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Lv.0でニューゲーム(仮)  作者: 槻白倫
第一章 レベルゼロ
31/39

030 決着

すみません!また短いです!

 日陰達の戦いに決着が付いた頃、太陽達は未だに惨鬼と交戦していた。


「ふっ…まるで鬼のような形相だな…」


 鬼に鬼と言わしめる三人は周囲のパーティーメンバーと連携をとって、惨鬼と渡り合っていた。


 だが、怒り任せの三人に周囲が合わせていると言った感じであり、連携とは言い難いようなものではあった。


「なかなかに面白いが…どうやら、お前達の力は時間切れのようだな」


 そう言って惨鬼は上空を指差す。


 訝しげな顔をしつつも、そちらに振り向くことなく目の前の敵である惨鬼を見据える。


 その姿勢に苦笑を漏らしつつ、惨鬼は言う。


「いや、不意を撃とうとは考えておらんよ。ともかく見てみるといい」


「っ!?おい太陽!見てみろ!」


 太陽の後ろで祥吾が声を上げる。どうやら、惨鬼の言うとおり上に出ているスクリーンを見たのだろう。


「満月ちゃんも真月ちゃんも見てみて!」


 ももこも、声を上げる。


 それに促され、三人は惨鬼を警戒しながらもそっと後ろを振り返り、スクリーンを見る。


 すると、そこには瓦礫とかした校舎の壁のところで瀕死の殺鬼に抱き留められる日陰の姿があった。


 日陰の方は所々に傷を負ってはいるが、致命傷になるような傷は残ってはいない。最初に殺鬼にやられた傷も全快したのだろう。


 そんな二人の状況を見て考えられることは一つ。


「勝ったのか…日陰は…?」


「どうやら、そのようだな」


 太陽の言葉に返事を返したのは、殺鬼の相棒である惨鬼であった。


「…怒ったりしないんだな。仲間を倒されてるのに」


「しないさ。同じ師に支持したただの門下どうしだ。それ以上でもそれ以下でもない。だが…」


 そこで一度言葉を止めると、惨鬼から溢れ出る威圧感が増す。


「門下のよしみだ。仇くらいはとってやろう」


 惨鬼はそう言うと赤く光る目を太陽達に向ける。


 殺鬼も使った鬼神化である。


「うっ…!」


「くっ!」


 惨鬼の威圧感を受けて悟る。


 勝てない、と。


 怒りにまかせた攻撃をして、体力のペース配分を考えていなかったのもある。だが、今勝てないと確信しているこの気持ちはそれ故ではない。単純に実力の差がそう感じさせるのだ。


 この確信は、太陽だけが感じているわけではない。この場にいる誰もが感じていることだ。


「…満月、真月。皆を連れて逃げられるかな?」


「なに言ってんのたい兄!?」 


「ちょっとこいつはマズいと思うんだよねぇ…」


「そんなの分かってるよ!!でも、それでたい兄を一人に出来るわけ無いじゃん!!」


「ダメだよ。俺が残って皆が逃げる時間を稼ぐのが得策だ。それで、どこかにいる九重さんや藤堂校長を捜してこいつを倒してもらおう」


 九重や瑞穂であれば惨鬼とはそれほどレベル差は離れていないはず。であれば、どちらか一人でもいれば戦況は大きく変わる。それは皆が理解している。だが、理解しているからと言って、それと感情が追いつくかどうかは別の話である。


 満月も真月も、生存確率を考えるのであればそちらの方が良いと判断しているのだが、それでも、兄である太陽をこの場で一人死ぬと分かっていてむざむざと置いていくことは出来ないのだ。


「一人じゃろくに時間なんて稼げないじゃん!!私も残るよ!!」


「……………満月の言うとおり。一人じゃ、無理…」


 だが、三人残っても勝てる見込みなど無い。時間は稼げるかもしれないが、遅かれ早かれやられてしまう。


「ダメだ。早く行くんだ」


「それはこっちのーーー」


「このまま問答を続けても時間の無駄よ。それよりも、あなた達全員早く避難しなさい」


 今まで黙っていた祥吾が痺れを切らして口を挟もうとしたが、それを遮るようにして誰かが口を挟む。


 必然。その場にいた全員が口を挟んだ者に向けられる。


 その者を見た瞬間、数人が安堵の息を吐いた。そしてそれは、息を吐くまではいかないものの、内心では太陽達も同じであった。


「下がりなさい。ここは私が代わりに受け持つから」


 現れたのは、惨鬼を倒せるかもしれない内の一人。それでいて確率が一番高い方の人物であった。


「…校長先生…」


 誰かの呟きに答えることも、一瞥するでもなく、瑞穂は惨鬼と対峙する。


「よくもまあ、私の可愛い生徒にこれほどまでにちょっかいかけてくれたわね」


「それはすまぬな。こちらも興が乗ってしまってな。まあ、許せ」


「…まあ、いいわ。ここからは私が相手になるのだから。それに…」


 瑞穂はそう言うと上空にあるスクリーンを見る。そこには瓦礫の中で座り込む日陰の姿があった。恐らく緊張の糸が切れたのだろう。


 瑞穂にはボロボロになりながらも座り込むその姿も愛らしく映りこみ、自然と頬が緩む。

  

