。俺を示せなんて無理に決まってる。ここで変身してるのがバレて牢屋で過ごす夢になるのか…まぁそれも一興。
「まぁでも私もフリューダさんを知っているわけじゃないので、父に聞いたんですが、精霊王級のコーリュプスが入ってる高希晶エレメントを持ってますよね?それ見せてください!」
こうきしょうえれめんと?なにそれ?
「こうきしょうえれめんととは何だ?」
「大きな希晶石だって聞きました。その中にコーリュプスの力が入ってるんだって」
「もしかしてこれか?」
そう言って良く分からんクリスタルを取り出した。
「凄い!本物は初めて見ました!」
「そんなに凄い物なのか?」
「何にも覚えてないんですか?」
「うむ」
「分かりました。取り敢えず私たちの暮らす村、イーダに帰ってからある程度の事は教えます。それと、用意もあるので明後日レグザールに向かいましょう」
「助かる」
大分いい感じで事が進んでるんじゃないか?まぁでも夢だし、王国に行くまでに覚めちゃうかな…
取り敢えずこの世界のこと色々聞いて楽しい夢だったで終われたらいいなと思った。