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友達は記憶を失っているので私の事を「藤井さん」と呼ぶ。記憶喪失する前は、当然のように下の名前で呼んでいてくれたから気付かなかったけど、苗字で呼ばれるのはいかにもな……
藤井もそれに合わせて苗字で「根岸さん」と呼ぶのであるが、根岸は根岸としての記憶がなく、覚えているのは異世界から来たという記憶だけ。根岸は、今の世界での記憶だけ、すっぽり無いことについては違和感感じるそうで、それ以外の記憶はすんなりと受け入れたそう。たぶん、それは異世界時代の経験が元になってるはずで、だからこそ藤井と根岸はその記憶が本当に正しいものかどうか確認しなければいけない思いに駆られていた。