「生徒が頑張ったのですもの、最後は私達教師も格好いいところを見せなくてはね」


「…ほう。それで…俺に勝てるとでも?」 


「ええ。勝てるわよ」


「…得物も持たずにか?」


「あいにく、私に武器は必要ないの」


「…武器を持たぬ相手と戦うのは少々気が引けるのだが…そうか。であれば、仕方ない」


 それだけ言うと二人は構える。


 すると、どちらからともなく動き出す。


 先程とはやはり比べものにならないくらいの速度で肉薄する惨鬼。太陽達であれば反応はおろか、目で追うことすら出来ぬほどの速度だ。それを瑞穂は難なくかわしていく。風になびく髪すらもその一太刀を掠めることなく完璧にかわす。

   

「ほう…口先だけではなかったようだな」


「なにぶん、口先だけじゃ私の役職は勤まらないのよ」


 軽く言葉をかわす間も、二人の動きに変化はない。惨鬼は太刀を振るい、瑞穂は太刀をかわす。


 暫くはその状態が続いたが、不意に瑞穂が言葉を漏らす。


「…詰まらないわね…」


「…なに?」


「つまらないと言ったの。"鬼神化"がよもやこの程度だったなんてね」  


「…挑発には乗らんぞ?」


 惨鬼の言葉に、瑞穂は冷笑を浮かべて返す。


「挑発?挑発なんてしてないわよ。私は事実を言っただけ」


「なんだと?」


「もう、終わらせてもいいかしら?」


「やってみろ!」


「そう。それじゃあ、お言葉に甘えて」


 そうして、今度は瑞穂から動く。


 迫り来る太刀に手を添える。それも刃の方に。


「先生!?」


 後ろから焦ったような声が聞こえてくるが気にもとめない。


「ふっ!血迷ったか!」


「全然。"クラッシュ"」


 直後、バキイィィンと音を立てて太刀が砕ける。


「な!?」


 この事態は、さしもの惨鬼といえども予想だにしないことだった。

  

 そして、一瞬の隙が生まれてしまう。その一瞬があれば、瑞穂にとっては十分だった。


 惨鬼の懐に入り腹部に一撃を入れる。


「がはっ!?」


 そうして、間髪入れずに連撃を加える。


 およそ常人には出来ないであろう動きと速度で惨鬼を、拳と足を使い滅多打ちにする。


 そして、最後の一撃とばかりに胸部に両手で行う掌底、《双打掌そうだしょう》を加える。


 勢い良く後方に吹き飛ぶ惨鬼は、地面に強かに体を打ち付ける。


「ぐぅっ………が…」


 惨鬼は体を小刻みに振るわせながらも起き上がろうとするが、ダメージが大きすぎるのか起きあがることが出来ない。


 そんな瀕死の惨鬼近付くと、瑞穂はアイテムボックスから剣を取り出す。


「……ふっ…………規格外な…やつだ…」


「規格外で言えばあの子もよ。私だけじゃないわ」


「………あの、少年…か?」


 惨鬼は視線をスクリーンに向かわせる。スクリーンの中では日陰が沢山の女子に囲まれていた。


「………………モテモテだな…………」


 惨鬼のその一言で瑞穂もスクリーンに目を向かわせる。すると、はあと溜め息を一つつく。


「…なんで彼はあの子達に囲まれてるのかしらね…」


「………やはり、好いた男の周りに……異性がいると…気に、喰わんか?」

 

「まあね。さて、それじゃあこちらも終わりにしましょうか」


「…………ああ……楽しかった………」


 最後の言葉を聞くと、瑞穂は惨鬼の胸に剣を突き立てる。数秒後、惨鬼は光の粒子となり空に舞う。


 次いで、エリア一面に音楽と共に響き渡るアナウンス。


 ーーーーーイベント《復活の双鬼》はクリアされました。繰り返します……


 こうして、日陰達を襲った、突発性イベントは日陰達の勝利によって幕を閉じた。 

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