028 喚装
すみません!お待たせしてしまった上に短いです!
斧を持った日陰が殺鬼に迫る。
「グッ!」
急に変わった日陰の攻撃方法に、戸惑いながらも対応する。
すると、斧が消え失せ、今度は槍が出現する。
「くっそ!」
またもや変わる攻撃方法。それを反射神経と経験でかわしていく。
(なんだ!?どうなっているんだ!?)
対応はできているが、今まで見たことも聞いたこともない技に、殺鬼は内心の焦りは酷くなっていく。
日陰は、一撃加える毎に手に持った武器を変えていく。
剣、槍、斧、両手剣、棍、斧槍、爪、レイピア、槌、ナイフーーーーーー
様々な武器を使い殺鬼を追い詰める。
(なんなんだなんなんだなんなんだなんなんだなんなんだなんなんだなんなんだーーーーー)
「なんなんだよお前はああぁぁぁぁぁ!!」
追い詰められて出た憤りを感じさせる言葉。だが、その言葉には喜悦が混じっており、その表情は喜色満面の歪んだ笑みを張り付けていた。
「何々?何なのお前!?こんなんあるなら初めから使いなさいよぉ!!」
「初めから使ったら、奥の手じゃないですから!」
「それもそっかぁ!あっははははははははは!!」
日陰は苦しげに、殺鬼は楽しげに会話をする。
その会話を、戦闘の様子を見ていた恭子達は、ただただ唖然とするしかなかった。
「なんなんだ?陽向のあの技は…」
「分からない…見当もつかない…」
恭子の呟きに、美波が返す。他のメンバーも岸部達も口に出さないだけで、同じ事を思っていた。
皆が分からないのも無理はない。日陰の行っていることはただのスキルではない。
日陰が行っているのは『喚装』と言う技だ。いや。正しくは『喚装』ではないのだが、便宜上『喚装』と言っている。
便宜上『喚装』ではないというのも、『喚装』は武芸士が使える特殊スキルなのだ。
武芸士の『喚装』は、自身が指定した武器を10個まで登録し、任意でいつでも装備している武器と交換できるといったものだ。それは、武器に限ったことでなく。鎧、盾なども喚装の範囲内だ。
だが、日陰のそれは全く別物だと言うことが分かる。日陰は、同じ種類の武器でも、全くの別物を出している。それも10は優に越えているのだ。ここで、もうすでに『喚装』では無いことが分かる。
それに、他の者は知らない事だが、日陰の職業は一般人だ。武芸士ではない。
ではなぜ、日陰は喚装紛いの事をできているのか。
その理由は思い付くのは簡単でも、実行に移すには難易度の高いものだった。
日陰が行っているのは、ステータスプレートのイメージ操作だ。
イメージ操作とは、その名の通り、頭の中でステータスプレートをイメージして操作することだ。
これは、ある日、ひとりの人物が思い付いた事であった。ひとりの人物は頭の中でステータスプレートを操作できないかと、軽い気持ちで考えたそうだ。その人物の思惑は当たり、見事ステータスプレートを頭の中で操作できた。
ただ、これは難儀なもので、頭の中でステータスプレートをイメージする事はできる。だが、その操作が難しかった。イメージと言うことはつまり、ステータスプレートの完全な再現ではないのだ。頭の中でイメージだけで操作しなくてはいけないというのは、難易度の高いことであった。それこそ、ステータスプレートの配置。アイテム名の把握。アイテムの順番など、様々な事を把握していなくてはならない。戦闘中にそんなことに思考を裂いている余裕はない。結局、これでは、戦闘では使い物にならなかった。
このことは、ニュースなんかでも一時期取り上げられた。
この世界では、ステータスプレートなどで分かって事があれば、どんな小さな事であっても報道されるのだ。
そのため、日陰もこのことは知っていたし、恭子達も勿論知っていた。だが、そこに行き着かなかっただけだ。先ほども言ったが、それをするにはかなり難易度が高い。そのため、それをしているとは思わなかったのだ。
だが日陰はそれをしている。日陰はこの土壇場でそれをしているのだ。
(ーーーーーカテゴリー武器。42番『鉄の斧』選択。項目、右手、選択。装備)
日陰は、駆けつける前に、アイテムボックスから自分が装備できない武器を全て取り出し、整理した。そうして、武器の名前と順番を覚えた。
(ーーーーーカテゴリー武器。80番『炎槍ーフレアー』選択。項目、右手、選択。装備)
だからこそ、日陰は、喚装紛いのことを行えるのだ。
だが、ここには一つ欠点がある。
それはーーーーー
「くっ!」
「やあっぱりぃ!」
日陰の装備している武器は、日陰が装備できるもの全て。つまり、その全ての中にも物の優劣は存在する。それは必然的に質の悪い物も混ざっているという事だ。更に言えば、ステータスの低い日陰には装備できる物も幅が狭まり、最高ランクの武器でさえランクが中くらいのものだ。見るからにランクの高い殺鬼の太刀よりも品質は劣る。劣ると言うことは脆いと言うこと。結果、日陰の武器は容易に破壊されるのだ。
殺鬼もそれに気付いた様子だった。
日陰は慌てて装備を変え攻撃を仕掛けるが、内心はかなり焦っていた。
武器の脆さを知られた。と言うことはつまり、武器を壊され続ければ日陰のこの予測不能な攻撃はできなくなるということだ。それに、殺鬼は驚くほどの速度で日陰の攻撃に慣れてきている。持久戦になればなるほど、日陰の勝機は薄くなっていく。
殺鬼は戦闘狂ではあるが決して馬鹿な相手ではない。こちらの欠点に気付いている。その証拠に、殺鬼は先ほどから武器を集中的に狙っている。
またもや武器が壊される。
「くっそ!」
「はい次ぃ!!」
日陰の奥の手は、早くも攻略法が知れてしまっていた。




